雨に唄えば


雨に唄えば(1952)アメリカ

d.ジーン・ケリー/スタンリー・ドーネン

t.原作.アドルフ・グリーン/ベティ・カムデン

c.恋愛/ミュージカル


ドン(ジーン・ケリー)

キャシー(デビー・レイノルズ)

コズモ(ドナルド・オコナー)

リナ(ジーン・ヘイゲン)


………サイレント(無声)映画の大スター・ドンとリナ。タッグを組んで主演を張る機会の多い二人は恋愛関係だと報じられているが、実際はリナの身勝手な片想い。ドンは駆け出し女優のキャシーと恋におち、恋人同士になる。

ドンとリナが主演の映画の撮影中、世界初のトーキー(有声)映画の大ヒットがきっかけで時代はサイレント映画からトーキー映画へ移り変わる。製作中の映画を音声付きで撮り直し試写会を行うも、リナの甲高い悪声と拙い音声技術では製作会社と共に自らの俳優人生も破滅してしまうと危機感を持ったドン。そこで彼らはある手段を思いつく………。



シンプルなカメラワークだけど目が怠くならなかった。これは役者の力。役者に莫大な熱量が無いと成立しないこと。役者の身体性が振り切ってて終始圧倒された。素晴らしいよ………。


私も少しだけ踊りを習っていたんだけど、これには到底及ばないので観ていてワクワクした。あんな風に踊れたらどれだけ気持ちいいだろう。いつかはあんな風に踊れるようになりたい。


余談、「時計仕掛けのオレンジ」に雨に唄えばの楽曲を主人公が歌うシーンがある。両方観た方の感想を聞くと「雨に唄えばが好きだからなんだか汚された気分」というものが多い。

私がオレンジを観たときは未見だったのでその気持ちがわからなかったんだけど、今ならわかる。わかるよ。わかっちゃうよお……。



以下、個人的にお気に入りのシーン(ネタバレ有り。)




・ドンの親友・コズモの撮影所でのソロ。肉体性が凄すぎる……。圧巻のパフォーマンス。口が半開きになる。踊りの中に日本人には無い独特のユーモアセンスが光っていた。


・ボイストレーニング中のドンをコズモが訪ねてから始まるトレーナーを巻き込んだナンバー。面白い、面白いよう。一流が二人並んで歌ってる。踊ってる。重力が行方不明。


・キャシーがリナの吹き替えをすればいいんじゃねーの!?と思いつく前の三人のナンバー。

カウンターで三人並ぶバーレッスン風の振付が可愛かった! 歌・踊りの追加に向けての準備をしてる感じがこの振付にギュッと詰められてるんだ、と解釈した。

役者の高次元なタップダンス、三人並んでバチッと揃えられてる振りにシビれる。楽勝のスマイルがカッコイイ。

黄色いカッパで袖の動きを合わせるところも可愛くてキュンとした。からのソファを踏んで倒してエンド! 最高!


・有名な、ドンが雨の中で歌って踊るシーン。

両手広げてスマイル、傘をクルリンパ、雨の中をタップ、水たまりの中をジャブジャブ、近寄る警官にヒュッ………。笑った。


・ラストシーンも爽快だった。苦悩して戦い抜いた者は報われるべきだよね。

リナはキャシーが気に入らないから、彼女を表に出さずに今後も自分の吹き替えとして飼い殺そうとする。

それなのに地声でカーテンコールの挨拶をしちゃうあたり、リナは本当は愛すべきお馬鹿さんなのかもしれない。

観客に歌を求められて戸惑ったリナは幕の後ろにキャシーを隠して歌わせるというドンの提案に乗る。キャシーは理不尽に従えというドンに失望して別れを告げ、幕の後ろで歌い始める。


しかし、パフォーマンスの途中でドンとコズモと社長が幕を開けて何も知らない観客達にネタばらし!!! 全ての人物のリナに対して積み上げられたフラストレーションが爆散する瞬間である。


観客(ワイ)は観ている間にキャシーのことを愛してしまっているから、涙を流しながら立ち去ろうとしたキャシーが振り返り、脚光を浴び、ステージのドンを見つめたところがカタルシスの絶頂になった。よくやった!!!


リナは大スターだけど見た目がイイだけの典型的な天狗の勘違い女で早かれ遅かれ世から消えていくタイプの人間だったから、少しずつでも確実に自分の力でチャンスを掴んでいくキャシーがより素敵に映った。がんばる人がイイよね。ワイもそうする。とても面白かったです。


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