蘭子お姉さんと愉快な仲間達が引っ越して来たのよ!
私は箕輪まどか。高校生の霊能者だ。そして、人気大爆発の美少女でもある。
……。
悲しみがこみ上げて来るから、やめて……。
先日、あの上田博行とその母親の桂子が引き起こした路線バス暴走事件は、私が尊敬している西園寺蘭子お姉さん達の協力もあって、何とか解決する事ができた。
只、上田親子は未だにどこにいるのかもわからず、完全解決に至ってはいない。
「しばらくこちらに留まるわね、まどかちゃん。上田親子、かなり危険だから」
蘭子お姉さんと親友の八木麗華さん、そして、かつてボクっ娘だった柳原まりさんはしばらくG県に留まる事になった。
そして、皆さんの寄留先は私の彼氏の江原耕司君のお邸。
広さ的には何の問題もないんだけど、何しろメンバーが江原ッチには刺激的過ぎる。
蘭子お姉さんはともかく、若い男が三度のご飯よりも好きな麗華さんは江原ッチを狙うかも知れないし、お兄さんになるはずだった男の子の魂を「同魂の儀」という秘技で取り込んだまりさんは、逆に江原ッチが狙いそうなのだ。
実際、久しぶりに会った柳原さんは謝ってしまうくらい美人に変身していた。
元々綺麗だった人が、女性らしさをパワーアップさせたのだから、もう私では太刀打ちできない程だ。
「あれには嫉妬をする気持ちも湧かない」
親友の近藤明菜は全面降伏してしまった。彼の美輪幸治君がまりさんに心を奪われても、諦めると言った。
「そんなはずないじゃん、アッキーナ。俺はアッキーナ一筋だよ」
美輪君は口ではそう言いながらも、江原ッチのお父さんの雅功さんと話しているまりさんを横目で見ていた。
江原ッチも私を気にしながらも、ちょこちょこ見ていたのはわかっていたが、未来のお義父さんとお義母さんである雅功さんと菜摘さんの前では大騒ぎもできないので、目を瞑った。
「遅くなりました。お久しぶりです、江原先生、菜摘先生」
そこへあの暴力的なスタイルの持ち主である小松崎瑠希弥さんが現れた。
「おお!」
さっきまでまりさんを見ていた江原ッチと美輪君が瞬時に瑠希弥さんに視線を向けた。
この変わり身の早さはギネスブックに載るくらいだと思った。
「瑠希弥さん、お久しぶりです」
私はかつてこのお邸の道場で修行をした頃を思い出し、涙ぐんでしまった。
「お久しぶりね、まどかさん」
瑠希弥さんも涙ぐんでいる。何か足りないと思ったら、綾小路さやかがいなかったのだ。
今頃スーパーお爺ちゃんの名倉英賢様と修行に励んでいるだろう。
頑張ってね、さやか。
「ちょっと、私だけ登場させない気?」
どこかで聞いた事がある嫌味な声。まさか?
「全部聞こえてるんだけど?」
瑠希弥さんの後ろから、さやかが現れた。江原ッチが顔を引きつらせ、美輪君も思わず明菜の陰に隠れてしまった。
さやかも高校に入学して、認めたくないんだけど、また胸が大きくなったような気がする。
しかも、髪も伸ばして、まりさんと同じくらいの長さになっている。
「久しぶり、まりさん!」
「さやかさん!」
二人は抱き合って再会を喜んでいる。それを羨ましそうに見ている二人のバカ男共は後で明菜とダブル説教ね。
そして、江原ッチの妹さんの靖子ちゃんは、付き合っている力丸卓司君がいないのでホッとしているようだが、兄である江原ッチの節操のなさに呆れ顔だ。
私達にはそれぞれの再会を事細かに喜ぶ時間はなかった。
雅功さんが道場で緊急会議を開く事を告げたからだ。
さやかまで戻って来たのには
上田親子があれほど強気だった理由が見えて来たのだ。
「サヨカ会の残党の中でも強力な霊能力を有している幾人かが、上田親子の呼びかけに応じて集まるらしいのです」
ホワイトボードを使いながら、雅功さんが説明する。
「恐らく、その連中は、あの内海帯刀が闇の法具を授けた者達と思われます」
瑠希弥さんが言った。内海帯刀とは、蘭子お姉さん達が危険な目に遭いながらも何とか倒した英賢様の兄弟子と聞いている。
そいつのせいで、蘭子お姉さんは半年以上も眠ったままだったのだ。
「帯刀が遺してしまった負の遺産をこの世から完全に排除するためには、なるべく多くの協力者が必要です」
菜摘さんが言うと、美輪君が、
「もしかして、椿先生も来るのかな?」
江原ッチに小声で囁き、ニヘラッとしている。バカの二乗だな、全く。
「まどかさん達は七福神の力をもう少し自在に使えるようになるために訓練が必要です」
雅功さんが笑顔でサラッと怖い事を言った。思わず身震いしてしまう。
ニヤついていた江原ッチと美輪君がギクッとしたのを見て、ちょっとだけ嬉しくなる。
「それだけではなく、気の使い方も訓練しないとね」
瑠希弥さんは笑顔全開でもっと怖い事を言った。顔が引きつりそうだ。
「本当だったら、その仕事は私達だけで仕上げようと思ったのですが、まだ全員本調子ではありませんので、まどかさんや耕司君、そしてさやかさんや靖子さんの協力が必要なんです」
蘭子お姉さんが私達一人一人を見ながら言った。私達はそれに応じて頷いた。
本調子ではない? あのバスの一件で見せた蘭子お姉さんの力、あれで本調子ではないというのであれば、私はまだまだ追いつく事など叶わないと思った。
「上田達も、これだけの霊能者が集まっていれば、そう簡単には仕掛けて来ないでしょう。その間に全体のレベルアップをと思いますので、そのスケジュールを説明しますね」
雅功さんは相変わらずの笑顔で言い、目眩を起こしそうな緻密な計画を図を取り入れながら説明してくれた。
もうすぐ夏休みだが、ウキウキ気分も吹っ飛ぶような事になりそうだと思うまどかだった。
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