第541話 石化の治療と過程の痛み

―――――――――――――――中級層:砂漠迷宮:ラビリンス



 ヴァニスを見つけた強化版ミノタウロスがユリハ達に気が付く前にムクロはヴァニスの前に立ちダガーで攻撃を入れるが・・・先ほどの話通りで攻撃に意味をなさず。

体に突き刺さることなく弾かれ、その攻撃に激怒したのかミノタウロスはムクロに目掛けて巨大な斧で攻撃を仕掛けていた。



「ブロロォォォォオォォォォォ!!!!!!」

「ヴァニス、立てるか??

俺がミノタウロスを惹き付けている間に移動する準備をしてくれ。

移動先はこのミノタウロスを掻い潜った先の通路を右に移動するルートだ。」

「でも・・・ユリハ達が違う方向に消えてるけどいいの??

こんな無茶をした私に構わずムクロもユリハ達と一緒に行った方がいいんじゃ・・・・あ・・・」

自分の勝手な行動でこうなってしまったことにウダウダ言っているヴァニスに何を言っても駄目そうだと感じたムクロはミノタウロスの攻撃を避けつつ煙玉を使用し、ヴァニスの手を握って駆け出し通路を曲がってそのまま木の方向を目指してミノタウロスに追いつかれないようグネグネと曲がりながら進んでいくと・・・・



「ごめんねムクロ。

私のミスで・・・こんなにも大きなトラブルになっちゃって。」

「トラブル何ていつもの事だから気にしなくていいさ。

こういうのもクエストの面白い所でもあるんだ・・・気楽に行こうぜ。

それにこの場には俺とヴァニスだけだからな・・・ヴァニスの腕に期待してるからな。」

ムクロはヴァニスにミスを気にしないように言ってこれからの戦いで力を貸してほしいと問うと。

ヴァニスは顔を叩いて気合を入れなおしいつものヴァニスに戻り再び歩みを開始した。



「それにしてもコカトリスはどの辺にいるのかしら??

ここまで移動して来たのはいいけれどゴブリンチーフ系にミミック・・・ゴーストとかアンデッド種って・・・お化け屋敷に来ちゃったのかしら??」

「あれはNPCキャラの慣れの果てっていう設定だな。

ここに迷い込んだNPCキャラがトラップやモブにやられるとモブに変化するシステムがここに存在してるからな。

っと、ヴァニス・・・念願のコカトリスがそこにいるぞ。

―――――――――――それも結構な数の群れだな。」

ムクロの察知スキルにモブ反応が出ると壁からそっと感じ取った方を覗くと。

そこにはコカトリスの群れが休んでおり、この機会を逃す手はないとヴァニスに問うと。

ヴァニスも自分の為にここまで来たのだからと武器を構えていつでも行ける合図を出すとムクロはコカトリスの一番大きなチーフを狙って一撃を叩き込み戦闘が開始された。



「グエェェェ!?!?」

「このコカトリスは尾の蛇に噛まれた場合でも石化する強化種だ。

尾と目からの石化攻撃に気を付けつつ攻撃をしてやれば大丈夫だ。」

「わかった!!!つまりここを狙えばいいんでしょ!!!

―――――――――――その尻尾はもらったぁぁあぁぁ!!!!」

ヴァニスは的確に尾の蛇を斬り落としてからコカトリスの胴体へダメージを入れて倒していると。

スキをついて来ていたコカトリスの気付かずに背後を取られ・・・石化攻撃を受ける瞬間―――――――――



「む、ムクロ!?わ・・・私を庇って・・・石化が・・・・」

「大丈夫だくらい。

コカトリスには悪いが・・・一気に決めさせてもらうぞ!!」

「―――――――――グエェエェェェェェェエェェ!!!!」

ムクロは左腕から徐々に石化が始まっていたがそのことに対して焦るそぶりも見せずに残っていたコカトリスを全てスキルで倒すとヴァニスに手を借りて移動し。

安全そうな迷宮の角で腰を下ろし至急に治療を開始した。



「ヴァニス・・・悪いがこっちの手じゃ無理そうだからさ。

ヴァニスがこれで俺の左腕にある石化の一番濃くなってるところにこれを注射してくれないか??」

「えぇ!?私が!?そんな重大な役目を私が・・・・でも、今は私しかいないんだもん・・・や、やるわ!!!

こ、ここに刺せばいいのよね??行くわよ・・・・エイッ!!!」

ヴァニスはムクロの言った手順通りに薬をムクロの腕に注入すると・・・その注入時の痛みと回復していく際の痛みにムクロは堪えており。

その際にヴァニスはどうすればいいのかとあたふたしつつもムクロを抱きしめる事しかできず。

腕が直り切るまで抱きしめていると・・・・・



「んん!?!!ヴァニ・・・ヴァニス・・・もう大丈夫だ。

大丈夫だからそろそろ話してくれてもいいんだけど・・・・あはは・・・」

「もう!!!注入時と回復時に痛くなるなんて聞いてなかったんだけど!

本当にムクロに何かあったらどうしようって思って私必死だったんだからね!!!

高貴な私にこんなことさせてタダで終わるとか思ってないわよね!?ねぇ!?」

ヴァニスはムクロから離れて涙目にしつつ怖かった感情を吐き出すと。

今度はムクロがヴァニスを抱きしめて感謝の言葉を吐くと・・・ヴァニスは小さく腕をムクロの腰にあててコクリと頷くと、その後方からは何やらとんでもないくらいのが漂っていた。



「ゆ、ユリハ!?見ちゃダメだよそれ以上は!!!って、ユリハ!?」

「あはは、ムクロ君!!ヴァニスちゃんを抱きしめちゃって何をしてるのかな??

私にわかりやすく説明してくれると助かるんだけどなぁ~ウフフ。」

「えっと・・・これには深い事情があるんだ。

ヴァニスが泣いてたから・・・その慰めようとしてだな・・・」

「へぇ~ヴァニスも随分とムクロに気に入られたじゃない。

これだと戦闘での腕もそれなりに上がってるって言うことで間違いないのかしら??

―――――――――エリはどう思う??」

「ムクロがこれだけ熱い抱擁をしていると言う事はそう言うことじゃないかしら??

きっと一人前になった儀式か何かよね???

だったらこの先にいるであろうコカトリスと戦う際には力を見せてもらわないと。」

「まさかムクロがヴァニスを抱きしめているなどとは想像もしていなかった。

それとヴァニスは目が少し赤いような気がするのだがどういうことだ??

何か怪しい匂いがするのだがな??」

ミストの発言でさらに危険度が増したと感じたムクロたちは慌てて離れ、状況の説明の為にと討伐したコカトリスのアイテムを見せながら起こった出来事を聞かせ納得させるが抱き着く意味がやはり理解されずユリハも少し笑顔が怖いままであった。

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