第六節 少女達の今

 イシュトナル自治区。

 そう呼ばれるようになった小さな都市は、オルタリアの他の街と比べてかなり個性的な場所である。

 まず第一にエトランゼの数が多い。そして中には彼等が営んでいる店も数多くあった。

 余程金を積まなければ商売をする権利すら与えられないオル・フェーズでは滅多に見られることのない光景だった。

 アーデルハイトは片腕に小さな鞄を下げて、イシュトナルの商店街を冷やかして歩いていた。

 王都ほどではないものの、ここイシュトナルは独特の活気に満ちている。石畳で舗装された道の左右には石や木造りの建物が幾つも立ち並び、大抵はそこの一階を店舗として様々な商売に精を出している。

 奥の方へ行けば行商人達が店を出すスペースも設けられているが、今日はそっちには用はない。

 石畳の上を歩きながら、あちこちの店を見ては野菜や肉、その他日用品などの価格をメモしていく。

「アーデルハイトさん! 今日は取れたての野菜が入ってるよ! どうだい?」

 通りに面した店先から、そんな声が掛かる。

 その主は顔見知りのエトランゼの青年で、既に何度かここで買い物をしたことがある。

 言われるままに店先に並べられている野菜を眺めると、確かに一目にはどれもしっかりと身が付いていて美味しそうだ。

「少し値上げした?」

「そりゃ、戦争が始まったからね。うちが贔屓にしてる農場の辺りはまだ戦火を避けてるけど、いい迷惑だよ本当」

「ああ、そういう」

「そうそう。で、どうかな? ある程度買ってくれたらおまけもつけるけど?」

 店の奥にある、果物が入った籠をちらりと見せつけてくる。食後にデザートが付くのは確かに悪くはないし、上手な商売だとは思うのだが。

「残念だけど、あまり数は要らないの」

 適当に見繕って野菜を購入する。確かにエトランゼの青年が知る限り、買って行く量はいつもよりかなり少ない。

「ありゃ、どうしたんだい?」

「今は家に一人しかいないから」

 それで、青年はなんとなく事情を察したようだった。

「嫌だねぇ、戦争は」

「ええ、本当に」

 一人の食卓は味気ない。朝起きても、夜寝る時も一人というのはどうにも落ち着かないものだ。

 少し前まではそれが当たり前のことだったというのに。

 お金を払い、商品を受け取ってアーデルハイトはその場を離れようとしたところで、道の先から歩いてきた一団を見て動きを止めた。

「冒険者かぁ……。おれも戦い向きのギフトさえあれば、ああいう生活も面白そうなんだけどなぁ」

 この辺りには鍛冶屋や、冒険に役立つ道具が売っている雑貨屋、魔法道具屋などもあるため、冒険者達がここを訪れるのも珍しくはない。

 アーデルハイトが一瞬固まったのは、それらの中にに見知った姿を見つけたからだった。

 小走りでその一団に近付くと、目的の人物にその後ろから声を掛ける。

「カナタ」

 カナタを含めた男女合わせて五名で構成されたそのパーティは、突然かけられた声に進む足を止める。

「アーデルハイト!」

 振り返ったカナタが一歩前に出ると、いつも通りの笑顔でアーデルハイトの手を握る。

「久しぶり。あー……、元気してる?」

 ヨハンが戦争に行っていることはカナタも知っているのだろう。何処となく気遣うように、そんな質問が投げられた。

「ええ、平気よ。今のところ悪い知らせは受けていないし」

「そうだよね! ヨハンさん、きっと上手くやってるよね」

 サアヤ伝いに入ってきた情報では、今のところ快勝を重ねているらしい。ヨハンが何処まで戦うつもりなのかは判らないが、適当なところで戦争を切り上げ、交渉に持っていくはずだ。

