第2章 現実化する幻想
不動ユウは家無し
放課後。私は帰り支度を整え、上履きから下履きに履き替える。
私以外にも帰宅しようとしている生徒がちらほら。
そして目に入った生徒全員がアビリティリングを装着していた。リングの普及率はとても高い。持っていない人の方が少ないだろう。携帯電話、クレジットカードに並んでアビリティリングが現代の三種の神器と呼ばれるほどだ。勿論、私もつけている。とは言っても、私は好んで戦ったりはしない。もっぱら観戦専門だ。
リングによって覚醒する能力は、個々のリングによってそれぞれ異なる。
さっきの戦いで見た、身体をダイヤに変えるものや、髪を自在に操る以外にも能力もある。人がつけたリングの個体によって、発生する能力は変わってくるのだ。
私は校門前で、見知った人影を見つける。
「ユウ」
私はその人にに気さくに話しかける。
彼の名前は不動ユウ。
幼馴染というか、腐れ縁というかなんというか……まあ、とにかく私の友達だ。
そしてさっき言った少数派でもある。彼はアビリティリングを持っていない。
「よぉ、やつで。お疲れさん」
「ありがとう。ユウは今日何していたの?」
「ずっと雲を流れているのを見ていた」
相変わらずマイペースだ。
ユウの隣を歩きながら、今日学校であったこと話した。授業のこと。教師のこと。友達のこと。佐藤くんと鈴木さんの能力バトル。佐藤くんが嘔吐をして引き分けに持ち込んだこと。いろいろなことを話した。ユウは相槌を打ちながら私の話に耳を傾けた。時々、小さく笑ったりもしていた。
ユウには親がいない。勿論、生みの親はいるけど、彼には育ての親はいない。だから彼は学校に通えない。それどころか、住む家もない。公園に住んでいる。アビリティリングを持っていないのもその理由だ。生活に苦しい彼にはリングを買う余裕はない。
そんなユウが何故、学校の正門前にいたかというと……。
「例の痴漢、捕まったのか?」
私は首を横に振る。
最近、この近所で若い女性を狙う痴漢が出没している。
話によると、痴漢は後ろからスタンガンのようなもので女性を気絶させ、身体を触ったり、持ち物を奪ったりしている。中には下着を奪われた被害者もいるらしい。怖い。
後ろから襲われたこともあって、被害者は誰も犯人の顔を見ていないので、警察もなかなか逮捕ができないらしい。 教師側も注意を促し、生徒も明るいうちに、なるべく大勢で帰るようにしている。
それでユウは私を家まで送っていてくれる。私の心配をしてくれるのだから嬉しい。ユウは小さい頃から私を守ってくれるナイトだ。
しばらくして、私達は私の家に到着していった。
ユウに家に上がるように勧めたが、遠慮されてしまった。
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