刑事や探偵のように尾行

 ユウがポケットからスマホを取り出し、電話に出る。 

 いつの間に買ったのだろう。しかも彼が使っているのは最新型だ。


「ああ。……断る。他の二人に頼め。……。……はぁ、分かった。すぐに行くから騒ぐな」 


 通話相手としばらく話した後、ため息混じりにユウは通話を切った。


「その携帯、どうしたの?」

「自分で買った……と言いたいところだが、これは借り物だ」

「借り物?」

「最近、新しいバイトを始めてな。この携帯は連絡用に会社が配布したものだ」 


 そう言いながらユウはスマホをポケットにしまいながら立ち上がる。


「今の電話は同僚からだ。少し用事ができたので、俺は行く。」

「あ、うん。じゃあね」 


 私は手を振りながら、ユウが公園を出るのを見送った。 


 見送ったのだけど……。


「新しい仕事って何だろう?」 


 私の頭の中に疑問と好奇心が浮かび上がる。 


 ホームレスのユウを雇うなんて、どんな会社だろう。ちょっと気になる。 


 そう思った私はユウを尾行することにした。 


 私は急いで公園を出て、周囲を見回す。 

 いた、ユウだ。前方二十メートルさきに発見。 


 私は彼との距離を保ちつつ、後ろから追尾する。 

 なんかドラマに出てくる刑事や探偵みたいでワクワクする。 


 小一時間ほど歩いて、町外れにある廃ビル前に着いた。 

 周りに人気は無い。野良猫一匹すらいない。まだ夕方前だというのに、まるでゴーストタウンにいるみたいで不気味だ。 


 ユウが廃ビルに入っていく。私もその後に続く。 


 廃ビルというわけあって、中はボロボロで散らかっていた。壊れたパイプ椅子や割れたブロック石など、混沌としていた。


「待っていたぞ!!」 


 突然大きな声が響いて、私はビクリとする。

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