第389話 スキルによる深手
――――――――――――――中級層荒野:オアシス近くの狩場
アヤカの攻撃をものともせずにレイスロードはエリに対して死の一撃を叩き込もうとした時・・・・
煙の中から一つの影が飛び出した―――――――――
「あ、アレは・・・・む、ムクロッち!!!!
もうムクロッち!!!死んだかと思ったじゃん!!!」
「ぐぐぅ・・・・そりゃ悪かったな・・・ぐぅぅ・・・エリ、今のうちに逃げろ。
俺が鎌を押さえてる今が逃げる時だ。」
「いいえ、それはしなくて済みそうよ。
でしょ?ファム――――――――――」
「でぇいやぁあぁぁぁぁ!!!!!!
―――――――――――ヴォルケーノランス!!!!」
唐突な鎌攻撃を何とかガードしたムクロの代わりと・・・チャージをして待機していたファムが最後のトドメとスキルを解放してレイスロードを貫くと。
レイスロードの体力は消滅し・・・天へと消えて行った。
「ふぅ・・・何とかなったな。
それにしても体を貫かれた時はどうしようかと少し困ったが・・・・
エリとクーリアたちに後の後方支援を任せてよか・・・」
「何にも良くないわよ!?ばっかじゃないの!!!本当にムクロッちはユリハがいてもいなくても無茶ばっかりするんだから!!!
本当にこっちの心配を返してよね?
何でいつもいつも私たちがムクロッちよりもはらはらしないといけないのよ!!
ねぇ?みんな。」
「そうね・・・今回の状況から考えるとムクロは間違いなく2人のスペルで消滅していた計算だったけど。
どうやってあの攻撃を回避したのかしら?」
「きっとムクロの事だからスペルを回避した方法をどこかに隠してるに違いないよ。」
ファムたちの問いにムクロは攻撃でも壊れないオブジェクトである岩場を使ってスペルを回避したと答えると。
負傷したムクロの腹の手当てをするために一度拠点へ戻ることとなった。
「いや、このくらい平気だ・・・だから手当しなくても次のモブ狩りに行かないか?」
「そんなわけにはいかないに決まってんじゃん!!
ムクロッち・・・どうして傷を見せたがらないの?
やっぱ・・・レイスのスキルは相当深いキズだったってことでしょ?
だからさ?見せてよ・・・・」
「あれだけ派手に貫かれたのなら傷は相当なモノだと思うわよ。
何せ・・・レイスロードの手が飛びだしてるくらいだったものね。
ほら、つべこべ言わずにムクロは腹を見せたらいいのよ。」
「あれだけの戦いの後だっていうのに・・・本当に緊張感も何もないわね。
まぁ・・・今回はムクロがスキルを引き受けてくれたから今回の無茶は正当化されたって事よね。
だってあんなスキル私だったら絶対にお断りよ?」
「わ、わたしも・・・アレは喰らいたくないかな・・・体を貫かれるとか想像したくないくらい痛そうだよ・・・うぅぅ・・・」
アヤカとファムは自分たちの腹を押さえながらムクロを見つめ。
みんなに傷の不安が広がるのを考えたムクロは・・・クーリアたちに自身の傷の手当てをしてもらうために傷む傷を見せた。
「なッ!?こ・・・コレがキズ・・・なの?
もはや致命傷なキズだよ・・・・コレ・・・・あのレイスってばマジで私たちの中の誰かを消す気であの技を撃って来たって事だよね・・・
でも、ムクロが頑丈でよかったよ・・・」
「頑丈なのは結構だけど・・・本当に見事に抉られてるわね。
それに伴う痛みは相当なもののはずだったと思うけど痛みに対して恐怖はなかったワケ?」
「いや、恐怖と言うかどうなんだろうな。
クーリアやエリにアヤカたちにスキルが放たれた場合の事を考えてたら体が勝手に動いててさ。
こういう生傷はソロ時代には結構あったし・・・問題はない・・・かな・・・アハハ。
あと、ユリハ達には内密に頼む・・・・」
「それは無理な相談ね。
ムクロが無茶をしたのには変わりはないしこの件についてはユリハ達に隠す必要性が見当たらないもの。
だからムクロはしっかりと2人に叱られるといいわ。」
そう言ってエリは回復をクーリアに任せてチャットを打ち込み始め。
クーリアはムクロの腹に回復用のアイテムを使って手当てを開始した。
「ッ!!・・・アハハ・・・やっぱこれだけの傷だとさすがに染みるな。
だからさ・・・クーリア・・・もう少しだけ優しく手当てしてくれないか?
