マナー違反はいけないのよ!
私は箕輪まどか。中学生の超美少女で、しかも天才的な霊能者だ。
前回、「なければないで寂しい」って言った事への当てつけなの?
意地悪! え? 何かキュンとしたって、変態なの?
期末試験の惨劇の後、お母さんのお説教地獄があり、お父さんの絡み酒もありで、夏休み早々酷い目に遭っている。
その上、エロ兄貴にまで、
「まゆ子を
と懇願された。
エロ兄貴は、北海道へ行ってしまった小倉冬子さんに会うために、またしてもまゆ子さんを架空の研修旅行で沖縄に行かせようとしたのだ。
でも、いくらおっとりした性格のまゆ子さんでも、二度も同じ手には引っかからない。
と思ったら、引っかかって行ってしまった。
で、私のお母さん(つまりエロ兄貴のお母さんでもある)が、まゆ子さんにチクッたのだ。
最初は信じなかったまゆ子さんだったが、お母さんに証拠の航空チケットの画像を送信されて信じたようだ。
「全く。私はまゆ子さんの味方だから、お兄ちゃんの肩は持たないからね」
すると兄貴は、金にモノを言わせて来た。
「これでどうだ」
樋口さんが目の前を行ったり来たりしている。
「何とかしましょう」
成績ダウンで金欠だった私は、ついその「悪魔の誘惑」に乗ってしまった。
「頼んだぞ、まどか。愛してるからな」
兄貴は投げキッスをして、私の部屋を出て行った。
気持ち悪いから、愛してるとか、投げキッスとかしないで欲しい。
私は妹なんだし。
え? 最近はそういうのが流行ってるって?
ウチは違うからね!
そんなこんなで、私はまゆ子さんを宥めるためにまゆ子さんの住むM市の高級住宅街に向かった。
もちろん、空は飛べないから、自転車でよ。
それから、スカートじゃなくて、ジーパンよ。
最近、変態が多いから。
兄貴がまゆ子さんと付き合い始めたのは、まゆ子さんがお金持ちのお嬢様だと知ったかららしい。
私もまゆ子さんとは長い付き合いだけど、全然知らなかった。
まゆ子さんは警察の寮に住んでいたけど、いよいよ結婚間近か、となったので、実家に戻ったのだ。
知らない訳だ。え? 本当は、作者が急に思いついたんだろうって?
ダメよ、そんな裏話しちゃ! また干されちゃうわ。
そんな妄想をしているうちに、私はまゆ子さんの家の近くに着いた。
「あれ?」
いけない。また特殊能力が発動した。
住宅街の交差点の角に幼い男の子の霊が
それも、両目を火傷して、酷い
どうやら、マナー違反の大人が歩き煙草をしていて、下ろした手の近くに男の子がいて、煙草の火が目に入ってしまったようだ。
しかも、男の子は熱さのあまり、その場で転んでしまい、走って来たトラックに跳ねられてしまったのだ。
トラックの運転手さんは驚いて車を停め、すぐに救急車と警察を呼んだ。
運転手さんは驚きながらも、立派に対応し、男の子のために手を尽くした。
でも、男の子は救急隊員の皆さんの懸命の努力も虚しく、亡くなってしまった。
しかし、歩き煙草の男はそ知らぬフリをしてその場を立ち去ってしまった。
目撃者はなく、トラックの運転手さんも煙草男を見ていない。
警察はその男の存在に気づく事なく、トラックの運転手さんの自動車運転過失致死と断定した。
酷い話だ。
その男は、自分のせいで男の子が転んだのに気づいている。
それなのに現場からサッサと立ち去った。
私は怒りで叫びそうになった。
「ねえ、煙草を吸っていた人を待っているの?」
私は男の子が悪霊化しそうな雰囲気だったので、声をかけた。
「うん。一緒に行って欲しいから」
男の子は火脹れの目を私に向けて言う。
背筋が寒くなるほど冷たい声だ。
「ダメよ、そんな事しちゃ。お母さんとお父さんが悲しむよ」
私は事故現場に供えられた花束を見下ろして言った。
「え?」
男の子はキョトンとしている。
「そんな事をしたら、貴方はその人と一緒に地獄に堕ちてしまうわ。悲しくて悔しいのはわかるけど、このまま行くべき場所に行って」
私は光明真言を唱えた。
「オンアボキャベイロシャノウマカボダラマニパドマジンバラハラバリタヤウン」
男の子が光に包まれる。彼の火脹れは消え、元の可愛い顔に戻った。
その火脹れは、煙草男に対する憎しみでできていたのだ。
だからそれさえなくなれば、消えるのはわかっていた。
「ありがとう、奇麗なお姉ちゃん。僕、行くよ」
男の子はニコッとして、光と共に天へと上がって行った。
私は彼が見えなくなるまで手を振った。
あれ? 何しに来たんだっけ?
ああ、そうだ、まゆ子さん!
慌ててまゆ子さんの家を探した。
この先ね。
その時だった。
住宅沿いの舗道の先に男の人が現れた。
煙草を吸っている。
こいつ! 間違いない。あの男の子に煙草の火をぶつけた奴だ!
こんな近所に住んでたのか。許せない。
何か言わないと気がすまない。
私は自転車を押して、そいつに向かって走り出した。
「え!?」
ギクッとした。黒い着物の少女。見た目は五歳くらいの可愛い子。
あのサヨカ会との戦いの時に見た凄い霊圧の少女が現れたのだ。
少女は一瞬私の方を見て、ニッとした。
あまりの恐怖に、私は漏らしそうになって立ち止まってしまった。
そいつはもちろん、少女の存在には気づいていない。
私は歩き去るそいつを追うのをやめた。
もうあの煙草男は死んでしまう。
その現場は見たくない。
以前見た事があると言っていた小松崎瑠希弥さんの話だと、壮絶な死に方をする場合もあるらしいから。
私はもう一度まゆ子さんの家を探し始めた。
まゆ子さんの実家で何があったのかは、また次回ね。
今回は、悲しくて怖い話だと思うまどかだった。
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