MOTHER

胡蝶

第1話 幼い頃

「なぁ、おかん覚えてるか?」

「俺がまだ小学生だった頃、お化け屋敷に行っただろ」

「ほら、山の上のドライブインみたいなところにあったお化け屋敷だよ。そこにこの間彼女を連れてデートしてきたんだ」


「・・・・・」


「その彼女とは3年付き合っててさ、今年の春にプロポーズしたんだ。結婚のオッケー貰って今度彼女の親に挨拶に行くことになってるんだ」

「おかんも彼女に会ってやってほしいんだ。実は今電車でこっちに向かってるんだ」


「うちは片親でおかんが女手一つで育ててくれたこと話したらさ、普通新婚から親と同居は絶対嫌とか言い出す奴多いのに、彼女お母さんと一緒にくらしましょって言ってくれてるんだぜ。なかなかいい彼女だろ」


「・・・・・」


「お化け屋敷に行きたいって言ったのも彼女なんだ。ほんとはすごく怖がりでお化けとか大嫌いなのに、子供の頃おかんとお化け屋敷に行った時の話したら自分も行きたいって」

「ほら、俺が途中で怖がって泣いてさ、前に進めなくなった時に、まだ機械じゃなくって人が中に入っている時代のお化け屋敷だったから幽霊にもう十分怖がっているから通してあげてくださいって言ってくれただろ」

「幽霊がおかんの一言で引っ込んでいったのを見て子供心に、おかんすげーって思ったんだっていう話をしたんだ」


「・・・・・」


「そしたら、私もお母さんのような強い母親になりたいからだってさ、強いの意味間違えてないかって言ってやったよ」


「・・・・・」


「でも、俺も来年で30歳だし、おかんが病気になったって聞いて結婚の決心がついたんだぜ」


「・・・・・」

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