復活の会には親玉がいるのよ!
私は箕輪まどか。中学生の霊能者。
私と江原耕司君、そして綾小路さやかは学校に呼び出された。
コンビニで罠を張っていた復活の会のメンバーに痴漢呼ばわりされた江原ッチを助けるために私とさやかが摩利支天の真言でメンバー達を吹き飛ばした。
その時どこかに潜んでいたG新聞のカメラマンにこっそり撮影された。
それを椿先生のところに送りつけて来て、場合によっては問題にすると言って来たのだ。
G新聞はその背後に復活の会と密接な関係にある荒船善次郎氏がいる。
私達は連中の仕掛けた罠にあっさりはまってしまったのだ。
そのせいで私達三人は生徒指導の先生に叱られた。
さやかと江原ッチは違う中学校なので細かい事はわからないが、かなり厳しい事を言われたらしい。
私の場合、生徒指導の先生はクラス担任でもある藤本先生なので、その辺の事情はよく理解してくれていた。
「箕輪、お前には個人的にも世話になっているから、あまり厳しい事は言いたくないんだが、先生も所詮は公務員でさ。上からの指示には従わないといけないんだ」
久しぶりに入った生徒指導室で、藤本先生は決まりが悪そうにそう言った。
この部屋で先生の亡くなった奥さんの事を教えてあげたのだ。
先生はその時の事を思い出しているのだろうか、涙ぐんでいる。
ふと見ると、先生の後ろにはその奥さんの霊が
奥さんも申し訳なさそうに私を見ている。
「大丈夫ですよ、先生。わかってますから」
「箕輪」
先生は涙を零してしまった。貰い泣きしそうだが、この場で私が泣くと藤本先生に迷惑をかけるから泣けない。
「それより、奥さんが心配していますよ」
藤本先生はギクッとしたようだ。
「い、いるのか、女房が?」
先生は小声で尋ねた。声を小さくしても、奥さんの霊には丸聞こえなんだけどね。
「ええ、いらっしゃいますよ。椿先生に鼻の下を伸ばしている人が心配だから」
私はニヤリとして言った。藤本先生は今度は汗を零している。
「お、怒ってるのか?」
先生は意味のない小声で訊いて来る。
「怒ってはいないですよ。奥さんは優しい人だから」
すると先生はいきなり土下座をした。
これには私も奥さんの霊も驚いてしまい、思わず顔を見合わせた。
「すまん! そんなつもりはないんだ。椿先生にはそういう気持ちはない! それだけは信じて欲しい」
先生は額を床に擦りつけて言った。
奥さんの霊は微笑みながらスウッと消えてしまった。
「大丈夫。先生の言葉はしっかり奥さんに伝わりましたよ」
「そ、そうか」
半泣きの顔で先生は私を見た。
これに懲りて、椿先生にデレデレしないでよね、全く。
私達は放課後、江原ッチの邸の道場に集合した。
クラスの副担任でもある椿直美先生も合流した。
私とさやかは椿先生に叱られたので、もう江原ッチのお父さんである雅功さんとの事を話題にしない。
それでも気になるので、椿先生を見てしまうが、先生は雅功さんを見ないようにしていた。
「サヨカ会と違って、復活の会は主要メンバーを欠いても動きが止まりませんね」
雅功さんが言った。
「復活の会の幹部は神田原明徹と明正しかいないはずです」
父親を復活の会に殺されているさやかは内部事情に詳しい。
そのさやかでも、会の幹部に心当たりはないという。
「私達の知らない者が復活の会を動かしているという事でしょうね。それとも新に仲間に加わった者がいるか……」
江原ッチのお母さんの菜摘さんが言った。
「あ……」
さやかがピクンと顔を上げた。
「どうしたの?」
私はさやかに尋ねた。さやかは雅功さんを見て、
「一つ思い出しました。明徹と明正の父親が復活の会の創始者で、復活の会のご神体になっています。そいつは明徹明正兄弟より強大な霊能力を持っていたと聞いた事があります」
「その父親は今はどこにいるの?」
私はさやかに顔を近づけて尋ねた。するとさやかは、
「そいつは三十年前に死んでいるわ。だから私も忘れていたんだけど……」
意味ありげに言葉を切るさやかに私はドキッとした。
「いたんだけど、何よ?」
先を促した。怖いのであまり聞きたくなかったけど。
「そういう事ですか」
雅功さんが言った。さやかは雅功さんが理解してくれたのを感じ、
「あまり考えたくないのですが、それしか考えられません」
嫌な予感は的中してしまったようだ。
「明徹明正の兄弟の悲願はそれだったのも思い出しました。だから連中は復活人をたくさん作り出していたのです」
さやかは悲しそうに言う。復活人は、亡くなったご遺体に復活の会のメンバーの霊体を乗り移らせたものだ。
死者に対するとんでもない
こんな時だけど、冒涜って何?
「なるほど。亡き父を復活させるために遺体をあちこちから集めていたのですね。おぞましい事を考える」
雅功さんの表情が険しくなった。ああ、あの表情、椿先生がキュンキュンしちゃいそう。
何て事を妄想していたら、先生に睨まれた。心を読まれたようだ……。まずい……。
バツが悪くなって俯いた。
「バカなんだから、あんたは」
さやかが白い目で見る。ううう……。何も言い返せない。
「神田原明丞が遂に甦ってしまった可能性が高いようですね」
菜摘さんが雅功さんの言葉を受けて言った。
私は思わず江原ッチと顔を見合わせてしまった。
「椿さん、しばらく時間をください。お師匠様に相談して来ます」
雅功さんが椿先生を見て言った。椿先生は頬を赤らめて、
「あ、はい」
と応じた。可愛い、先生ったら。あ、また睨まれた。
「まどかさん、さやかさん、それから耕司、私が戻るまで復活の会と事を構えないように。頼みましたよ」
雅功さんの真剣な表情に私達は黙って頷いた。
何だか怖い展開になりそうだ。
それにしても、復活の会以上に気になる事があるような気がするまどかだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます