美少女霊能者箕輪まどかの霊感推理

神村律子

小学生編なのよ!

美少女霊能者登場!

 私は小学六年生。名前は箕輪まどか。


 近所でも可愛いと評判だが、男子にはあまり人気なし。


 何故なら、私は幽霊が見えちゃう美少女だからだ。


 自分で「美少女」とか言うと嘘臭いけど、本当なんだから仕方がない。


 疑う人には写真を送りたいくらいだ。




 今日も登校途中に若い女性の浮遊霊に声をかけられた。


 霊感がない人には私の悩みは理解してもらえないと思う。


 霊には、「見えちゃう人」が確実にわかるのだ。


 だからいくら見えないふりをしても、


「てめえ、何無視してんだよ!?」


と毒づかれる。


 無視したからと言って、私には咎められる謂れはないのにね。


「鬱陶しいから、向こうに行って」


 私は立ち止まってその浮遊霊に言った。すると彼女は悲しそうな顔をして消えた。


 私はホッとしてまた歩き出した。


 ところが、「お楽しみ」はこれからだったのだ。




 教室に着くと、私はギョッとした。


 さっきの浮遊霊がいるのだ。


 しかも、私が密かに思いを寄せている男子、牧野君のそばに。


 え? 普通美少女は思いを寄せられる設定が多い?


 別にいいでしょ、私が思いを寄せても!


 私はツカツカと浮遊霊に近づき、


「あんた、何でこんなところにいるのよ? 出て行きなさいよ」


 私の突然の大声に、牧野君がビビッたのは言うまでもない。


「な、何、箕輪さん? 僕が何かした?」


 牧野君は震えながら尋ねて来た。私はサッと笑顔になり、


「ああ、違うのよ、牧野君。貴方に言ったんじゃないの。ここにいる霊に言ったのよ」


 その瞬間、クラスのみんなが教室を逃げ出してしまった。


 私はその素早さに声も出なかった。


 


 そして。


「ねえ、あんた、どうして私につきまとうのよ?」


 私は誰もいなくなった教室で、霊とサシで話した。


「貴女に私が見えるから」


「でも私はあんたの力にはなれないよ」


「いえ、なれるわ」


「どうしてそう言い切れるの?」


 浮遊霊の妙な自信に私は疑問を持った。


「それは……」


 その時、先生がクラスのみんなを引き連れて教室に入って来た。


 そのため、浮遊霊は窓から出て行ってしまった。




 私はこってり先生に叱られた。


 妙な事を言ってみんなを怖がらせるなと。


 いやいや、私が怖がらせたんじゃなくて、みんなが勝手に怖がっただけだから。


 そう言いたいのは山々だったが、これ以上何か言われるのは嫌なので、やめておいた。




 結局浮遊霊はその日は現れず、次の日も、その次の日も現れなかった。


 どうしたのだろう?


 諦めて違うところに行ったのならいいのだが。


 そんな心配をしている自分に驚いた。



 そしてさらに次の日。


 また登校途中に彼女が現れた。


「何よ。また来たの? 私には何もできないよ」


「できるわ。一緒に来て」


「嫌よ」


「なら、牧野君に一緒に行ってもらうわ」


「何ですって?」


 こいつ、意外に狡賢いのかも。


「わかったわよ。でも、時間あまりないからね」


「ええ」




 私は通学路から少し外れた空き地に来ていた。


「あの空き地の隅のドラム缶の中に私はいるわ。警察に知らせて。犯人は私の元彼よ」


「ええ!?」


 私は霊は怖くないが、死体は怖い。


「わかった。すぐにお兄ちゃんに連絡するわ」


 私のお兄ちゃんは県警の鑑識課に勤務している。


「だからなの? だから私に頼ったの?」


 私は疑問が氷解した気がして、彼女に尋ねた。


「違うわ」


「え?」


 彼女はとても嬉しそうに私を見た。


「貴女は、口は悪いけど、本当は優しい子だって思ったからよ」


「……」


 私は照れ臭くなって俯いた。




 私の霊感を知っているお兄ちゃんは、すぐに現場に来た。


 そして彼女の言った通り、遺体が発見され、犯人の元彼もすぐに確保された。



 その日、私は牧野君と一緒に下校していた。


 殺人事件を解決した私をみんなが褒めてくれ、先日の事を詫びてくれた。


 私は牧野君にコクられ、付き合うことになった。


 これも彼女のおかげなのかな?


「あ」


 私は彼女が道の向こうに立っているのに気づいた。


「ちょっと待っててね」


「え?」


 キョトンとする牧野君を尻目に、私は彼女に近づいた。


「ありがとう、まどかちゃん。貴女の事は忘れないわ」


「わたしこそ、お礼を言わなくちゃ。貴女のおかげでいろいろいい事あったし」


 私はチラリと牧野君の方を見た。彼女は微笑んで、


「じゃ、私、行かなくちゃ」


「え?」


 私はその言葉に言い知れない寂しさを感じた。


「もう、会えないの?」


「何十年後かにまた会えるわよ」


 彼女は屈託のない笑顔で言った。


「そうね。でもその時は私、おばあちゃんだ」


 私は涙を拭いながら言った。


 彼女は、


「本当にありがとう」


と言い、光に包まれて天に昇って行った。


「さようなら」


 私はいつまでも手を振り続けた。牧野君の存在を忘れたまま。

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