「それで、カナタ。貴方は今何を?」

「え、ああ。ほら、ダンジョンが見つかったのは知ってるよね?」

「アルゴータ渓谷のでしょう? 確か冒険者ギルドで特別恩賞を用意して、パーティを募集していたはずだけど」

 何を隠そう、仕事の関係でその辺りについての書類にも目を通している。

 ヨハンが遠征に出ている間、彼の仕事を肩代わりできるのが傍で仕事を見ていたアーデルハイトぐらいしかいないのだ。

 実際のところ非常に問題がある状態であると言えるので、彼が戻って来たらその辺りは急ぎ改善しなければならないのだが。

「そうそう。それでボク達もパーティを組んで、明日からダンジョンに向かうんだ。今日は装備を整えにね」

「なるほどね。魔法道具はあの人に頼んだの?」

「ううん。ヨハンさんには断られちゃった。忙しいからって」

「……そう」

「それにボクもそろそろ独り立ちしないとね! いつまでもヨハンさんに頼ってばっかりじゃ駄目だもん!」

 ぐっと拳を握るカナタだが、その姿には違和感がある。無理に元気を絞り出しているような、そんな印象をアーデルハイトは受けた。

「何にせよ、あんまり危険なことはしないでね」

 だからと言って、アーデルハイトに的確な助言を与えてあげることもできなかった。

「判ってるよ、判ってる」

「カナタちゃん。その子、友達?」

 あまり長く話し込み過ぎたのだろう。カナタの後ろに立っていた同じパーティの仲間が、そう話に割り込んできた。

「あ、はい。友達で、すっごく強い魔法使いなんですよ」

「へぇ」

 そう言ったのは、先程まで先頭を歩いていた、恐らくはパーティのまとめ役である男性だった。

 長身で、整った顔立ちの男性は、カナタの肩に気安く手を置いてさりげなく自分の後ろに下げる。

 その動作にアーデルハイトは顔を顰めそうになるが、不躾な態度はそれだけには留まらなかった。

「アーデルハイトちゃんでいいのかな? カナタちゃんが信頼するぐらいの魔法使いなら、俺達と一緒に来ない?」

 言いながら、アーデルハイトの頭に手を伸ばす。

 咄嗟に半歩退いてその手から逃れると、男は一瞬だけ面白くなさそうな表情を浮かべたが、すぐに笑顔を取り繕った。

「残念だけど、仕事があるから」

「なら仕方ないか。まぁ、俺達には英雄のカナタちゃんが付いてるし、楽勝でしょ」

「そ、そうそう! カナタさんは英雄なんだし、おれ達、勝ったも同然だよ」

 日焼けした肌の巨漢がそう続ける。体格の良さとは裏腹に、何処か気弱そうな顔立ちをした重装備の男だった。

 男の言葉に、他のパーティメンバーは口々にカナタのギフトや、噂に聞く御使いとの戦いを褒め称える。

 見れば、奇妙なのはその男だけではない。

 人を第一印象の見た目で判断するのは愚かなことだと判っているが、それでも彼等を見て、信頼できるとは思えなかった。

 長身の男はしっかりと装備こそ整っているが何処か軽薄そうな印象が拭えず、彼を中心にして戦うなどできそうにない。

 周囲を固める男も女もその彼に従うように首を縦に振って適当な言葉を繰り返すばかりで、誰もカナタのことを仲間と思っているようには見えなかった。

「……あはは」

 事実、当のカナタは褒め殺しのような状況で苦笑いを浮かべている。

「じゃ、俺等はもう行くから。アーデルハイトちゃんもまたね」

 にっこりと貼り付けたような笑顔を見せて、青年はカナタの背中を片手で押すようにその場から去っていった。

「……カナタ」

 その背に一抹の不安を覚えたところで、今のアーデルハイトにカナタを止めることなどできはしない。

 恐らくそれができる唯一の人物は、ここより北で、熾烈な戦いを続けていることだろう。


 ▽


「ったく、洒落になってねえぞこれは!」

 積み重ねられた土嚢の防壁の裏側で、ラウレンツ・ハルデンベルクはやけくそになってそう叫んだ。

 顔を上げれば銃撃が容赦なく飛んでくる。数は少ないが奴等の射程はこちらの弓兵を遥かに凌駕していた。

 エルプスでの戦いを終え、何とかカーステンを逃がすことに成功したものの、ラウレンツが指揮するオルタリア軍は撤退に撤退を重ねる無様な戦いを余儀なくされていた。

 拠点として使えたはずのネフシルを自らの手で破壊してしまった代償は大きく、攻める側であり防衛の要となる地を持たないオルタリア軍は、勢いに乗った相手を抑え込むことができないでいた。