なんだか力が入っているような気がするんだが。」
「今気が付いたのぉ?おめでたいムクロッちだねぇ~本当に私たちを心配ばっかりさせといて黙っておけとか言うし。
ユリハが手を出せない代わりに私がこうやってムクロを罰してるんだよ!!ホレホレホレ!!!」
「く、クーリア・・・一応ムクロはけが人だから優しく・・・・
そうじゃないとますますムクロの評価が下がっちゃうよ?」
「それはそれでいいんじゃないのかしら?
誰かがこのゲーマーに教えてあげないとこういうのは分からないと思うし。
自らの評価を捨ててまでムクロにわからせる姿勢は本当に立派だと思うわ。
それじゃ私も武器のメンテでもしようかしらね。」
「はいはい、ゴチャゴチャ話してないで早く回復させて頂戴。
―――――――――今の戦闘が終わり次第2人が来るそうだから。」
エリの言葉にムクロは変な汗をかきだし・・・クーリアに多少痛くてもいいから早く回復させる様に語ると。
クーリアは回復効果の高いアイテムを取り出したのだが・・・・・
「ムクロッちが言ったんだからね?
この回復軟膏は回復がメチャ早いけど・・・・まぁやればわかるよ。」
「ん?なにか言おうとして止めなかった・・・・ッ!?
ぐあぁ・・・コレは・・・・さっきよりも染みるな・・・・ぐあぁ・・・」
「すごい辛そうだけど本当にこれで治りが早いの?
ただのクーリアのイジメのようにしか見えないんだけど。」
「そうね・・・コレは完全にクーリアとムクロの友好度が0になったわね。」
「でも・・・キツイ薬の効果はあったみたいよ。
あれだけ酷かった傷がここまで治って来ているのなら間に合うわね。」
「ほう、何が間に合うと言うんだ?
その傷・・・本当にムクロはまた無茶をして・・・バカモノ。」
「・・・・・・・・・・」
エリの言葉をかき消すかのようにテントの前にミストとユリハが立っており。
ユリハは無言でムクロを見つめていただけであった。
そのままムクロがただ暴言を吐かれるだけに思えた次の瞬間・・・
あれだけ言っていたクーリアはムクロを庇うように話し始めた。
「ムクロッちは私たちに痛い思いをさせないようにいつもの無茶をしてこうなっちゃんだよ。
本当にバカなムクロッちだよ・・・・でも、その場にユリハやミストたちがいてもこうしてたと思うし。
どうしようもないムクロッちを許してやってくれない・・・かな?」
「ムクロのした行動全てを許せとは私は言えないけど。
ムクロは身を貼って私たちをレイスロードのスキルから守ったのは事実。
私はそれだけ言っておくわ。
だから・・・後の処分は2人に任せるわね・・・それじゃ私はテントの外で見張りをするわね。」
「わ、私も付き合うよ!!
この状態だと居づらいし・・・・あはは・・・それじゃまた後で。」
エリとファムはそう言ってテントから出て行くと。
入れ替わるようにユリハとミストがムクロのいる所まで近づき。
クーリアが塗っている軟膏を手に取って塗り始めた。
「ふ、2人とも???ッ!?ちょっ!痛い!!!」
「何が痛いだ!!!私たちのコレよりもこのスキルを放ったその・・・レイスロードのスキルの方が痛かったに決まっているだろ!!!
それにな!!こんな傷をしてまで守るのは立派だが・・・もう少し自分を大切にしてもいいと私は思う。」
「そうだよ!!!ムクロ君は本当に無茶ばっかりだよ!!!
私たちが付いてないと本当にいつか消えちゃうよ!
エリにクーリアたちが付いてるから安心してたけど。
やっぱりムクロ君は放っておくと危険だよ・・・・ハァ・・・・」
2人はグリグリとムクロの傷口に軟膏を塗りつけながら・・・今後はもっと自分の体を大切にして戦う事を意識するようにとだけ言って手をどけると。
ムクロの傷は治っており・・・ムクロは立ち上がって2人に謝ると。
クーリアは自分には謝罪はないのかとジト目で見続けていた―――――――――
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