Dandelion

時雨

プロローグ 光の射す方へ

「はぁ…はぁ……くっ、うあぁ……はぁ…はぁ…はぁ………」

ダメだ。あいつらずっと追ってきやがる。

町の狭い路地を右へ左へ。ひたすらに駆け抜ける。

「おーい!!待てこの泥棒ネコ!!!今日こそとっちめてやる!!」

くそ…もう体力がねぇ…

でもそれはあいつらも同じはずだ。

もう少し…もう少し耐えれば…!

「えっ!?うわっ!……」

しまった!…何かにつまづいた…!?

「くっ…くそっ…!」

なんとか立ち上がろうとするが、体がいうことを聞かない。

「う…動けぇっ…!!」

なんとか立ち上がった。…が

「な…!?」

再び走りだそうとした時にはもう遅かった。

俺の手を奴らがしっかりと掴んでいた。

「へっ。やっと捕まえたぜ。」

「今までの分、払ってもらおうか。」

「でも、どうするよ。まずボコしてぇとこだが、それで死んじまったら困るぜ。」

くっ…声も…出ねぇ…!

「まぁ、死んだらそん時だ。髪や皮やら売ったらどうにか金になるだろう。」

くっ…くそっ!お前らなんかに…!

「そうだなー!ハハハハ!!!そうと決まればさっさと殺っちまおうぜ!!!」

顔を上げるとそこにはナイフがあった。

俺は…もう…死ぬのか…。

盗んできたリンゴを見る。

もう一度、あの日みたいに…



「あ!見て見て、ルナト!!!リンゴだよ!リンゴが生ってる!!!」

「お!よっしゃ!一緒に登って採ろうぜ!!」

「えー!やだよ、私!!」

「なんでだよー、ほら。行くぞ!」

「え、ちょっと待ってよ!だって怖いじゃん!!」

「大丈夫だって!俺がついてる!!」

そうして俺達はリンゴの木に登り木の上でそのままリンゴをほおばった。

「んー!!おいしいね!このリンゴ!!」

「だな!!」

「これからも二人でたくさん食べようね!

はいっ!約束!」

そう言って彼女は小指を出した。

「おうっ!約束なっ!!」


「また絶対、二人でリンゴ食べよう!!」



ごめん…俺、約束守れなかった。

せっかくリンゴも手に入れたのに…

ほんと…ごめんな……

「オラああああ!!!」

俺の体に数本のナイフが刺される…


その瞬間、一筋の光が走った。

そして、ルナトの心臓で輝きを放った…


「う、うわっ!なんだこれ!!」

村人達の持っていたナイフが吹き飛ぶ。

光は次第に大きくなり、やがて、その中からいくつかの影がみえた。

影が語りかける。


「なぁ、お前。俺達と一緒に光の射す方へ、行ってみねぇか?」


俺は光に…手を伸ばす………


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