第287話 エリの昔の心と今の心

―――――――――――――――ポータル近くの広場


ユリハがムクロに強く抱き着くクーリアを引き剥がすと・・・クーリアは負けたにもかかわらず大きく笑い。

ムクロの手を掴んで立ち上がって、こういった。


「ムクロッち~また、PVPな相性チェックしようね♪

ユリハとは違って私たちは私たちでいい相性で・・・私がクセになりそうでしょ??フフフ・・・」

「ムクロ君ッ!?ちょっと話いい??

あ、クーリア・・・逃げようとしてもダメだよ??フフフ・・・全部話すまで尻尾をにぎにぎしてあげちゃおうかしら??」

「お、おい・・・俺は関係ないのにどうして巻き込まれているんだ!?

ユリハも考えてくれよ??俺は別にそんな事を考えてないって知っているだろ??

それにさ・・・エリが先にホームに行ったと思うし俺たちも追いかけないか??」

邪魔された仕返しにとクーリアはユリハに対して挑発的な発言を聞かせると・・・ユリハは笑いながら怒りだし、このユリハは何があっても避けなければいけないと感じたムクロは。

ホームに向かって1人で走りだすと・・・後ろからクーリアとユリハも追いかけてきていた。


「た、ただいまぁ・・・・ゼェゼェ・・・・」

「お帰りなさいませご主人様・・・に、2人もどうして息を切らしておられるのでしょう??

何かハードなプレイでもしたのですか??」

「ハードって言うと・・・さっきまで私はムクロッちとハードなPVPをしてたんだ。

って、そうじゃない・・・ユリハが怒ってるからホームまで逃げて来たんだけど・・・・」

「行き先がホームなら・・・はぁはぁ・・・逃がすはずないじゃない!!」

「ぬぬッ??ユリハがすごいかをしているのじゃ!?何があったのじゃ??」

「なんだかムクロたちも息が荒いって事は・・・いつもの仲良しのケンカだよ。」

「そうよ、単なるケンカだと思うわ。

でも、暴れないでちょうだいね・・・せっかくの紅茶を飲む空間が台無しじゃない。」

エリとレイは紅茶を飲みながら話すと、ユリハは2人を部屋に連れて入り・・・数分間の説教の後。

無事に解放されて出てくると、レイが紅茶を注いで手渡してきた。


「どうぞ、ご主人様・・・あと、クーリアたちもどうぞ。」

「あんがとね~もぅユリハってばジョークが通じないんだから~困っちゃうよね~ムクロッち~」

「ユリハは真面目だからな、あと・・・クーリアの言い方にトゲが多かったんだろうな。」

「そんなんじゃないんだから!!もぅ・・・レイちゃん紅茶お呼ばれするね。

あ、今日のお茶菓子・・・私が好きなリーフクッキーだ!!!・・・ハッ!?」

「さっきのユリハの顔はすごい可愛いと言うべき顔じゃったのぉ~

のぅ、ファム??」

「うん!!ユリハはもっとゆるふわにしたらいいのに~~すごく真面目だよねぇ~」

「融通が利かないと言うべきか・・・その点には触れずにするとして。

今日はこれからどうするの??ヴァニスもミストも来ていないようだけれど。

また、ここでお茶会なのなら私はソロでクエストに向かおうと思うのだけれど・・・どうなの??」

今のところ決まっていない事でエリに適当なことも言えず・・・素直に予定が決まっていないと話すと。

エリは紅茶が無くなるまではここにいると言って再び紅茶に口を付け始め。

ムクロは最近ソロでプレイしているエリに何をしているのか気になり、エリに興味本位で聞くと――――――


「そうね・・・ソロで私は昔にムクロとプレイしたフィールドを探索したり。

風景を眺めたりしていたのよ。

色々とフィールドの各地を回ったけれど、変わっているフィールドもあれば変わらず残っているフィールドまで・・・どれも懐かしさといい思い出が蘇って来たわ。

そうそう・・・ムクロが私とクエストに行った森林ステージの中層を覚えているかしら??

