止まらないエンダー星

 ユウが私の能力、『機械仕掛け』を発動したのと同時に、通信機のスピーカーから、ドクンっドクンっと心臓の大きな鼓動音が聞こえた。


『不動ユウ、貴様何をした!!』

『機械仕掛け……無生物を生物に変える力で、この要塞を生物に変えた」 


 聞こえてくる心臓音は、生物となったエンダー星の心臓音だ。 能力の作用で、要塞は巨大な生物となった。 


 でもエンダー星を生き物に変えて、ユウはどうするつもりなのだろう。


『……やつで、お前の新しい能力がこれで良かった。この能力のおかげで、皆を守ることができる』 


 ユウがボソッと呟いた。


『!! そうか、不動ユウ! 貴様、この生物化したこの要塞に、地球から遠ざかるように命令するつもりか!!』 


 そうか、その手があった。 

 機械仕掛けで生み出した生物は、能力者に服従する。ユウ、それを利用したんだ。 

 生物となったエンダー星に命令すれば……、どこか適当な場所、例えばブラックホールに向かえと言えば、要塞ごとエンダー達を倒せる。


『ええい、止まるな要塞よ!! 地球に向けて突き進むのだ!!』 


 マーザが叫ぶ。声の様子から、余裕が無いように思える。


『……』 


 スピーカーが少し静かになる。それを聞いていた私達……私、車田くん、氷華ちゃん、空くん、そして私達を治療してくれたDCの社員さん、船を操縦している黒服さん、全員が通信機の音に耳を傾け無言になる。


「ど、どうなったんだ?」 


 沈黙を破った車田くんが通信機を叩いて、音を聞き取ろうとする。 


 そして、通信機から流れてきた声は……。


『……クックック、クハハハハハ!!』 


 マーザの不気味な笑い声だった。


『残念だったな、不動ユウ! 貴様の目論見は外れたぞ! どうやらこの要塞は、誰が主人なのか分かっているらしい! 見よ! 要塞は、地球にどんどん近づくぞ!』 


 そんな……。 

 今まで『機械仕掛け』で生み出したどんな生物は、どんな命令でも受け入れてきた。 

 それなのに、エンダー星は止まらなかった。やはり、ブラックホールに飛び込むのは嫌だったのか、それとも自分の主はマーザだと自覚しているのか。 


 どうして要塞が命令に背いたのかは分からない。でも結果として、星は止まらなかった。 


 もうダメだ。エンダー星を止める方法は無い。人類はもう終わりだ。 

 誰もがそう思った。

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