ひみつ
精緻な歯車と歯車の間に触れる時、私の指先は僅かに震える。機械仕掛けは幼き頃からの遊び道具でそれがそのまま生涯をかけた生き甲斐になっただけのことだから、緊張などではない。足のつま先から脹脛を伝って背筋を駆け抜ける官能が、肌を粟立てさせ、指先を震えさせる。裏庭にたまたま咲いた白百合を手折る背徳感に似て、また郭の椿が大胆に咲く様にも似て、ひどく、心が波打つ。噛み合った美しい線を丹念になぞりたい、そこから幾重にも重なる歯車のひとつひとつを暴きたい、解体したい、その腹を開いたままで飾り立てておきたい。そんな葛藤は濃紺の瞳の裏側に仕舞いこんだままで、私の手は自動化したかのように着々と人形達をまた一段と、綺麗にしていった。
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