 それに加えて、虐殺行為の噂が広まった所為か南側での反発は想像以上に強く、別動隊が違う街へ向かう道すがら、住民達の襲撃にあって敗走させられるという有り様だった。

 彼等を蹴散らすことは容易いが、同じ国の民。やはり武器を振るうのは躊躇われる。

「大隊長」

 横からぬっと顔を出したのは、コテツだった。射撃戦では彼の白兵戦能力も期待が持てず、その武力を持て余している。

「おう、コテツ。どうにか切り開けんもんかね、ここ」

「難しいな。だが、別動隊を率いる許可をくれれば側面から奇襲して見せよう。なぁに、歩兵を百人ばかり斬れば、動きも乱れよう」

「なら任せた。おい! 腕に自信がある奴、コテツに続け! 上手く行けば敵将の首が上がるぞ!」

 その言葉に、相手の銃兵に焦れていた腕自慢の者達が次々と名乗りを上げる。

「任せたぞ。ここが防衛線だ。もうフィノイ河は抜かれてるんだ、これ以上やられたらヴィルヘルムの名前に傷がつく」

「では、拙も精々頑張るとしよう」

 コテツは悠々と、その場から立ち去っていく。エトランゼの中でも特に変わり者だが、その腕は戦場でこれ以上にないほどに頼れる。

 ラウレンツの部隊が防衛線を敷いているのはフィノイ河を超えた先にあるディオウルの街で、そこからもう一つ街を挟んでモーリッツの治めるソーズウェルがある。

 もしそこを制圧され、同じ五大貴族の治めるソーズウェルが危険に晒されれば、ラウレンツらの大将であるエーリヒの名に傷がつく。それだけは絶対に避けなければならない。

 そう言った理由があってこうして街の城壁の前で必死に敵を食い止めてはいるのだが、何分状況が悪すぎる。

 狭い城門の前に土嚢を積み上げているから辛うじて進撃を押し留めてはいられるものの、そうでなければとっくに突破されている。

 魔法を込めた巨大な杭を撃ち出す大砲、そして実用化された銃兵と、二つの新兵器は数は少ないながらも絶大な威力を誇っている。

 それに加えて、敵は外だけではなかった。

「ラウレンツ様!」

「なんだよ!? こっちは今……っとぉ!」

 背後からの声に顔を上げると、ラウレンツのすぐ真横を鉛の弾が掠めていった。慌てて味方の兵士が矢を撃ち返すが、やはりこちらの攻撃はろくに届かない。

「で、なんだよ?」

「カーステン卿が西門より攻撃を開始しました!」

「大人しくさせとけって言ったじゃねえか!」

「は、いえ……ですが、こちらの権限では五大貴族の息のかかったカーステン卿を抑えることはできず……」

「……だよなぁ。判っちゃいるんだが、すまん。ついつい怒鳴っちまった」

「い、いえ」

 そう。カーステンが尽くこちらの足を引っ張ってくれるのだ。

 どうやら聖別騎士を失ったことが相当に堪えたらしく、これ以上の失態を重ねないように大人しくしてくれていればいいものを、どうしてか彼は戦いでその失態を取り戻そうとしていた。

 果たして聖別騎士を持ってしても勝てなかった相手に、どうしてそれなしで勝てるようになると思ったのか?

