第74話
翌日の昼休み、歩人は学校の図書館でスカイツリーや東京タワーの事を調べるべく、それらしい書籍を探して読んでいた。
「何やってるんだ?」
「ああ、伸太」
「なんか、兼久は兼久で最近、あの女子といる事が多いから、歩人がいないと俺の居場所がなくなってしまうじゃないかよ」
その言葉に歩人が苦笑いしていると、伸太は歩人が読んでいる本に目をやる。
「スカイツリーね、昨夜の事が気になるのか?」
そう言うと、伸太は歩人の隣に座る。
「まあ、そんな所」
「ネットだと東京を守る結界が関係してるとか、宇宙からの電波を受信したとか、色んな事言ってるけど、普通に考えれば、あの状況はどこかの放送局が、なにかを受信して、そのまま信号を送信施設であるツリーやタワーに送ったとか」
伸太はそこで難しい顔で何やら考え込む。
「でも、あの時間テレビ放送に何か支障が出たとかないらしいから、単純にツリーやタワーに何かが反応したんかな」
「スカイツリーとかが、何かを受信した可能性は無いの?」
「スカイツリーにしても東京タワーにしても送信施設だからな」
「そっか、受信は出来ないんだ」
「単純に受信する機能が無いだけで、アンテナである以上、条件が合えば受信出来るかもしれんけど」
「どういう事」
「まあ、俺も詳しい事は分からないけど、親戚の叔父さんが無線とかラジオ好きでさ、何かラジオの部品からでも、トランシーバー作れるとか言っていた気もするし」
伸太はそう言いながら、突然苦笑いを浮かべる。
「まあ、物によっては免許が必要になるとか言ってたけどな」
「そう言えば、中学生の時に伸太はラジオを夏休みの自由研究で作ってきたよね」
「ああ、鉱石ラジオだろ、あれも叔父さんから勧められてな」
「鉱石?」
「ああ、鉱石を使って、送られて来た電波から音声を取り出すとか言っていたな」
歩人は急に立ち上がると、今度はラジオに関する資料を探し始める。歩人の様子に伸太は驚くが、すぐに歩人を手伝うべく席を立った。
午後の授業中も、歩人はしきりにノートに文字を書き込んでいたが、それは授業の内容ではなかった。
魔力と電波が同じ様なものと仮定し、更にこちらのスカイツリーなどの電波塔と向こうの世界の鉱石が何らかの形で連動している装置と仮定する。
それを元にレスティナ達から聞いたこちらの世界に来るまでの経緯を思い出し、思い浮かんだ事をノートに記した。
湖で魔術を発動→鉱石が魔力に反応→鉱石から信号がこちらの世界の電波塔に送られる→電波塔が送信→こちらの世界に水を介して出力
そして、スカイツリーに向こうの世界の景色を浮かんだという事は、向こうの世界にある鉱石は、アンテナを介して反応している可能性があり、同じ現象を引き起こせるのではと考えた。
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