みんなで遊園地に行ったのよ!
私は箕輪まどか。美少女霊能者だ。中学一年生の、ピッチピチよ。
変態キャラか!
どうも作者に自己紹介で遊ばれている気がする。
呪ってやりたいのだが、噂だとあの冬子さんより強いらしいからやめておこう。
さて、一学期ももうすぐ終わり。
嫌な事が多い毎日だったが、それでも終盤に江原耕司君というイケメンの彼ができて、帳尻は合ってると思う。
「期末テストも終わったし、どこかに遊びに行こうか?」
親友の近藤明菜が提案した。
「おう、行こう、行こう。どこにする?」
何故か肉屋の力丸卓司君が話に割り込んで来た。
彼は、遂に江原ッチの妹さんである靖子さんと付き合う事になったらしい。
「小学生と付き合えるなんて、羨ましいなあ、おい」
と言ったのは、エロ兄貴の同僚で、G県警鑑識課の最古参、宮川さんだ。
あの人、最近、発言が危な過ぎる。
なるべく近づかないようにしよう。
「靖子ちゃんは、遊園地がいいって言ってたぞ」
リッキーはもうヘラヘラしながら言う。
「あんた、関係ないでしょ?」
明菜はムッとしていた。彼女はリッキーがあまり好きではないらしい。
「暑い時にあんたと行動すると、余計暑くなるわ」
「ひでえなあ、アッキーナ。そんな事言わないで、参加させてよ。靖子ちゃんも、お兄ちゃんと一緒がいいって言ってるんだよ」
リッキーのその一言で、私は彼の味方になった。
靖子ちゃんは、私が嫉妬してしまうほどの美少女で、しかも江原ッチととても仲良しなのだ。
江原ッチも靖子ちゃんの事を凄く可愛がっているので、私はリッキーに賛成だ。
ウチのエロ兄貴とは大違い。
「アッキーナ、そんなつれない事言わないでよ。ねえ?」
何故か明菜に対してお色気作戦だ。そこ! 表現が古いとか言わないの!
「仕方ないわね」
明菜は不満そうだが、彼女の彼である美輪幸治君も靖子ちゃんを凄く可愛がっているので、諦めたようだ。
もしかして、明菜の奴、靖子ちゃんに嫉妬してる?
こうして、私達は「遊園地に遊びに行く」で一致した。
近いのはT市にある「妖精の国」なのだが、今は改装中で無理だ。
仕方がないので、ちょっと遠いのだが、S市の「空の国公園」に行く事にした。
「楽しみだね。まどかりん、お化け屋敷に入るから、思い切り怖がってね」
江原ッチから、そんなメールが来た。
おお! チャンス到来! 思い切り怖がって、抱きついてあげよう。
ムフ。
いけないまどかだった。
そして当日。
私達はバスを乗り継ぎ、空の国公園に到着した。
「楽しみだね、リッキー」
靖子ちゃんがリッキーにしっかりとしがみつき、言った。
「楽しみだよ、靖子ちゃん」
リッキーは鼻の下が顎の下になりそうなくらい伸びている。
クールな明菜はベタベタしてはいないが、いつもよりテンションが高そうだ。
「美輪君、私、怖いの苦手なの。お化け屋敷とか、ジェットコースターとか」
「ああ、そうなんだ。俺も苦手」
美輪君は優しい。江原ッチの話では、ジェットコースターマニアだそうだ。
「それじゃあ、俺達は観覧車に乗るよ」
美輪・近藤コンビは、そう言うとサッサと歩き出す。
「ええ? 観覧車って、締めで乗るものじゃないの?」
私が言うと、江原ッチが、
「そうだけど、みんな好き好きだしね」
「そだね」
江原ッチには「イエス女」のまどかだ。
「じゃあ、私達はお化け屋敷という事で」
「わーい! お化け屋敷、大好き!」
靖子ちゃんが嫌そうなオーラ全開のリッキーを引き摺るようにして連れて行く。
「俺達も行こうか、まどかりん」
「うん」
私達は手を繋ぎ、ニコニコしながら歩いた。
「うわあああああ!」
先に入ったリッキーの絶叫が聞こえる。ご愁傷様、リッキー。
霊能一家の女の子と付き合う厳しさを知ってね。
「いやああん、怖いィ!」
私はわざとらしく叫び、江原ッチに抱きつく。
江原ッチはヘラヘラしながら、
「大丈夫だよ、まどかりん」
と言ってくれた。臭いセリフだけど、キュンと来る。
「あ」
お互い、顔を見合わせる。
いる。
本物だ。まずい。しかもかなり強烈。
こういう場所には、どうしても集まりやすいのだが、これほど凄いのは珍しい。
「江原ッチ」
「まどかりん」
江原ッチはジーパンのポケットから数珠を取り出した。
私は印を結ぶ。
後から入って来たお客さんは、何かのアトラクションだと思ったみたいだ。
「ぐおおおお!」
悪霊が現れた。しかもこいつ、霊感がなくても見えるくらいだ。
「いやあああ!」
後ろの女性が失神した。
「ああ、しっかりして」
と言いながら、隣の男性は嬉しそうだ。介抱するフリをして、あちこち触っている。
全く、男って奴は!
