不意に口から出てきた謎の言葉

 実は無くなったのはアビリティリングだけじゃない。

 私が描いたカードを入れておいたホルダーも無くなっている。 


 もしかしたらあの戦いを見た誰かが、風使いエンダーとユウの戦いを見ていた誰かが、私のアビリティリングが特別だと知って盗んだのかもしれない。 


 そう考えると、カードホルダーが無くなったことも説明がつく。 


 あのリングは本当は描いた絵を実体化させるのに、多分泥棒はカードを実体化させると勘違いして、ホルダーも盗んだんだ。きっと、そうに違いない。


 ……ん? ちょっと待って。 


 私は今、自分が言ったことに違和感を覚えた。 


 エンダーって何? 自分でも初めて聞く固有名詞だ。 


 確かにあの乱入者は普通の人間ではない。隕石と共に現れたり、リング無しで風を操ったりしたことからも、それは明白だろう。 

 あの乱入者はまだまだ謎が多い。

 それなのに私はどうしてあの乱入者を『エンダー』と呼称しただろう。


 エンダー……エンダー……うっ、頭が痛い。 

 考えすぎたせいか、突如、頭痛に襲われた。多分これが知恵熱ってやつなんだろう。


「どうしたやつで。大丈夫か?」 


 頭を抑える私を、心配そうな眼差しで見つめてくるユウ。


「大丈夫。なんか突然頭に聞きなれない単語が降りてきて。それが何だろうって考えていたらだけだから」

「聞きなれない単語?」

「うん、『エンダー』っていうんだけど。ユウはこれが何か知ってる?」

「ゲームのキャラクターか何かか?」 


 多分違うような……。 


 考えていると、突然着信音が鳴り響き私は驚いた。この音は私のスマホのものではない。私の着信音はクラシック音楽だが、今鳴っているのは懐かしの黒電話音だ。


「……もしもし?」 


 音の主は、ユウのスマホだったようだ。

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