第24話

 朝目覚めると1日進んでいた。昨夜の修羅場はやり直し案件かと思ったが、どうやら違うみたいだ。 俺としてはやり直したいのだが。 肝心な時に由夏は現れない。


 今日は月曜日で学校があるのだが、いつも起こしにくる唯がまだ来ない。

 やっぱり……なんか怒ってるよな唯

 まいったな……


 とりあえず……学校に行く支度でもするか。

 思えば2回目の高校生活ではあるが、元々頭の悪い俺なので高2の授業内容に全然ついていけてなかった。 数学なんて分からなすぎて授業中ほとんど寝て過ごしている。 まあ当時もそうしていたのだが。

 そんなことを考えながら、数学の教科書をカバンに突っ込む。


「淳一、唯ちゃん来たわよー!」


 あれ? なんだ唯、結局来たのか。

 なんだよ心配して損した。


「分かった。 すぐ行く」


 急いで準備をし、玄関へ向かった。

 玄関に着くと唯がわかりやすいしかめっ面をして立っていた。

 やっぱり怒ってるな……


「お、おう唯。 お待たせ」


 恐る恐る唯に話しかける。


「……」


 俺が話しかけても唯はそっぽを向いている。

 ……無言かよ。 頼むから返事してくれ!


「あー……じゃあ学校行くか」

「……ん」


 不機嫌そうに唯は頷き、俺たちは学校へと向かった。

 沈黙に耐えきれず、間を埋めようとカバンを開けると弁当を入れ忘れたことに気づいた。

 あー、急いでたから忘れてたわ……まあ購買で買えばいいか。


 学校に着き、教室に向かう途中でさっきから終始無言の唯に話しかけた。


「ちょっと先に購買寄っていいか? 弁当持ってくるの忘れたわ」

「ん」


 不機嫌そうに唯は頷く。 自然と俺の顔もこわばる。

 さっきから「ん」しか言ってねえし……

 目も合わせてくれないし……

 さて、どうしたもんかな……


 購買に着き、俺は今日の昼飯を選び始めた。

 少し悩んだ末、結局定番の焼きそばパンとカップラーメンを買うことにした。 会計を済ませ、購買の外で待たせている唯の元に戻るとさっきよりも不機嫌な顔で俺を睨みつけた。


「……遅い」

「す、すまん……ほら、これやるからさ! ごめんって!」


 さっき買った焼きそばパンを唯に手渡すと、途端に唯のこわばっていた顔が緩んでいく。


「え! くれるの?」


 唯がしかめっ面から完全に笑顔になり俺を見つめた。

 唯の笑顔の可愛さに俺も自然と口元が緩む。

 そのことを気付かれないよう、唯の顔を直視せずに呟く。


「あ、ああ。 付き合わせて悪いからな」

「ありがとう淳一!」


 なんだこいつ……単純かよ。 そういう俺も単純かよ……

 ……今思い出したけど、昔にもこういうことがあった。 小さい頃、俺が唯を怒らせるようなことをした時、今みたいに唯の好物をあげた。 すると唯はすぐ機嫌を良くして俺を許してくれた。

 そんな単純な唯が可愛く思えて……愛しくも思えた。

 でも変なところで素直じゃなくて単純じゃないんだけど。

 そんなことを考えていると思わず笑ってしまう。


「何笑ってるの?」

「いや、唯って単純だなーって思ってな」

「は? 何よいきなり」

「まあ、お前が機嫌良くなったみたいでよかったわ」


 俺がそう言うと唯は顔を曇らせた。


「は? 別に機嫌悪くないけど?」

「いや、機嫌悪いだろ……朝から超不機嫌だっただろ」


 俺がそう言うと唯は俯きながら口を開いた。


「……だってあの女……真柴さんが……」

「真柴がどうかしたか?」


 俺が問うと、唯は一瞬俺の顔を見たかと思えばすぐ視線を逸らした。


「別に……なんでもない。 忘れた!」

「忘れたってお前……まあいいけどさ」


 俺はそう言って、教室へと歩きはじめた。


「……バカ淳一」


 唯はしばらくしてから俺の後を追って来た。

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