第45話 完璧過ぎる大魔導師の恐るべき能力達

 コルドー長官が先代聖女マナを追いつめ死なせた原因の一つであったことが発覚し、幻の七人目の通報によって取調室から追い出された。

 今、取調室にいるのはウリッツァ班の四名とロリアス・パソビエと、幻の元七人目こと取り調べを記録する人の計六名となった。


「この絵達のついでにもう一つ、私と貴方の互いの脳内や視界や行動を監視しあう魔法についても聞かせてもらえますか?」

 前回事情聴取に用いた絵の束で風を起こすように上下に揺らすマギヤにそう言われたロリアスは

「監視しあう……ちょっとおかしいね。ボクはキミ越しにエニスくんやプリストラ、ついでにキミ自身とかを監視する魔法や、ボクに不都合な手がかりを示させないためにキミの行動に干渉する魔法はかけたけど、キミにボクの行動を監視させるようにした覚えはないよ」と部分否定する。

「へえ、貴方に不都合な手がかりを示させない……と言った割には、それに繋がりうる絵を、私に描かせたのはなぜです?」


 その理由についてロリアスは、

「ああ、それね、先代聖女マナの手がかりやらなんやらを聖女親衛隊とかにやたら尋ねられて適当に追い返しまくった結果、ついに誰も来なくなった上に、マギヤくん含めて誰もヴィーシニャが人形であることを本気で疑ってないみたいだからさ。

これじゃボク処刑されないって思って、キミを、マギヤ・ストノストくんを利用することにしたからだね。

あ、一応言っとくとマギヤくんがヴィーシニャ人形を崩壊させる結果になったのは、ボクがキミの行動に干渉したからだよ。

まあ、もうキミの行動に干渉する魔法を解いたけどね」と言った後、

取り調べを記録する人を呼び寄せ、マギヤに適当な絵を描かせるための手頃な紙と筆記具を渡すよう頼み、マギヤは、ロリアスに目をやった後、絵を描いた。



「おいちょっと待て、なんでロリアスの言うことを聞いてるんだ、この人?!」

 ウリッツァの取り調べを記録する人への疑問に対して、ロリアスは、そこの取り調べを記録する人や、過去の自分自身――ちなみに聖女交代式や、ウリッツァ班がバイトしに行った時や、ヴィーシニャをさらったときや、夏祭りやハロウィンの時や、リカ班を洗脳搾取虎の巻していた時にいたのは本人だし、直接対決時毒魔法を使う前の自分は本人でなく人形であったことも明かす。あと今ここにいるのはちゃんと本人である――や、先代や今代の聖女、聖女親衛隊の事務系職員など、かなり幅広い人間を、自分の魔法で動く人形にしていたことを話す。

 一体何のために……、というトロイノイの質問に、ロリアスは「そりゃあ、そいつら越しにキミや皆の行動を見て、ボクの今後の行動を考えるためだよ」と話す。


 また、ロリアスは魔力110以上マナオーバーなので限定的霊能力を持ち合わせている――マナオーバー性霊能力者リストには「自分の目の前で死んだ生物の背中に触れると使える霊聴覚」と登録されている――が、実際は自分が殺した生物の背中に触れると使える霊聴覚であり、どっちにしろ条件が限定的過ぎるから協力しなかったし、

実はエカテリーナのために自殺未遂を繰り返した影響で、性的絶頂中及びその後数分間限定で霊全体を全五感で認識できる能力を得たが申請しなかったため、やはり霊的捜査には協力出来なかったことや、マナを意図せず強姦し、家に戻ってから、エカテリーナに触れるか触れられるかしないと死体に触れなくても殺した者の声が聞こえるようになったことがあるとも話した―― 一人の時それらの声に「いなくなれ」と念じたら聞こえなくなったらしいが ――。



「確か聖女になにかしたら結構重い刑になったような……具体的にはどうだったけ?」

「聖女を精神的あるいは経済的に傷付ければ軽くて罰金・重くて終身刑、聖女を肉体的あるいは性的に傷付ければ軽くて罰金・重くて本人だけ死刑、聖女を死に追いやれば本人は無論その兄弟姉妹や両親や祖父母や子や孫も問答無用で死刑、ですよ」

「あと、この刑が適用されるのは今代聖女か交代してから五年以内の先代聖女にそうしたときだよ。ふう、久々に喋れた」

 プリストラがそう言ったついでに、それら親族の存在の有無をロリアスに確認するマギヤ。

「魔王因子は多胎児の二番目以降に生まれるって話だからボクにも兄がいたらしいけど、そいつも、生みの両親も、あとエカテリーナを含めた母方の祖父母はみんなボクが殺しちゃった。一応父方の祖父母がいないか、ちょっと前に父親の霊に聞いてみたんだけど、ボクの誕生前に二人とも死んだってさ。

エカテリーナとは結婚の衣装を着て写真を撮りはしたけど、それ以外には誰とも結婚せず、ずっと独り身だよ。あとボクとエカテリーナは一応孫と祖母だし、当時のエカテリーナの年的に妊娠は出来ないから、そこで子や孫がいる可能性も除外していいよ」

「……未婚の母を作ったこともないと?」

 このマギヤからの質問に対し、ロリアスは食い気味に、ない、と返した後こう続ける。

「一夜限りの相手が多いのは否定しないけど、避妊とかはいろんな面から徹底したつもりだし、向こうも……何も言ってこなかったからね。まあとにかくボクの知らない子孫が現れない限りは処刑されるのはボク一人だけだと思うよ」

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