運命の騎士ディスティニーナイト(⋈◍>◡<◍)。✧♡
渋谷かな
第6話 運命の少女!?
(私は死ぬの!?)
少女は空を落下している。
数分前。
「わあ! すごい! きれい!」
学校の行事で東京スカイツリーを見学しに来た。展望台から外の眺望を楽しく見ていた。制服姿の女子高生が集団で押し合いへし合いしながら見学していた。建物は人がもたれてもビクともしない丈夫な造りになっている。
「え?」
窓にもたれながら景色を見ていた少女は、誰かに押された。そして、その力は人間の力を遥かに超えるもので、少女の体は窓を突き破り空に投げ出された。窓ガラスの破片がキラキラと光っている。
少女、落下中。
(私はこのまま死ぬの!? これが私の運命なの!?)
少女は高さ600メートル以上からの高さから地面に向けて落下しているのに冷静だった。まるで落ちて落下して死んでいくのが自分の運命なら、その運命を受け入れようとしているみたいだった。
(あなたは運命を受け入れるの?)
その時、どこからともなく声が聞こえてきた。自分が作り出した幻聴なのかもしれないとすら思えるぐらい少女は落ち着いていた。そういえば「運命」について考えたことなどなかったかもしれない。
(あなたは運命を変えたいと思わないの?)
(運命を変える!?)
(このまま地面に体を打ち付けられて、死んでしまってもいいの? 生きたいとは思わないの?)
(いや! 死にたくない! 私は生きたい!)
少女は1人で自問自答しているかのように謎の声と会話していくうちに、自分の本当の気持ちにたどり着く。少女はこのまま死んでしまう運命を拒み、空中を落下しながらも助かる、生き残る運命を自らの意志で選んだ。
(あなたの運命を変えてあげましょう。)
空中を落下していたのが止まった。地上からの高さは100メートルぐらいだろうか、落下スピードを考えるとギリギリの所で止まったと思われる。そして頭から落下していた少女の体は半回転し頭が上になり空中に浮いている。
(こんにちわ。秋葉原アリスさん。)
(どうして私の名前を知っているの!? あなたは誰!?)
(私は運命の女神ディスティニーちゃんです~♪)
謎の声の主が現れた。白い背中に羽の生えた小さな妖精にも見えるが、本人が運命の女神と言っているので神様なのだろう。少女が運命を変えたいと願ったので、自分の出番が回ってきたのが嬉しいのか、運命の女神は笑顔で楽しそうだった。
(運命の女神!?)
(運命の女神のディスティニーちゃんです。)
(助けてくれるの!?)
(はい。アリス、あなたにはディスティニーナイトになる運命です。)
(ディスティニーナイト!? なにそれ!?)
(ディスティニーナイトは、人間が不幸になりそうな運命を、幸福な運命にする、運命の騎士です。)
(おもしろそうね。いいわよ。運命の騎士、やってやろうじゃない。)
(ありがとうございます。それでは、アリス・ディスティニー・ナイトと叫んで下さい。)
(アリス・ディスティニー・ナイト!!!)
高校の制服の女子高生が運命の光に包まれて、中世ヨーロッパ風の騎士を今時の女子高生が騎士になったような鎧盾剣を装備した姿に変身していく。普通の女子高生が運命の騎士ディスティニーナイトに初めて変身した。
(これがディスティニーナイト!?)
(どうですか? 感想は?)
(カ、カ、カッコイイ! 自分が中世の騎士になったみたい!)
(気にいってもらえて良かったです。)
(でも他の人が見たら変な人に見えない?)
(大丈夫です。他の人には見えませんから。)
(へえ~便利。)
アリスは剣や盾を珍しそうに興味津々で見ている。自分が自分ではなくなったような、もう1人の自分が生まれたような感動があった。そして気づかなくても良いことに気づいてしまう。
(あれ? どうして剣と盾がいるの?)
(それは人間を不幸な運命にしようとする悪者と戦うためです。)
(戦う!? そんなの聞いてないよ!?)
(え!? 言ってませんでしたか!? アッハハハハ!)
(笑ってごまかすな!)
アリスは笑って逃げようとする運命の女神を一喝する。今日は東京スカイツリーにやって来てきれいな景色を見て窓から転落し、運命の女神に助けられ、運命の騎士になり、不幸な運命と戦うと言われても、アリスには理解できないことばかりだった。
(あ!? 不幸な運命がやって来ます!?)
