第8話 過去そして
総統は静かに口を開いた。
『アレク、お前達の父親と私は親友でね。幼いお前達にも会っている。覚えてはいないだろうがな。』
『私は元々政府の裏で暗殺をしていた部隊に所属していた。名を紅の霧と言う。』
『しかし、政府は我々の存在が邪魔になると我々の存在をこの世から消そうとした。そんな事を黙って受け入れる訳も無く、我々は対抗したが負けた。政府の新型兵器の前に仲間達が散っていった。そして、私自身も深傷を負い僅かな部下を庇いながら逃げた。そんな我々を助けてくれたのがお前達の父アンドレアス博士だった。』
『アンドレアスは自身の研究施設に我々を匿いほとぼりが冷めるのを待っていたが政府もそう甘くはなかった。研究施設にも政府の連中が来たのだよ…だがいつまでもここにいてはアンドレアス自身が危ないと思い私は投降しようとした。しかし、何を思ったのかある日アンドレアスは政府に連れていかれた。いや、自ら行ったんだ。残された我々はアンドレアスの手紙を見つけた。そこには緊急時の脱出用の船と見たことの無い武器があると書いてあった、そしてスチームコアと彼女…そうセブンだった。我々はこれらを持ち火星へ逃げて再起を謀る事にした。アンドレアスの家族を守る為に数名の部下を残してな。』
アレクは訊ねた。
『それが反地球連合の始まり…なんですね。その後父さんはどうなったんです?俺もある日突然父さんがいなくなって母さんが泣いていたのを覚えてます。』
ジークが答えた。
『父さんは、アンドレアス博士は政府に連れていかれたのでは無い。自分の研究を完成させるには莫大な資金と施設が必要だった…その為に政府に寝返ったんだ。家族も親友も捨てて。』
総統も頷いた。
『地球の部下とは直ぐに連絡が途絶えてしまった。最後に来た通信ではアンドレアスは敵だ。とそこで終わってしまってね。私も彼を信じたいが確かな事がある。それは政府にもスチームコアと似たような、いやそれ以上の力をもった組織が出来たのだ。』
『その組織の名はアンドレアス騎士団。彼の名を冠した名だ。そして、その団長が君達の父親アンドレアス自身なんだよ。』
アレクは愕然とした。自分が戦う相手が父親だなんてそんな悲しい話があるのかと。
ジークはアレクに言った。
『これは全て真実だ。全て受け入れるのはまだ難しいかも知れないがアレクの力が必要になる時は必ず来る。覚悟はしていてくれ。すまない。』
アレクは真実を知らされ戸惑い胸が苦しくなっていた。これから待っている戦いは実の父親との戦いなんだと…そう今は兄を信じるしか無かった。彼にはもうジークと生き別れた母しかいないのだから。
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