 その答えは誰にも判らず、突撃を繰り返しては無駄に戦力を消耗させてくれていた。

「あいつを見殺しにしていいってだけで、随分と戦いが楽になるんだがなぁ」

「で、ですがそれは……」

「わーってるよ。五大貴族直属で、エイスナハルの敬虔なる信者を殺すわけにはいかないってことだろ? それをやりゃ、やっぱり責められるのはうちの大将だ」

 実に貴族というのはやり辛い。それも権力や名声を得れば得るほどに、様々なしがらみによって雁字搦めになる。

 彼等の面子や誇りのために犠牲になるのは前線の兵士や民だというのに。後ろで座っているだけの連中が、自分達の命が掛かっていないにも関わらず顔を真っ赤にしてあれやこれやと口を挟んでくるのだ。

「ラウレンツ様、敵部隊が突撃を開始しました!」

 土嚢から顔を上げれば、隣の兵士が叫んだ通り、砂埃を上げて敵兵がこちらに走り込んでくる。

 コテツの奇襲は戦場に何かしらの効果を及ぼしたようだが、これはどうやらいい方向ではなさそうだ。

「カーステンの出陣にコテツの奇襲……。横合いからの攻撃に対して前に出るか。……こっちの弱みをしっかり把握してやがる」

 両者に戦力を割いたことで、ラウレンツの率いる部隊は戦力が低下している。こちらが奇襲部隊を用いて銃兵を封じ込めに掛かっていると知るや、そこを崩しに掛かってきた。

 下手を打てばそのまま全方位から攻撃を受けるが、突撃が成功すればそのまま正面を突き破れる。

 そして、ラウレンツの率いる隊にあの『悪魔』を要する敵のエトランゼ部隊を長く留めるだけの力はない。だが、

「退けねぇよなぁ……。面倒だが俺達はヴィルヘルムの名前を背負ってんだ」

「ええ、奴等に正規軍の力を見せつけてやりましょう!」

 そう言って、ラウレンツは槍を構えて迎撃態勢を取る。

 状況は決して有利ではないが、白兵戦ならばまだ互角に戦えると、そう判断した。

 若い兵士と、熟年のベテランが壁を作るようにラウレンツの正面を護り、そこに斬り込んできた敵の第一陣と戦いが始まった。

「気を抜くなよ! 先鋒隊は恐らくエトランゼだ! 奴等のギフトを甘く見るんじゃねえぞ!」

 大抵の場合、ギフトは魔法よりも素早く強力で、何より厄介なのはそれぞれがどんな力を使うか全く予測が立たないことだ。

 炎や氷など現象を操る力ならばまだ対応のしようがある。魔法使いに対しての戦法とそう変わりはない。

 問題は今まで見たこともないような力によってやられた時だ。こちらは何をされたか判らないままに負けることだってありうる。

 最初に接触したエトランゼ達はこちらに損害を与えることを重視したのか、直接的に攻撃を加えることのできるギフトを持った者達を中心として構成されていた。

 人間離れした怪力を持つ男の剣を、ラウレンツは手にした槍で絡め捕り、その力を発揮させることなく無力化する。そこに部下の的確な援護が入り、鎧を打ち据えられその男は地面に倒れた。

 続いて襲い掛かって来た相手に、正面から槍を伸ばす。

 すると驚くことに、その人影は槍が当たるとまるで煙のように消え失せ、ラウレンツのすぐ横に同じ人物が立っていた。

「へぇ、幻影使い……ってとこか?」

 だが、ラウレンツの反応は素早い。

 すぐさま槍を振り回し、石突きを顎に叩きつける。よろけた隙に仲間の剣が閃き、容易くそのエトランゼは打ち取られた。

「そうそう。手柄を稼いどけよ!」

 彼等にも弱点はある。エトランゼは一部の例外を除き、その大半が戦いの経験をそれほど積んでいるわけではない。特に集団戦に関してはラウレンツ達に一日の長がある。

 そしてもう一つ、エトランゼのギフトは固有のものであるため替えが効かない。部隊を支えていた一人が倒されたから、すぐさま同じ能力を持った者を補充するというわけにはいかないのだ。

