第1章 告白

もう1人の人格、名前はクロ

 僕の名前は紅史郎。高校一年生で、天陽院学園へ歩いて登校中だ。

 現在四月末、この通学路の景色も見慣れたものである。もう二十日以上歩き続けてきた道だ。車や自転車、他の歩行者などの障害物が無ければ、目を瞑っていても学校にたどり着く自信がある。たまには別の道を通って学校へ行ってみようかな、なんて思うこともある。


「(学校なんてかったるい所、よく毎日行く気になれるよな)」


 僕の頭の中に、男の声が響く。この声も聞き慣れたものだ。もう十年以上聞き続けてきた声だ。脳内に直接伝わるこの声なので、耳を塞いでも聞こえてしまう。たまには別の声を聞いてみたいな、なんて普通ではありえない、無理なことを思ったりする。


「(勉強受けるのは子供の義務だよ)」


 男の声に反論する。

 僕は二重人格者だ。さっきから不真面目な発言をしてくる者が、僕の脳内に住んでいるもう一人の人格。区別するために僕は本名を文字って「シロ」、裏の人格は白の反対で「クロ」と命名。僕は彼をクロちゃんと呼んでいる。

 その名前を名付けたのは僕が子供の時だったけど、その時本人は安直だ、もっとカッコいい名前がいいと言っていた。僕はいい名前だと思うんだけどな。


 僕とクロちゃんは今のように脳内で会話ができる。


「(だいたい義務教育は終わったのに、わざわざ高校に行く意義が理解できねえ。センセーの言ってることはさっぱり分かんねえし)」


 クロちゃんが不真面目な発言をする。確かに一理あるけど、勉強はしておいて損はないだろう。それにさっきクロちゃんにも言ったけど、勉強は子供がする仕事だ。サボるわけにはいかない。


「(それに、今のご時世、中卒じゃ暮らしていけないでしょ?)」


 僕はクロちゃんの嫌いな学び舎に続く通学路を進む。校舎が見えてきた、もうすぐ到着するな。

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