再びあの人が登場したのよ!
私は箕輪まどか。超絶美少女にして、優れた霊能者だ。
どうも最近、自己紹介の内容があまりにも自信満々な感じで、ちょっとだけ気にかかる。
このところ、あの尊敬している西園寺蘭子お姉様から連絡がない。
「今度中学生になりました」
とメールをしたのに、返事がない。
もしかして、進学祝を請求したと思われたのだろうか?
関西のオバさんと一緒にしないで欲しいけど。
ちょっぴり寂しいまどかである。
そして、連休の初日に蘭子お姉さんから電話があった。
それも何故か家電にである。
「どうしたんですか、お姉さん?」
私はとても不思議に思って尋ねた。
「携帯が壊れて、データが全部消えてしまったの。ごめんなさいね、メールいただいたみたいで」
「そうだったんんですか。良かった、嫌われたのかと思ってました」
私は冗談ではなく、本当にそう思いかけていたのだ。
最近、マイナス思考なのだ。
「まさか。まどかちゃんは大事な親友よ。あ、もう中学生だから、まどかさんの方がいいかしら?」
嬉しい。涙が出そうだ。ただ、「もう中学生」という言葉にはギクッとした。
私は芸人ではないのに。
「まどかちゃんでお願いします。まだまだ子供ですから」
私がおどけて言ったので、蘭子お姉さんはクスクス笑っているようだ。
「そう? 十分大人だと思うわよ」
「ありがとうございます」
で、どうして電話をかけて来たのかな?
「そうそう。用件を忘れてしまうところだったわ」
蘭子お姉さんてば、お茶目さんね。
「麗華がそちらに出向いたの」
「え?」
誰、麗華って? ああ、関西のオバさんか。そんな名前だった気がする。
「あの子ね、東京で知らない女性とデートしている慶一郎さんを見かけて、逆上していたわ」
「ええ?」
慶一郎とは私の兄貴だ。東京でデートって、誰と?
「だから、慶一郎さんに避難するように伝えてほしいの」
遅かったかも知れない。
記憶が定かではないのだが、兄貴は朝早く出かけた。
思えば顔色が悪かったような気がする。
「手遅れです。もう拉致されていますよ、兄は」
私は残念でならないという感じで、蘭子お姉さんに答えた。
「もう? さすがに早いわね、麗華は」
「ええ」
私は兄貴の消息を知るため、携帯にかける事にし、蘭子お姉さんとの通話を終えた。
お姉さんも心配なのでG県に来るそうだ。
でも、兄貴のデート相手って、誰?
あのオバさんが知らないのだから、同僚の里見まゆ子さんではないし。
むむむ? 一体誰だろう? また新しい彼女?
「あ!」
その時、兄貴から着信あり。
「どこにいるの、お兄ちゃん?」
私はすぐに携帯に出て尋ねた。
「まどかー、助けてくれー! 麗華さんがピンチなんだよお」
「ええ? どういう事、お兄ちゃん?」
ブツッと通話が切れ、かけ直しても繋がらない。電源を切られたようだ。
オバさんがピンチって、どういう事?
何が起こっているのよ?
とにかく、兄貴の居場所を探らないと。
私は気を集中し、兄貴の気を探った。
あれ? 意外に近いぞ。
私は現場へと走った。
うん? このダークな気は、覚えがあるぞ。もしかして……。
私が到着したのは、家の近くにあるショッピングモール。
兄貴達は、その屋外駐車場の端にいた。
「お兄ちゃん!」
私は大声で呼びかけた。
「まどかあ!」
兄貴は情けない声で応じた。
そこには、兄貴の他に関西のオバさんとあの小倉冬子さんがいた。
見た目はあの「テレビから這い出て来る人」にそっくりだ。
オバさんは冬子さんの呪い攻撃で倒れていた。
オバさんの周囲には、黒い妖気が漂っている。
冬子さんは兄貴の携帯をベキッとへし折り、投げ捨てた。
それにしても、冬子さんて、もの凄く強いのね。
「慶君、こんな下品な女と付き合ってはダメよ」
「は、はい」
すでに兄貴は恐怖のあまり冬子さんの言いなりになっていた。
「まだ懲りてないの、あんたは!?」
私は冬子さんの前に立ち、怒鳴った。冬子さんは、長い髪の間から私を見る。
怖い。怖過ぎるよお。
「あら、まどかちゃん。今度中学生になったんですってね。私も何かお祝いあげなくちゃね」
「は、はい」
そうか、私は兄貴の身内だから、敵意はないのか。
でもこのままじゃ、「まゆ子さんお姉さん化計画」が遂行できないわ。
「冬子さん、お兄ちゃんは貴女の事好きじゃないのよ。つきまとうのはやめて」
しかし、冬子さんには通じていない。
「まあ、まどかちゃんたら、私にお兄さんを取られて、ヤキモチ妬いてるのね」
スーパーが付くようなプラス思考だ。
どうしたらわかってくれるのだろう?
兄貴が言えれば一番いいのだが、今はそんな状態ではない。
生まれたてのチワワ並みに震えている。
よし、もう最後の手段だ。
「冬子さん、お兄ちゃんは、好きな人が東京にいるの。その人の名前は西園寺蘭子さんよ」
「さいおんじ、らんこ?」
冬子さんは首を傾げて、そう呟いた。
ごめんなさい、蘭子お姉さん。冬子さんに勝てるのは、お姉さんしかいないわ。
後の事、よろしくお願いします!
私は無責任にも小○政権のように丸投げしてしまった。
「ひいいいい! さいおんじ、らんこ? さいおんじ、らんこ!」
何故か冬子さんはそう叫び、その場から駆け去ってしまった。
何だ? わけがわからない。
それからしばらくして、蘭子お姉さんがやって来た。
お姉さんは関西のオバさんを復活させ、リベンジを叫ぶオバさんを宥めて車に乗せた。
そして、私が事件の全貌を説明した。
「小倉冬子さんか……。何か聞き覚えがあるような気が……」
しばらく蘭子お姉さんは考え込んだ。
「ああ、思い出した。小学校の同級生にいたわ、同じ名前の子が」
「お姉さんて、G県出身なんですか?」
「違うわ。冬子さんが東京にいたのよ。それで、お父さんの仕事の都合で三年生の時に転校したのよ」
「そうなんですか」
「よく遊んだから、覚えているわ。そうか、あの子だったのか」
私は懐かしそうに笑う蘭子お姉さんを見て、ふと思った。
あれほど強力な力を持ち、関西のオバさんすら倒した冬子さんが、蘭子お姉さんの名を聞いただけで逃げてしまった。
当時、一体何があったのよ? その方が気になった。
追伸
以前冬子さんが登場した時に「ボーッとした東京女」と言っていたのは、蘭子お姉さんではないらしい事をここで言い添えておきます。
まどか
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます