おかやん

第1話

病院の診察室で、若い男と老婆が先生の話を聞いていた。

「この状態まで来てしまうと、手術をするしかないですね。」

先生が言い切るのを待たずに若者は言う。

「費用はいくらですか。」

「６0万ほどですね」

それを聞いた若者の顔は、青ざめていた。

「目の手術になると、それくらいが一般的です。決断は、なるべく早くお願いしますよ。」

日が沈みかけている。建物はオレンジ色に染まった。二人はゆっくりと歩いている。

「母ちゃん、どうするよ。」

老婆の手をひき、若者はいう。

「私は、目みえなくても大丈夫だよ。そんなに長生きしないから」

「そういったって、、」

老婆は立ち止まっていう。

「私のことはいいの」

街灯がつきはじめた。二人はふたたび歩き出す。