第558話 ユキシロVSヒールNPC

―――――――――――――――――氷塊ピラミッド



 布の切れ端の落ちていた道を歩いて進むムクロたちは罠とモブが隠れていないかと先ほどよりも慎重に道を歩んでいると・・・先の方から何かの音が聞こえ。

ムクロたちは音の聞こえる方を目指して歩いて行くと、そこは永久凍土らしくない土や滝に木々の生えたジャングルのような場所があり。

その滝では先ほど戦ったヒールNPCが水浴びをしていた。



「ん?アレはさっきまで俺が戦っていたヒールNPCじゃないか??

それにこの環境はどういう・・・・んぶ!?」

「はぁ~いムクロッちぃ~ここは見ちゃいけないシーンだよぉ。

にしてもあんな武器を置いたまま無防備な格好で滝を浴びてるなんてどうかしてると思わない??

さっきまでムクロッちと戦っていたにしては警戒していないって言うか・・・・」

「うむ、そう言われてみればそうだな。

アヤカはどう思う??あの耳を生やしたヒールNPCにスコープで何か探れないか??」

「探ったところでインナー姿のNPCの何を見つけろって・・・ちょっと待って。

あのNPCの腰にカギのようなモノがあるけど最上階フロアのロック解除用のキーじゃない??」

アヤカはヒールNPCの腰にぶら下がったカギの特徴をムクロに問うと、可能性はゼロではないと答え。

どうにかしてあのカギを入手する必要があると考え、やはりと言うべきかここは堂々と前に立って話し合うか力で奪うしかないと水浴びを楽しむヒールNPCの前に目をバンテージで縛ったムクロと共に現れると。

ヒールNPCはその姿を捉えた瞬間脳内が爆発しそうになる程恥ずかしく思ったのか泣き叫んで装備を抱え込んで木陰に隠れて着替えて再び現れていた。



「ど、どうしてこの水浴び場に来れたんだ!?

それに私の・・・その・・・どこまでを見ていたんだ!?

私の・・・いや、この聖域を守る戦士の水浴びを見てタダで帰れると思うなよ蛮人め!!!」

「いや、待つのじゃ・・・アタイたちは蛮人と言われても不思議とは思わぬが悪人ではないのじゃ。

その腰にぶら下げておるカギをくれさえすれば主には何の危害も加えないと約束するのじゃ。

じゃが・・・もしも抵抗し主殿に牙をむくようならばアタイが相手をいたすのじゃ!!!フッ決まった・・・・・」

「ん?今どういう状況になっているんだ??前が全然見えないんだが・・・・

戦闘開始か??それとも罠だったか??」

「ムクロはいいから今回は静かにしていていいわよ。

ユキシロがヒールNPCに交渉をしている途中だから。」

いまだにバンテージのとれない状態のムクロに対して何をしているのかとヒールNPCが問うとユキシロは目にゴミが入っただけだと言って気にしないでいいと返答すると本題に入り。

ヒールNPCは腰にぶら下げたカギを衣服の中にしまうと、剣を引き抜き・・・鍵が欲しければ力づくで奪えと言ってユキシロに攻撃を始め。

その一撃は先ほどよりも威力が高くなっておりユキシロの回避が間に合わなければ甚大なダメージが出ていたと予想されるほどであり。

ユキシロはその攻撃に迷いもなくただ真っすぐに攻撃を仕掛ける相手を敵だと認識し。

表情を変えて通常のモブとは違い敬意払って攻撃を仕掛けた。



「ぐぐぅぅ・・・この女狼じょろう・・・何と言う力をしているんだ。

ぎぐあぁ!?力負け!?この聖域の戦士が単純な力で負けるなどと・・・これは一体どうなっているんだ・・・・」

「アタイの攻撃はまだまだ終わってないのじゃ!!!

ちょいとこの岩を借りるのじゃ!!!ぬおぉぉぉぉ!!!おりゃッ!!!」

「うげげ・・・ユキシロってついにこういう戦法を編み出しちゃったんだね・・・

オブジェクト投げとか本当に蛮族って言われてもしょうがない技だよ。

だけど・・・ユキシロかレイくらいしかできないしまぁセーフの範囲内かな??」

「この様子だったらあと少しで詰みになるわね。」

エリエントの言葉を聞いたユリハ達はさらに注意してユキシロの方を見ていると、オブジェクトが体を押しつぶす前にNPCはオブジェクトを粉砕してユキシロを探すが姿を捉えることができずキョロキョロとしていると。

その背後からユキシロの渾身の一撃が叩き込まれ・・・ヒールNPCは赤色ゲージの瀕死状態になっていた。



「が、ガハッ・・・・もうムリ・・・・さぁ殺すなら殺せ。

そしてこの先に待つ・・・聖域に住まう真の神というものに出会うといい・・・そこで初めて自分の無力さと自分の戦う意味を知るがいい。」

「悪いがアタイは無力だとも感じておるし戦う意味も熟知しておるのじゃ。

アタイは主殿には届くことはできぬ存在なのじゃ。

じゃがアタイはその主殿に近づくために拳を己を鍛え主殿の役に立てることがアタイの戦う意味となっておるのじゃ。

じゃから主の言葉には・・・いや、ここに住まう神とは相容れぬかもしれぬな。

主殿ォ~戦闘終了なのじゃァ~~ほうれアタイの頭をもふるがいいのじゃ!!」

「あはは、よしよし・・・・でそこで伸びてるヒールNPCはどうした方がいいと思う??

――――――――――治療かそのまま置いておくかだが・・・・」

「そりゃもちろん話を聞くために前者じゃないかしら??

ここの事も知らなさすぎるし神という言葉に私は少し興味が湧いたわ。

だから助けて情報を聞くのに無駄な時間を使った何て言うこともないと思うわ。

―――――――ユリハ達はどう思う??」

「私もこのままボロボロにしたままこの場を離れるのはちょっと気が引けるから助けてあげたらいいんじゃないかな??

きっと・・・生きる道が違うだけでこのNPCにも強くて譲れない何かがあると思うから。」

ユリハ達の決定からヒールNPCの治療が始まり・・・回復スペルをかけてから傷を軟膏で癒し待っていると、通常のプレイヤーとは違って回復速度がけた外れに早く目を覚ました途端に剣を探し始め、フーフーと猫やケモノのような威嚇の方法で怒っていたのだが・・・・・



「クンクンクン・・・・何だこの匂いは!?」

「ぬぉ?主殿が焼いておるリザードマンの肉じゃが??

もしかして主は・・・ハラペコなのかのぉ???」

「よし、焼けた焼けた。

そこのヒールNPCは肉とか好きか??」

ヒールNPCはムクロの持って来た焼きたての肉を見ると先ほどまで鳴らずにしていた腹の音を盛大に鳴らし。

よだれを垂れ流しながらいらないと強がっていたが、ユキシロが運んできた肉の1つをモシャモシャと食べ始めると我慢しきれずにヒールNPCもさっと取って食べ始めていた。

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