幕間四 自問しようと自答に至らず

 ――……〈フィンブル・リペア05〉からの信号を受信……受信完了。次いで〈フィンブル・リペア05〉に新たな指示を送信。〈シートン〉に侵入し指示内容を果たせ。

〈フィンブル〉は転送されてきた戦闘データを閲覧する。

 強引ながらも見事な奇策に感嘆するしかない。

 閲覧する中、自問する。

 何故、我は観測対象であるソウヤと攻撃対象である〈ロボ〉を試すような行為を行ったのか?

 別なる観測データを蒐集するため、が適合率は高くも、我にある別の何かが解答に違和感を与えてくる。

 この違和感に関しては観測を続ければ解答を得られると判断。

 ソウヤの観測の続行を決定。

 侵入した〈フィンブル・リペア05〉の新たな報告を待つ。

 次いで〈地球のマザー〉の現情報を再確認。

 DT研究所で得た情報を元に総司令部跡地に向かうも、我の砲撃により完全消失。

 かつては民主主義の自由を唄い〈千年戦争〉時において一大勢力の拠点であったが今では半径一〇キロメートル、深度一キロメートルにかけて消失している。

 有力情報なし。砲撃判断に過ちは無い。

 DT研究所のデータベースより〈地球のマザー〉による不可解なデータを確認。

 西大西洋沖、一一時三四分開戦、七八時間後、一五時二三分終結。

 同時刻、インド洋沖、四時四分襲撃、四時二五分撤退。

 データベースに該当記録あり。

 かの〈千年戦争〉時の記録と符合する。

 同じ戦争を繰り返している……? 何のために? 目的は?

 現状ではデータ不足につき、仮説しか構築できず。

 情報を得るためには新たなデータベースにアクセスする必要がある。

 ……ユーラシア大陸にある集合データベース〈NOAH〉が最適と判断。

〈千年戦争〉時、戦火による損失を恐れた者たちにより、万が一を想定して建造された――文化、言語、娯楽、そして軍事技術――あらゆるデータが保存されたデータベース。

 データの箱舟として建造されたために、外部とのネットワーク接続は遮断されている。

 またデータベースは要塞のように堅牢であり、尚且つ防衛用DTが現在も起動している。

 アクセスする必要があるだろう。

 加えて〈地球のマザー〉本体もあのデータベースに存在する可能性が高い。

 ――……目標、ユーラシア大陸、集合データベース〈NOAH〉。

〈フィンブル〉はアメリカ大陸より更に東へと移動を開始した。

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