第17話

目が覚めると花火大会当日の朝に戻っていた。

どうやら由夏がまた戻してくれたらしい。

ループは一回だけしか使えないからこの一回で未来は決定する。

由夏が言った「自分からアクションを起こすこと」を今回は実践しようと思う。

由夏との約束が嘘にならないためにも。


ってことでまずは…


「あ、もしもし真柴?」


「もしもし淳一くん?ちょーどよかった、夕方から花火大会行かないかい?」


「悪い。俺にはやらねばならぬことがあるんだ。」


「おぉ〜、男にはやらねばならないことがあるんだね!かっくうぃー淳一くん!」


「ってことだからお前の小説の取材に付き合えない。悪い!」


「え!?なんで私が小説書いてること知ってるの!?」


「あ、えーと…まあそういうことだからまた今度付き合ってやるから!ってことでじゃあな!」


「むー?いまいち腑に落ちないけどまあいいや。頑張ってね淳一くん!男になってこい!!」


「おう!」


ピッ


これで唯と相川に出くわすことはない。

しかしだからといって花火大会を相川と一緒に行って欲しくない。


だがこれは俺の願いだ。

俺は彼氏でもないし強制する資格だってない。

でも、わがままな願いでもここで伝えなかったらきっと俺自分自身後悔するだろう。


俺は唯の携帯に電話することにした。

ボタンを押す指が震える。

こんなに緊張するのはいつぶりだろう。

唯にもしかしたら嫌われてしまうかもしれない。

そういった思いが原因だろう。


プルルルル、プルルルル、プルルルル


「はい。」


3コール目で唯が出た。


「もしもし…俺だけど」


「もしもし淳一?どうしたのよいきなり」


「ああ…なんだ…あれだ今日花火大会行くんだろ?」


「……うん。相川くんと行くわよ。」


「……だよな。」


「それがどうしたの?」


「………それ行くのやめてくれねえかな?」


緊張で声が震えそうになる。


「…………。」


唯が無言になる。

1分ぐらいの沈黙があった。

1分の沈黙後唯が口を開いた。


「………早く言ってよ。」


あまりにも小さい声で言うものだから唯がなんて言っているかわからなかった。


「ん?なんて言ったんだ?」


「…………それ私が誘われてた時に言って欲しかった…」


「それって…どういう…」


「なんでもないっ!…ていうか…何で私に行ってほしくないの?」


「それは……………お前を取られるのが嫌だったから」


「………」


また沈黙が続いた。


「………私の彼氏でもないくせに…淳一はずるい。」


「…本当そうだよな。でも小さい頃から知ってる唯がどこか遠くに行ってしまうみたいで嫌だった。」


これは俺の本音。

11年前には言えなかったことだ。


「………私はどうすればいいの?」


「………相川とじゃなくて俺と花火大会に行ってほしい。」


「………わかった。」


「え、本当か?」


「うん……でも今日の花火大会は…ダメ。相川くんとの約束破っといて今日の花火大会は淳一とは行けない…」


「うん。」


「今日の花火大会は断る…それで淳一とは来週の花火大会に行く。それでいい?」


「ああ。ごめんな。」


俺がそう言うと唯は通話を切った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る