などと思っている場合ではない。
「行くわよ、江原ッチ!」
「了解、まどかりん!」
江原ッチが数珠を振るう。私は、
「インダラヤソワカ!」
と帝釈天の真言を唱えた。
「がああああ!」
悪霊は私達の力で消滅した。
「おおおお!」
そこにいた他の人達が拍手した。完全にアトラクションだと思われたらしい。
「どうも」
いつまでも拍手に答えている江原ッチを引き摺り、私はお化け屋敷を出た。
「こんなところで除霊するなんて思わなかったよ」
江原ッチは数珠をしまいながら爽やかな笑顔で言う。ああん、カッコいい、江原ッチ!
「ホントね」
私も飛びっきりの笑顔で応じた。
「ねえ、何かあったの?」
すぐそばのベンチでリッキーを介抱していた靖子ちゃんが尋ねた。
私は事情を説明した。
「へェ、凄い、まどかお姉さん。さすが、お兄ちゃんの彼女だわ!」
「えへへ」
私は靖子ちゃんに絶賛されて照れた。しかも「まどかお姉さん」だなんて、余計恥ずかしい。
「何だ、リッキーは気絶してるの?」
明菜達がやって来た。
そして気がついたリッキーと共に、私達はランチにした。
遊園地の中央に、一面芝で覆われた広場があるので、そこに行く。
みんな、各々手作りのお弁当を持って来ている。
え? お前に料理ができるのかですって?
し、失礼な事言わないでよ!
私のお母さんは、料理学校の先生だったのよ!
今朝も素晴らしいお弁当を作ってくれたんだから……。
それ以上、突っ込まないで。武士の情けよ。
みんなで楽しく食事をしていると、遊園地のスタッフの人達がやって来た。
あれ? ここってもしかして、あのネズミの国と一緒で、食べ物持ち込み禁止だっけ?
「あの、先ほどお化け屋敷で除霊をして下さった方ですよね?」
「は?」
良かった、お弁当の事じゃなくて。
「実は、当園のお化け屋敷は毎年本物が来てしまって、いつもある霊能者の方にお祓いして頂いていたのですが」
「そうなんですか」
わわ! 江原ッチがNGワードを言ってしまった。
「それで、今回はあなた方がお祓いして下さったので、おいくらお支払すればよろしいかと思いまして」
どうやら、その人はこの遊園地の支配人のようだ。
「俺らは、仕事でお祓いしてる訳じゃないですから。お金なんて要らないですよ」
江原ッチがクールに決めてくれた。ああん、惚れ直してしまう!
「ええ、本当ですか?」
支配人さんが随分驚いたので、私は、
「その霊能者さんには、一体いくらお支払していたんですか?」
と訊いてみた。そして、その金額を聞き、今度は私達が、
「ええええ!?」
と叫んでしまった。
もうその人が誰なのか、確認するまでもない。
あの人だ。えーと、名前忘れちゃった。
関西の露出狂のオバさん。
「あ」
私は支配人さん達が何度もお礼を言って立ち去ってから、ある事に気づいた。
「どうしたの、まどかりん?」
江原ッチが尋ねる。私は江原ッチに小声で、
「その霊能者さんの仕事取っちゃったかも」
「ああ、そうだね」
江原ッチは気づいていない。
オバさんが怒って私達に襲いかかって来るかも知れないのだ。
でもその時は、蘭子お姉さんに助けてもらおう。
計算高いまどかだった。
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