オタク気質が災いしてお妃候補になりました
杜咲凜
第一章
1-1 目覚め
目覚めたら豪華な天井。豪華な天井とわかったのは、中世ヨーロッパにあるだろう絵画が天井にあったからだ。天井に絵がある家って、現代にあるのかという突っ込みが脳裏に浮かんだのだが。それよりもとても広いベッドに寝ているのがわかった。
自分の両腕をいっぱいに広げても、まだまだ両端には届かない。どんだけ大きなベッドにいるんだろうと思いながらも目に入った自分の手に平をみたら、とても小さかった。
(―――――これ幼児サイズの手――――。)
ベッドが大きいに違いないのだが、自分の体も小さくなってしまったようである。しかし部屋は薄暗く、目視しても自分の置かれている状況はわからない。ふと来ている服は、シルク製品に近い素材の光沢のある寝間着だった。うっすら汗をかいている。
ガチャ。
扉が開くと二人の女性らしき人がきた。カーテンを開けて外の光を中に入れる。
パッと中の様子がわかる。案の定、部屋はどこの中世貴族のお部屋という豪奢な作りだったのだ。それより驚いたのは目の前のご婦人だった。いや、ご婦人といってもとても若い二人で、一人はメイドの服。もう一人は清楚ながらも襟元まで閉めたシンプルなドレスを身にまとい、金髪の髪の毛を結わいている。しかし目の下がくぼんでいて、ひどく疲れているようだった。
「アリーシア?」
ドレスの女性が鳥がさえずるようなかわいらしい声で、名前を呼ぶ。誰のことを呼んでいるのだろうか。
「…………?」
なんと言えばいいのかわからず、首をかしげてじっとドレスの女性を見つめた。
「アリーシアっっっ!!!!!」
「お嬢様!!!」
ドレスの女性を見つめただけで、女性は私を力強く抱きしめた。メイドは大粒の涙を流して、エプロンの裾を頬に添えて泣き出してしまった。
百合のような香りがただよう。ドレスの女性から香っているみたいだ。とく見ると、女性も美しい蒼い瞳から涙を流していた。
「もう、駄目だとお医者様が・・・でも私は信じていたわ。英雄サンパウロの末裔のお父様の子ですもの、どんな困難もきっと打ち砕くって。」
「「アリーシア!!!!」」
今度部屋に入ってきたのは、大きな体格の大男だった。かといって荒々しい野獣というわけでもなく、むさい感じなのであるが、優しく育ちがいい野獣というカンジだ。着ている服もラフなシャツをズボンであるが、上質であるとわかる。彼のあとから入ってきたのは、ドレスを着た女性に似た男の子だった。年齢は12~3歳であろう。ドレスの女性と親子であると一目見てわかった。その後に執事らしき人、メイドも何人かきて、盛大に皆で泣き始めた。
(状況から察するに、私の体の子が何かあって。目が覚めたと言うことなんだろうけれど。自分って小さくなってしまっているし、この人達は誰だかわからないし……)
困惑してしまい声も出せない。
(一体どういうことなの?)
もともと冷静なタチなので顔にはあまりでない方ではあるが、こちらもいきなりの状況に混乱してしまう。パチパチと瞬きをして辺りを見回したが、そんな仕草でも感動するらしい周囲の人は賛美の声をあげる。
(ああ、変なことに巻き込まれたかも。)
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