 だから一人一人の命が、一兵士の死よりも重くその軍団に圧し掛かる。

 そんな調子でラウレンツを中心として迫りくるエトランゼ達を捌き、倒し続けていると、一際威勢がいいのが走り込んでくるのが目に入った。

「救護隊、怪我人を下がらせてくれ! ……そこは俺が抉じ開ける!」

 熱風が吹き荒れ、兵士数人を纏めて焼き払った。

 幸いにもラウレンツとその両側の二人の兵士は土嚢に身を伏せたことで直撃を避け、生き残ることに成功した。

「生きがいいのが来たな。少年、俺が相手してやるよ! 大将首、欲しいだろ?」

「馬鹿に……するなよ!」

 若きエトランゼ、トウヤの灼熱を纏った剣と、ラウレンツの槍がぶつかり合う。

「いい気迫だ。……だがな」

 打ち込まれる刃を、槍の穂先、柄を利用して逸らし、捌く。

「このっ……!」

 やがて相手が焦れてギフトを使おうと距離を取ったところで、ラウレンツは一気に踏み込み渾身の突きを見舞った。

「うわっ!」

 風圧を纏って放たれた鋭い突きはトウヤを仕留めることこそできなかったものの、無理矢理に剣で防御したことで大きく態勢を崩す。

 その間に距離を詰め、槍全体を大きく振り回してぶつけることで相手の腕ごと剣を打ちあげる。

「エトランゼのギフトが無敵だと思ったかい、少年?」

 流れるような連続攻撃に、トウヤは防戦一方となる。

「つ、強い……!」

「そりゃ、こちとら何年も戦い続けてるからな。お前さん達みたいに反乱を起こそうとしたエトランゼは、幾らでもいるんだぜ?」

 槍が剣を弾いた瞬間、トウヤは自分からそれを手放し、自由になった両手で火球を生み出した。

 ラウレンツに放った一撃は容易く回避されたが、もう一発、苦し紛れに地面に向けて放った炎はそこで炸裂し燃え広がり、被害を避けたラウレンツは距離を離す。

「ほぉ。やるじゃねえか。だが、間合いが離れてくれたのはこっちに取っちゃ都合がいいがね」

 槍を構えなおす。

 幾らギフトがあろうと丸腰となった男一人、制圧することは容易い。

 そこに思わぬ邪魔が入ったのは、ラウレンツが動こうとした直前のことだった。

「ラウレンツ様! 後方のルー・シン殿より伝令です! ディオウルを放棄し、直ちに撤退せよとのことです!」

「なんだと!? ……ちっ、だがあの軍師殿のことだ。下手をしない方がいいか」

 ここにルー・シンの言葉が届いたということは、彼がすぐ近くまで来ているということだ。

 エトランゼでありながらエーリヒが腹心とするだけあって、その知謀は驚嘆に値する男。そのルー・シンが逃げろというのだから、所詮前線指揮官に過ぎないラウレンツが異を唱えるだけ愚策というもの。

「ま、俺もこんなところで死にたかねえし。撤退するぞ!」

 ラウレンツの号令を聞いて、周囲の兵達はすぐさま陣形を整え、撤退の準備を整えては街の中へと退いていく。

 それに合わせて下がろうとするラウレンツに食い下がろうとするトウヤだが、その一歩を槍の切っ先が制した。

「命拾いしたんだ、やめとけよ少年。昨日もコテツにやられてんだろ? 少しは落ち着いたらどうだ?」

「……あんたも、俺に殺す価値もないとか言うつもりかよ」

「コテツはどうだか知らんがな。俺は単純に子供を殺すのは気が引けるだけだよ」

 くるりと器用に槍を回し、ラウレンツは背を向けて走り出す。

 そこに追撃は不要との号令が響き、ディオウルでの戦いもまた、イシュトナル軍の勝利で終わった。

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