2・犯罪者育成プログラム

 教授は授業中だった。


「つまり、軽犯罪や重犯罪にかかわらず、一夜にして凶悪な犯罪者になることはない」


 講義を受けている生徒たちはみな真剣だった。


「生まれ育った環境、犯罪を犯すまでに至った環境が、犯罪者になるかどうかを決めると言っても過言ではない」


 教授は生徒一人一人の目を見ながら熱く語りかけた。


「しかし、一定の年齢・精神状態の時に、誰かの手によって正しき道へと戻れるような助けがあれば、多くの確率で犯罪に手を染めることはない」


 生徒たちは相変わらず真剣に話を聞いていたが、教授の言うことにピンときていなかった。当然、教授もそのことに気付いていた。


「生徒諸君がうまく理解できないのも仕方がない。この世界では三百年以上も前から犯罪が起きていないからな…… だが諸君、実は犯罪者育成プログラムというものがある」


 一人の生徒が質問をした。


「それはどういったものなのです?」


「そのプログラムには様々な項目があるのだが…… 例えば、ルールを守らない、マナー・モラルを持ち合わせない。挨拶をしない、礼も言わない、謝りもしない。他人の事を考えず、暴言を吐いたり、暴力を振るったりする。育児放棄や教育放棄をしたりなど、例を挙げるとキリが無い。が、とにかく、それを意識的・無意識的に実行している所がある」


 生徒たちは信じられない様子でザワつき始めた。


「百聞は一見にしかず、実際に見たほうが多くの事を学べるだろう、よって次回の授業はそこへ行くことにする」


「先生、それはどこなんですか?」


 教授は言い飽きた様子で生徒に答えた。


「地球という星だ……」

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