会話劇場

西木 草成

第1話 ただの帰り道


「・・・」


「・・・」


「ねぇ、コウタ君」


「ん?」


「・・・いや、その・・・就職先どこ行くのかなって」


「俺はなぁ・・・とにかく地元離れたいな」


「東京に行くの?」


「まぁそのつもり」


「・・・そう、なんのお仕事に就くの?」


「そうだなぁ〜、一応大学でパソコンやってたんだからITの仕事をしてみたい」


「そういえばコウタ君ってパソコン得意だもんね」


「ん、まぁ・・・」


「あら?なに照れてんのよ」


「べっ、別に照れてねぇよっ!」


「・・・」


「・・・」


「・・・たまには帰ってきてね、さみしいから」


「いい加減子離れしてくれないか母さん」


「さみしいものはさみしいのっ!」


「はぁ〜、わかったよ。とにかく帰ってくるから心配しないで」


「本当ね・・・、ところでコウタ君、彼女できた?」


「・・・なんだ急に」


「いや、最近ちょっと行動がおかしいなぁって、よく出かけるようになったし、服の趣味も変わったから」


「・・・できたよ、同級生でカオリっていうんだ」


「へぇ〜、それじゃあ今度ご挨拶に行っちゃおうかしら?」


「やめろって、怖がらせちまうだろっ!」


「そんなひどいことしないわよ私っ、ちょっとお話しするだけ」


「いったいどんな話をするつもりなんだよ」


「ん、これからもコウタ君をよろしくって」


「・・・『私の代わりまで』ってか?」


「・・・」


「・・・自分が焼かれてるのを見てどう思った?」


「・・・不思議な感覚、周りの人がみんな泣いててどうして泣いてるんだろうって思っちゃった。私はここにいるのに」


「・・・寂しかったよ」


「・・・私も」


「もう・・・会えないのか?」


「・・・うん」


「盆休みは?」


「・・・わからない・・・でも・・・会えるなら会いたい」


「そうか、なら十分だよ。俺はもう一人でもできる」


「・・・カオリさん泣かしたら化けて出るからね?」


「それは怖いな、わかった約束する」


「本当ね?・・・もう大丈夫?」


「あぁ・・・もう大丈夫だから逝けよ」


「・・・うん・・・コウタ君」


「・・・なに?」


「私のところに生まれてきてくれてありがとう」


「こちらこそ、産んでくれてありがとう」

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