遂に大詰めなのよ!
私は箕輪まどか。只今壮絶戦闘中だ。
サヨカ会というふざけた名前の団体の本部で、私達は戦っている。
「こっち」
小倉冬子さんが先頭で走る。冬子さんてこんなに敏捷だったのね。
私達は次第に暗くなる廊下をひたすら走った。
何故か信者達も陰陽師達も襲って来ないのが不気味だ。
「蘭子が頑張っとるんやな。みんなそっちの援護に行ったんやろ」
関西のオバさん、いや、八木麗華さんが言う。
「いくら西園寺さんが強くても、今のままでは消耗戦です。早く術具を見つけないと」
雅功さんが言う。菜摘さんが頷き、
「西園寺さんの霊威が衰えて来ています」
「先生」
小松崎瑠希弥さんが悲しそうに呟くのを、私の絶対彼氏の江原ッチが心配そうに見ている。
嫉妬はしないと決めているが、何となく不愉快なのはどうしようもない。
「もうすぐよ。その先」
冬子さんが言った。私達は廊下の角を曲がった。
その先には、巨大な鉄の扉があった。
「この中に大仙の術具があるわ。しかも、大仙の本体もここにいる!」
冬子さんの言葉は、私達に衝撃を与えた。
「じゃあ、先生が戦っているのは?」
瑠希弥さんが蒼ざめた。
「大仙の影。陰陽道で作り出した分身よ」
冬子さんは鉄の扉を射るように睨む。
「それやったらなんぼ攻撃しても埒が開かん。蘭子を疲れさせるのが目的なんか、あのおっさんは?」
麗華さんが苦々しそうな顔で言った。
「ほおお!」
いきなり瑠希弥さんの気が変わった。
「先生は私が助けます!」
瑠希弥さんの身体から凄まじいオーラが出た。
「バッチャ、いいよね、使って」
瑠希弥さんはそう呟くと、
「オンマケイシバラヤソワカ!」
と真言を唱えた。私は聞いた事がないのでキョトンとした。
「瑠希弥、無茶や!」
麗華さんが焦っている。
何?
「きゃああ!」
瑠希弥さんが吹き飛んだ。彼女の服はボロボロだ。
何が起こったの?
「瑠希弥!」
麗華さんが駆け寄り、下着姿の瑠希弥さんを男の人から隠す。
雅功さんはすぐに顔を背けたが、江原ッチは凝視していた。
「こら!」
私が怒ると、
「ご、ごめん!」
江原ッチは慌てて背を向ける。
「扉は吹き飛んだわ。ありがとう、瑠希弥さん」
冬子さんが言い、中へ入った。それに雅功さんが続く。そして私と江原ッチも。
菜摘さんが替えの服を瑠希弥さんに渡したようだ。
「先に行っていて。すぐに行くから」
菜摘さんの言葉に雅功さんは手を上げて応じた。
中は薄暗く、蝋燭の明かりがあるだけだ。
その部屋の中央に祭壇があり、注連縄のようなものに囲まれて立つおっさんがいた。
「鴻池大仙か?」
雅功さんが尋ねた。するとそのおっさんはニヤリとして、
「いかにも。ようこそ、我が館へ。そして次は地獄だ」
と言った。途端にたくさんの死霊が集まり出した。
「どうやら、私の影が西園寺蘭子にやられたらしいのでね。急がないといけないのだ」
大仙はその手に奇妙な形の
「あれが術具か?」
江原ッチが囁く。
「そうみたいね」
私は彼を見ないで応じた。
「私の魂を返してもらうわ、大仙」
冬子さんが進み出て言った。大仙は冬子さんを見て、
「その必要はあるまい。お前らは全員ここで死ぬのだからな」
死霊の数はまるでねずみ算式のように増えていた。
まどか危機一髪だ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます