—15— エピローグ
イナク村から帰ってきてからしばらくしたある日の朝、ウィルはクラウに街の外の人気がないところに呼び出されて剣の稽古に付き合っていた。クラウの大剣を使った重たい剣撃と、それを柔軟に受け流すウィルの刀がぶつかり合い、心地よい金属音を奏でる。クラウも王国の中では有数の剣の使い手ではあるが、ウィルはその攻撃を簡単に受け流し、たまに寸止めではあるが斬撃をクラウに仕掛けていた。やがて疲れたのかクラウは降参するように両手を挙げると疲れたのか地面にあぐらをかいて座った。
「はあー、疲れた。やめだやめだ!」
「お疲れ様です」
「やっぱお前強いわ。全然勝てる気がしねえー」
「クラウさんだってかなり強いじゃないですが」
「そんな慰めはいらねぇよ。自分よりも若い奴に負けるなんて俺もまだ精進が足りねぇな」
「俺でよければいつでも稽古に付き合いますよ」
そう言うとウィルもクラウの近くに腰を下ろして休んだ。ウィルもクラウも暫く鳥の囀りや草木の擦れる音に耳を傾けながら休んでいた。そしてしばらく立った時にクラウが口を開いた。
「なあウィル、お前は星の守護者なのか?」
「・・・どうしてそう思うんですか?」
星の守護者という一般的には全く聞きなれない言葉にも関わらずウィルはクラウにそう思った理由を訪ねた。
「俺がまだ王国騎士団に入団したばかりの頃、ブルメリア王国よりもずっと北にあるインファタイルっていう国と戦争してたんだ。インファタイルがあるジェリド大陸はオーパーツが沢山眠っているからか、その戦争にも大量のオーパーツを投入してきてな・・・。結構やばかったんだ」
クラウの話をウィルはずっと黙ったまま聞き続ける。
「それで本当に負けるって思った時に急に空から女が降ってきやがったんだ。そしてその女はたった一人にも関わず凄まじい剣術であっという間にインファタイルの軍を壊滅させて去っていった。俺にはその女が何者なのか、何であの場にいてインファタイルの軍を壊滅させたのかもわからなかった。ただ団長が言ってたんだ。あれはこの星の守護者だってな。星の守護者がいまいちなんなのかは未だにわからねぇが、その時の女は遺跡の中でお前が使っていた剣術と全く同じものを使っていたぜ。ちょうどお前が持っているのと同じような剣でな」
「そうですか・・・」
「なぁウィル、星の守護者ってのはなんなんだ?お前は俺達の敵か?味方か?お前は星の守護者なのか?」
「・・・。星の守護者については何も言うことはできません。ただ、確実に言えることは俺は星の守護者ではありません。今はシャムロックに所属するただの新米ディガーですよ」
「・・・そうか。変なこと聞いてすまなかったな」
「いえ、気にしないでください」
「さて、と、そろそろラスの朝飯が出来たころだな!シャムロックに戻るとするか!」
朝から運動して腹が減ったのかクラウは立ち上がるとヴィオラの街の方へと歩いて行った。
「クラウさんは先に帰っていてください。俺はもう少しだけ休んでから戻ります」
「おう、わかった。あんまり待たせるとラスが拗ねるからなー。そんなに長居すんじゃねーぞー」
ウィルは少しだけその場に残ってどこか懐かしいような、そして悲しいような表情で風に揺らぐ草を眺めていた。
「星の守護者・・・か」
--ウィル編第二章「あの空にもう一度虹を架けて」 完--
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