好奇心は誰を殺す。

@TEL3

五つ星の住処

 高田良昭(たかだよしあき)が惚れ込んだその高台は、南東への緩やかな傾斜があり、その正面には二級河川が流れていることで、日当りも開放感も上々だった。

 高田は退職金のほぼ半分で高台の土地を購入し、そこに六畳半ほどの小屋を建て、一級建築士である彼は、自らが設計したそこで月の半分以上を過ごすようになった。急ごしらえで作ったのか使用した木材や資材はつぎはぎで統一感がなく、お世辞にも素敵とは言えなかったが、高田はそれも味があるとその出来映えに大変満足していた。


 地元住民が皮肉混じりに、「五つ星の小屋」と呼んでいることは知らなかった。

「五つ星の小屋」という名前のとおり、その小屋は正五角形の構造をしていた。

 ちょうど河川を指す形で五角形が描かれており、先端から三角形にあたる部分には大きな窓ガラスがはまっていた。二階建てで、一階はトイレとシャワーボックスだけ。居住スペースは二階のみだった。

 高田は高台からの眺望にこだわっており、南東に広がる河川とその奥に広がる田園風景を一望できるよう大きな二面窓にしたのであった。

 五角形の底辺にあたる壁際には二人掛けのソファーがあり、酒や飲み物をしまっておける小型冷蔵庫とこじんまりとしたローボード、それと大好きなジョン・コルトレーンのブルートレインを流すためのBluetoothスピーカーが小屋の中央付近に置かれていた。


 小屋に来ると高田は、トイレで用を済ませてからシャワーで汗を流し、ゆったりとしたスウェットに身を包んでから二階で寛ぐのであった。

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