(え!? なに!? )
アリスが落下した東京スカイツリーの同じ窓からと思われるところから、1人の女の子が落下してきた。ベースはアリスと同じ中世ヨーロッパの騎士のような姿をしているが全体的に黒味がかかっている。
(イザベラちゃん!?)
(逃がさないわよ! アリスちゃん!)
アリスの前に現れたのはクラスメートの伊集院イザベラだった。彼女は何かに憑りつかれたようにアリスに対して敵意をむき出しにしていた。いったいイザベラに何が起こっているのだろうか。
(どうしたの!? イザベラちゃん!? )
(アリスちゃんは顔もカワイイし、スタイルもいい。テストの成績も良く、運動神経も抜群。クラスでも人気者だわ。私なんか何をやってもアリスちゃんには敵わない。こんな私の惨めな気持ちなんて、アリスちゃんには分からないのよ!)
(ええ!? そんなの言いがかりよ!? 運命なんて自分で切り開くものでしょう!?)
(問答無用!)
確かにアリスにはイザベラの感情は理解できなかった。顔がカワイイのは生まれつき。スタイルは維持するためにダイエット中。勉強は毎日の予習と復習をこなし、運動神経は毎日のランニングとラジオ体操を日課にしている。基本的にアリスは真面目な努力家であった。
(アリス。彼女はアリスに対する嫉妬心を利用されて、悪者に不幸な運命の騎士ダークディスティニーナイトにされているんです。)
(ダークディスティニーナイト!?)
(彼女の不幸な運命を打ち砕き、元の彼女に戻すことができるのは、アリスだけだ!)
(私だけ・・・って言われてもどうすればいいのよ!?)
(簡単に説明するよ。ディスティニーソードで攻撃して、ディスティニーシールドで防御が基本です。)
(そんなこと言われても、私、剣なんて使ったことがないわよ!?)
(ディスティニーナイトに選ばれたアリスなら、きっとできますよ!)
(気軽に言うな!?)
(何をゴチャゴチャ言っているの? 私がアリスちゃんに勝つためには殺すしかない! アリスちゃん! お願いだから死んでちょうだい!)
(ええ!?)
イザベラはアリスを剣で攻撃してくる。突然のことなのだがアリスは持ち前の運動神経でイザベラの攻撃を剣と盾を使いながら上手に防いでいく。まるで熟練のグラディエーターのようだった。
(体が勝手に動いてくれる!?)
(さすがアリス。ディスティニーナイトに選ばれたのも納得です。)
(関心しなくていいから、イザベラちゃんを元に戻す方法はないの!?)
(彼女の不幸な運命を打ち砕けばいいんです。)
(どうやって?)
(ディスティニーナイトには必殺技があります。)
(必殺技!?)
(剣に神経を集中すると剣が光りますので、ディスティニー・ブレイクと叫びながら攻撃すると、不幸な運命を打ち砕くことができます。)
(おもしろそうね。やってやろうじゃない。)
アリスはイザベラを不幸な運命から救いたいと神経を集中させる。すると剣が光り輝き魔法剣のような状態になる。そしてアリスはイザベラの不幸な運命を断ち切るために必殺技を繰り出す。
(私が運命を変えてみせる! ディスティニー・ブレイク!!!)
アリスの必殺の1撃がイザベラのアリスに嫉妬している不幸な運命を打ち砕く。内気で自分の思っていることも何も言えない普段のイザベラに戻った。イザベラは意識を失っているのでアリスが優しく受け止めて抱きかかえる。
(イザベラちゃん!?)
(大丈夫。意識を失っているだけです。アリスが彼女の不幸な運命を打ち砕いたから、彼女はいつもの彼女に戻れたんです。アリスが彼女を救ったんです。)
(わ、私が!? 私はただイザベラちゃんを助けたいと思ったから。)
(運命を受け入れるのも、運命を変えるのも、アリス次第ですよ。)
運命の騎士ディスティニーナイトになったアリスは普通の女子高生でもあるが、アリスは運命を切り開き、不幸な運命を打ち砕くことができるようになった。謎なのは、なぜイザベラは尋常ではない力で暴れてアリスを襲ってきたのだろう。
(どうしてイザベラちゃんは私を襲ってきたんだろう?)
(アリスは彼女にとってあこがれの存在なんです。)
(憧れ!?)
(いつも彼女がアリスを見て心の中で思っている、アリスが楽しそうに笑顔で笑っていて羨ましいとか、アリスのように可愛くてスタイルも良くて成績優秀・運動神経も抜群で、私もアリスのようになりたいと思うけど、内気な彼女はアリスの様にはなれない。心の中に闇が生まれます。彼女の嫉妬心に悪者がつけ込んで、彼女の運命を不幸にしたんです。)
(酷い!? 悪者っていったい誰なの!?)
