新・人類滅亡 -短編集-

ポテトバサー

1・新・人類滅亡

「どうだね、この星は?」


 コンプコンプ星人は、ある星のまわりを宇宙船で移動しながら調査をしていた。


「はい。この星の実権を握る『人間』という知的生命体の手により、あらゆる分野は格段に発展・発達しています。前回の調査時とは比べようがないほどに」


「そうか」


「ですが、いくつか問題がありまして……」


「まあ、どの星でも、どの文明でも、何かしらの問題はあるものだ」


「それは、そうなのですが……」


 部下のコンプコンプ星人は、いぶかしげに腕の吸盤をキュパっと鳴らした。


「この星は、私達の星や、今まで調査をしてきた星とあまりに違うのです」


「遠回りはよしてくれ。つまりどう違うのだ?」


「……未だに戦争をしているのです」


「戦争? 戦争だと!?」


 上司のコンプコンプ星人は、驚きのあまり、水平に並んだ四つの目を丸くさせた。


「まだ争っているのか!?」


「はい。規模は様々ですが、仕掛けたり、やり返したりと。また、私利私欲のための個人間殺人は増加し、そんな殺人犯が集ったようなテロリストも増加しています」


「誤った道を選択してしまったのか」


「子供同士の殺人も……」


「……道を完全に踏み外していたか」


 数本の腕を絡ませ、苦い顔をするコンプコンプ星人達。だが、上司のコンプコンプ星人は、すぐに触角ばらいをして、話を前に進めた。


「それで他には?」


「はい、次は医療です」


「医療か…… だが、その発展は文明を支えていくものだ。まぁ、使い方によるがな」


「えぇ、問題はその使い方にありまして……」


「やはりそうか。まぁ、未だに戦争をしている星だ、当然と言えば当然だがな。それで?」


「はい。人間は不思議な生命で、『生』を大事にするあまり、自分の身代わりを作ってしまったのです」


 部下は上司のほうに体を回転させ、体内電子資料を送信した。


「自分の肉体が『死』を迎えると、人工的に作り出した体『リメイン』に脳内データを移し、何事もなかったかのように生活を続けていくのです」


「ふむ………」


 上司は膨大な量の体内電子資料を処理していった。


「また、他の生命を人間たちの都合の良いように作り変えています。例として、『ブタ』という薄い桃色をした可愛らしい動物は、食用として使われる部位を強制的に四倍にされてしまっています」


「うーん………」


「さらに、度重なる遺伝子操作のせいでタガが外れたのか、生まれてくる子供たちにまで……」


「いま電子資料を読み終えたが、そうらしいな。いざとなれば『リメイン』がある、そのおごりがもたらした結果だろう……」


 宇宙船のコクピットに満たされていく沈黙。それを嫌ってか、部下は静かに話し始めた。


「あの…… 中間報告はどうしましょう? 人類はまだまだ発展していく、という方向でまとめてよろしいでしょうか?」


「……いや、中間ではなく最終報告でいい。そして一言、『人類滅亡』と書けばいい」


「えっ!?」


「先人たちが作り上げた人間の倫理を大幅に超え、もはや人間は人間ではなくなった。その時点で『人類滅亡』なのだよ」

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