エントロピー反転円境界線まで+6キロ
前方に
「俺は、兵隊じゃないぞ」
この台詞を吐くのは、おそらく、十数回目。一番最初は、真夜中に直接を自宅を訪問され、起こされたときに。そして今。
あの内閣府の官僚と防衛省の官僚は、こう言っていた、
「君も我々と同じ国家からの
(冗談じゃない、おれは、しがない駅弁大学の准教授だ。国から給料がでているだけで、国でも内閣でも政府でもない、こういうのは、
まず、この
こんなところが、現代日本に存在することがまずもって信じられない。
払暁に降下し、5月の日は長い。もう完全に日が昇り、明るさは昼と変わらない、それに暑い。クソがつくぐらい。吐いたあとは、寒かったのに、歩きだすとこのザマだ。
和才は、文字通り、藪と両側から突き出る鋭い蔦や小枝を両手でかき分け両手で額の汗を拭き進んでいく。陸自の戦闘服は、頑丈この上ない仕立てで一切破れない。陸自のフリッツ式のメットは、降下して20メートルも進まないうちに投げ捨てた。
当然だろう、和才は、自衛隊員ではなかった。しがない駅弁大学の准教授だった。
今頃、大学構内にある公務員宿舎で好物の梅酒の二日酔いの中起きて、えづきながらママチャリに乗って、国立大へフラフラ通勤時間3分で通っているはずだ。
それが、こんな獣も通らない獣道を、いや獣道ですらない。山だ、森だ、林だ。
「俺は、獣じゃないぞ」
和才の台詞が変わった。
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