(アンハッピネスちゃんです!)
(アンハッピネスちゃん!? あれ? ディスティニーちゃんと似たような名前ね?)
(双子のお姉ちゃんです。エヘ。)
(エヘじゃない!? もしかして私は姉妹のケンカに巻き込まれているだけなんじゃないの!?)
(さあ、彼女を地上に下ろしましょう。)
(話をすり替えるな!? もう・・・。)
運命を弄んでいる悪者は、運命の女神ディスティニーちゃんの双子のお姉ちゃんの不幸の女神アンハッピネスちゃんだった。アリスの数奇な運命の騎士ディスティニーナイトとしての活躍が始まろうとしていた。
ここはアンハッピネス城。
「不幸な運命が打ち砕かれただって!?」
王の間の玉座に黒い小さな妖精さんみたいな女の子が座っている。これがディスティニーちゃんの双子の姉アンハッピネスちゃんである。妹のように幸せそうな運命の者が大っ嫌いなのである。
「申し訳ございません。アンハッピネス様。」
「レヴィアタンが不幸をしくじるとは珍しいですね。」
アンハッピネスちゃんに片膝を着いて頭を下げている者がいる。女性だが燕尾服を着て見た目を男装にしている者の名前は嫉妬のレヴィアタン。不幸な女神のアンハッピネスちゃんの配下の者である。
「地上に伝説の運命の騎士ディスティニーナイトが現れたようです。」
「なに!? ディスティニーナイトだと!? どうしてそんな者が!? そうか!? きっと私の邪魔をするのは妹のディスティニーしかいない!?」
「落ち着いてください。アンハッピネス様。」
「おお! ルシファーか。」
「はい、アンハッピネス様。今度はこの傲慢のルシファーが行って参りましょう。」
「なんと!? 男装の魔女のリーダーのルシファー自ら行ってくれるのか!?」
「人間なんて自分のことしか考えていない傲慢な性格のものばかりです。その人間の傲慢さを利用して不幸な運命を集め、ディスティニーナイトを倒してご覧にいれます。」
「期待しているぞ! たくさんの不幸な運命を集めて、魔王サタンを復活させ。世の中を不幸にあふれた世界にするのだ!」
「はは!」
上機嫌なアンハッピネスちゃんの元を悪魔のルシファーとレヴィアタンは一礼して去って行く態度は正に紳士であった。男装の魔女と言われる悪魔は全て女性で男のような容姿に整え燕尾服を着て正装している。
「それにしてもルシファー。」
「なんだレヴィアタン。」
「アンハッピネス様は本当に気づいていないのだろうか?」
「なにをだ?」
「我々は不幸な運命を集めて、魔王様を甦らせたいだけということに?」
「そして、自分が魔王様の生贄になることにか?」
「そうだ。あんまりにも純粋というか、間抜けすぎる!?」
「だから不幸の女神なんだろう。明るい妹がいると、少し劣るだけでも年下の妹になんか負けるものかという感情を抱いてしまう。そこに俺たち悪魔がつけ入る隙が生まれる。」
「おまえ本当に悪だな。」
「仕方ないだろ。だって悪魔なんだから。」
「違いない。」
「ワッハッハー!」
男装の魔女と言われる悪魔たちは、アンハッピネスちゃんの配下のフリをして人間の心の隙間を利用して不幸な運命を集め、魔王の復活を企んでいた。その事を不幸な女神のアンハッピネスちゃんは知らなかった。
アリスは東京スカイツリーの展望台から転落したが奇跡的に無傷で無事だったということで、簡単な病院で検査を受け、その日の内に自宅に帰ってきて自分の部屋の扉を開けた。
「おかえりなさい。」
「ディスティニーちゃん!? どうして私の部屋にいるの!?」
「アリスをディスティニーナイトにしたら幸福な運命エネルギーが足らなくなって、天上界に帰ることができなくなりました。だから天上界に帰るために、アリスに不幸な運命を打ち砕いて、幸福な運命を集めてもらいます。」
「どうして私が!?」
「責任をとって下さいね。よろしくお願いします。」
「ええ!?」
まるで不思議の国に行って大冒険をしたような、アリスの長い1日は終わった。これから運命の女神ディスティニーちゃんと一緒に、アリスは運命の騎士ディスティニーナイトとして、幸せな幸福の運命を集める日々が始まった。
つづく。
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