山門の戦いなのよ!
私は箕輪まどか。中二の霊能美少女。
私達は、カルト教団「サヨカ会」の残党が巣食う新潟県村上市の廃寺にやって来た。
山門まで辿り着いた時、敵のトップである鴻池仙一が現れた。
しかも、驚いた事に、かつての私の彼である牧野徹君と共に。
「アホか、おのれは? そないなガキ一人人質にして、ウチらがほー、さいでっか、てなる思うたら、大間違いやで!」
西園寺蘭子さんの親友の八木麗華さんは、牧野君の事など全然気にしていないらしい。
「ほお。そうですか。ならば容赦なく攻撃を仕掛けて下さい。私は全くの無防備ですから、すぐに仕留められますよ」
仙一は小憎らしい笑みを浮かべ、麗華さんを挑発した。
「何やと、こらあ!」
麗華さんは本当に攻撃しそうな勢いだ。
「やめてええ! お願いだから!」
綾小路さやかが、麗華さんにすがりついた。
こんなに動揺して泣くさやかは見た事がない。
写メに撮っておきたいくらいだ。
「まどか、あんたねえ!」
泣きながらも、私の心の声を聞き逃さないのはさすがだ。
「牧野君は、私の全てなの! お願いだから、止めて!」
さやかは本当に必死になって麗華さんに訴えている。
「く……」
麗華さんも、さやかの訴えに折れ、遂に印を解いた。
「ほっほっほ、そうですか。攻撃しないのですか。ならば、私から行きますよ」
仙一がニヤリとして私達を見渡す。
来るのか、あれが?
「食らいなさい、愚かな方々!」
仙一は「
「ううう!」
私達は、なす術なく動けなくなる。
感応力の強い小松崎瑠希弥さんが、一番強く反応している。
その悶え方は、女の私もドキドキしてしまいそうだが、今はそんな余裕はない。
「瑠希弥!」
蘭子お姉さんと麗華さんは必死に鈴の音に抵抗しているようだが、そこまでが限界みたいだ。
瑠希弥さんのところまで行く事はできない。
「ぬう……」
私の彼氏の江原耕司君も、彼のお父さんの雅功さんも動けない。
そして、小倉冬子さんの幼馴染みの濱口わたるさんも同じだ。
「はっはっは! どうです。参りましたか?」
仙一がドヤ顔で言う。悔しいが、どうする事もできない。
「俺には効かないぜ!」
そこへ、救いの神である私の親友の近藤明菜の彼氏である美輪幸治君が見参。
「そんなもの、この美輪幸治様には通じねえよ!」
美輪君は仙一の手下ABCをたちどころに倒し、仙一に掴みかかる。
「このオヤジがあ!」
美輪君は仙一の持っていた鈴を叩き落とし、撥を奪い取った。
やった! 作戦成功だ!
「ふふふ、はははは!」
ところが、仙一が高笑いを始めた。
「引っかかりましたね。その撥は、私以外の者が持つと、大変な事が起こるのですよ」
え? 何? 鈴の恐怖から解放されたのも束の間、次なる罠が待っていたのだ。
「うわあああ!」
撥を持った美輪君が苦しみ出す。どうしたの?
「しまった!」
雅功さんが焦りの色を見せたので、思わずギョッとした。
「くそ、悪霊を仕込んどったんか?」
麗華さんが悔しそうに呟く。
「フフフ、これでこの忌ま忌ましい存在だった坊やも、私の下僕です」
仙一が言った。美輪君はその仙一に対して、跪いた。
「何してるのよ、美輪君!」
明菜が自分の彼の変貌に驚愕して叫ぶ。
「なら、悪霊を吹き飛ばしたる!」
麗華さんが印を結ぶ。すると仙一が、
「おっと。そんな事はさせませんよ。もしあなた方の誰かが真言を使ったら、この二人の坊やの命はありませんので、悪しからず」
麗華さんは歯軋りして仙一を睨んだ。私も悔しくて仕方がない。
どうすればいいんだ?
「さあ、狂ってしまいなさい、邪魔な方々よ!」
仙一が、操られた美輪君から撥を受け取り、再び鈴を打ち鳴らした。
「くうう!」
私達はまた、動きを封じられた。
鈴に対して耐性のある美輪君は仙一の手の内。
絶体絶命だ。
「さあ!」
更に打ち鳴らされる鈴。もうどうかしてしまいそうだ。
その時だった。
「美輪君、何してんのよ!? 貴方はそんなに弱い人だったの!?」
明菜が泣きながら怒鳴り始めた。
「そんな弱い美輪君なんて大嫌いよ!」
明菜は絶叫した。
「うおおお!」
美輪君がその明菜の魂の叫びに呼応したかのように雄叫びをあげた。
「俺は弱くねえ! 俺は強いぜ、アッキーナアッ!」
美輪君に取り憑いていた悪霊が美輪君を離れた。
「何だと!?」
仙一はこれには面食らったようだ。
「おらあ!」
美輪君の回し蹴りが仙一の鈴と撥を跳ね飛ばした。
「来い!」
美輪君は牧野君の手を取り、仙一から離れた。
「おお!」
私と江原ッチは思わずハモりで感動した。
「オンマリシエイソワカ」
すかさず蘭子お姉さんが摩利支天の真言で悪霊を除霊した。
「おのれ!」
仙一は手下ABCを引き連れ、山門の奥へと逃げ、階段を駆け上がる。
「逃がさへんで、ボケ!」
麗華さんが真っ先に追いかける。それに続く蘭子お姉さん、瑠希弥さん、わたるさん。
「美輪君、アッキーナとさやかと牧野君をお願いね!」
「おお、任せとけ、まどかちゃん!」
美輪君はVサインを出して応じてくれた。
私と江原ッチは頷き合い、雅功さんと共に蘭子お姉さん達を追いかける。
いよいよ最終決戦が近い。
そして、またしても、最終回の予感に怯えるまどかだった。
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