あの・・・グレートホーンの群れに追われたフィールドよ。」

「あぁ・・・アレか、あの時のエリは間違いなく俺をPKする気だと感じたな。

1人じゃ勝てるはずもないグレートホーンの群れの中に置き去りにしてエリは少し先の場所で見てるんだからな。」

「その時からエリはドS属性全開だったんだ・・・・で、それでどうなったの??

ムクロッちはグレートホーンのお腹の中に??」

「あはは・・・エリちゃんがいたんだからそれはないと思うけど。

どうなんだろう・・・まで見てたのかな??」

「ギリギリも何も主殿の若かりし頃にそんな仕打ちを・・・・これが真のドS教育者の教育者なのじゃ・・・」

「うん、私たちも結構ムクロに酷い訓練をさせられたもんね・・・でも、最後は優しく「お疲れ」って言ってくれるんだよね~」

ファムの発言にユリハはまたまたイラっとしながらムクロを睨みつけ・・・エリの回答を待っていると―――――


「ふふ、そうね・・・ムクロは基本的に挨拶ができるのよね。

あ、話が脱線したわね。

私はムクロから距離を置いてムクロが戦っている最中・・・安全地帯から遠距離スペルを射程内ギリギリで発動して援護したの。

どうしてそうしたのか?って言う顔をしてるから特別に話すケド・・・訓練だから少しは1人になって状況の判断能力を付けるのも悪くないと考えたのと。

本当はムクロと一緒にプレイしても楽しくないんじゃないかと思って追っ払う予定で取った行動だったの。

でも、気が変わったのよ・・・どういうワケか私はあと少しで消えるところだったムクロと共にグレートホーンを全て消滅させ、ムクロに手を差し伸べたのよ。」

「ん?・・・俺、最後辺りの話は初耳なんだが・・・本当なのか???

――――――――――本当だったのか・・・」

「あ、主殿!?主殿が落ち込んでしまったのじゃ!!!

エリ!!!どうするのじゃ!?」

「でも・・・エリがムクロッちを煙たがってたなんて信じられないな~

見るからにムクロッちの事を気にしてる風にしか見えないし・・・

昔のエリはどんだけギスギスしてたんだか・・・」

「あはは・・・だけど、エリちゃんの出した答えは間違いじゃなかった。

私はそう思うよ・・・だってムクロ君は人の心の中に平気で踏み込む人だし。

でも、違和感がないって言うか・・・何だろ、安心するって言うのかな??

きっとエリちゃんもそう思ったんじゃないかな??」

「そう言われてみればムクロって私を平気でPTに入れてクエストに出かけたり。

急に笑って見せたりしてきたよね・・・フフ、本当にムクロって面白いね。」

ムクロは自覚がないと言うと・・・ユリハ達はクスクスと笑うとエリも笑っており・・・・・


「それからして私とムクロのクエストをプレイする日々が日課となり楽しみになったのよ。

はい、これでこの昔話は終わりよ・・・」

「エリちゃんとムクロ君の昔話ってなんだか絵本の中の物語みたいだね。」

「そうですね、私がご主人様からいただいた本でいう・・・三銃士の物語のようですね。

ですが登場人物は2人なので二銃士といいましょうか。」

「でも、こうやって皆とプレイするのって私もムクロッちと出会って友達になったのがキッカケだったから・・・少しくらいならムクロッちに感謝してあげてもいいよ??」

「少しだけか・・・でも、俺もみんなとこうやってプレイできる日常がこんなに楽しいとは思わなかった。」

「アタイは主殿と一緒ならば2人だけでも全然楽しいのじゃが・・・ユリハやレイレイたちがいたらもっともっと楽しいのじゃ!!」

「うん、私もみんなと一緒で天世界と同じくらい大切で大好きだよ!!」

「だって?みんなムクロ君に感謝してるみたいだよ??もちろん私も・・・ね?

だから今日も楽しい事を沢山しようよ!!」

ユリハ達がニコニコと笑顔で笑いムクロにありがとうと感謝する中・・・エリは紅茶が無くなったからと言って、先程の宣言通りクエストに向かうと紅茶のカップを置いてレイに「御馳走様」といい。

ムクロの側を過ぎ去り際にニコッと笑みを浮かべながらホームから出て行った。


―――――――――――――――プライベートホーム

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