海の底のロボット

洞貝 渉

第1話


 海はもう目の前まで迫っていた。

 せわしなく行き来する波が、僕の抜け殻をぐずぐずに濡らす。

 今なら彼女の隣にいけるかもしれない、なんて馬鹿なことを考えているわけではない。ただたんに、こうするべきなんだと思っただけ。

 春が終われば桜が散るように、夏の一週間が過ぎれば蝉が死に絶えるように。

 彼女がしたように、僕もこうするべきなんだと、そう思っただけ。

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