第229話 黒い腕の治癒方法を求めて

――――――――――――――――爆心地の花園


左腕から体全体を乗っ取られ、ムクロの体は剣を振り回して見境なくユリハやレイ達に攻撃を振るう中・・・ムクロの意識の中ではアルスと俺との主導権の取り合う戦いが始まっており、黒い俺の姿をしたアルスといつもの俺との斬り合っていた。


「どうした??オリジナルのハルト・・・・お前の力はそんなモノか???

早くしねぇとお前のお仲間さん全部俺がやっちまうぜ???」

「はぁ・・・アイツらだったら心配ない・・・俺が鍛えたんだ、そう易々と負けることはないと思うぜ?それと、この体は俺のモノだ・・・返してもらうぜ???

――――――――クイックシフト!!!」

加速スキルを使い、アルスに何発も連続で攻撃を加えると・・・アルスは手も足も出ないと言った様子で大きく笑い・・・・・


「アッハッハッハッハ!!!やれば・・・グハッ・・・できんじゃんか・・・・だが・・・お前の中からは俺は決して消えない・・・そして、お前が弱りに弱ったところで体を使わせてもらうぜェ・・・それまではイイコにしといてやらぁ・・・せいぜい気をつけるんだなァ。」

「手間かけさせやがって・・・・うッ・・・そろそろ目覚めの時か???」

アルスが消え去り・・・まぶたに光が満ちて目を開くとユリハやミストが倒れており、レイの剛腕装甲とアヤカの銃が俺に付きつけられている状況で拘束されていた。


「みんな・・・すまなかった・・・アルスはまだ中にいるけど追い払ったからここから出してくれないか??」

「ハァハァ・・・その証拠はどこにあるのよ??

こんだけ暴れといて、いざ解放したら私たちを消すつもりなんじゃないの??」

「ムクロ・・・・君??この目は・・・この目はムクロ君だよ!!!アルスが操っていた時は目を閉じてたからきっと大丈夫だよ。

もしもアルスだったら・・・私が斬るから安心して―――――――」

「そうだな・・・あの黒いオーラを感じないところを見るとムクロのようだな・・・・少しやつれているが。」

「ご主人様・・・剛腕装甲から解放しますが妙な真似をしますと潰しますので・・・・」

「レイレイにそんな真似ができるわけなかろうてのぉ~~~イダダダ!?

何をするレイレイ!!本当の事じゃろう!?」

アヤカの銃とレイの剛腕装甲から解放されると・・・フラフラと足が言うことをきかずに倒れると、ユリハ達が心配そうな顔をしてこちらをのぞき込んでいた。


「だ、大丈夫?ムクロ君・・・・さっきのアルスの事は覚えてる??」

「いや、俺の中でその・・・アルスって奴と戦って主導権を返してもらったんだが・・・この様子だとユリハ達に攻撃したんだろうな―――――――

すまない・・・・・」

「ムクロは悪いことなんてしてないよ・・・・ただ、あの時の状態からの想像だけどあの時ムクロの腕に黒いヤツが無理矢理入り込んでいたから・・・きっとその影響が出たんだと思う。」

「そうなんだ・・・ファムとムクロッちだけしか知りえない事だから私たちが横から言えたコトじゃないケド・・・でも、結果は勝ったんだよね・・私たち。」

「あぁ、私たちの勝利だ・・・・空にあった天空城も女神の気まぐれなのか綺麗に消えて行っているし・・・・無事に終わったな。」

「そうですご主人様、戦いが終わったのであれば・・・如水とやらに連絡を入れなくてよいのですか???」

レイ達の意見を聞き・・・如水さんに通話をかけて話すと、アドールのアバターはセレタスにキルされて出てきた所を確保して搬送したことと・・・・今回の作戦協力に感謝すると言って後にまた話そうと言って今回の天世界の一件は完了し、俺たちはホームへと戻って行った。


―――――――――――――プライベートホーム


「痛ッ・・・・左腕のコイツさえ何とかなればいいんだが―――――」

「ムクロ君、痛む??一応クーリアとエリちゃんの治癒をして消えなかったから・・・・何か良い方法があればいいんだけれど――――――」

「その腕の事なんだけど・・・天世界のセレタスに聞いてみたらどうかな???

私たちの事を敵と認識したら私が何とかするから・・・それに、元はというとムクロの腕が使えなくなったのは私が助けに行くのが遅くなったからで・・・・だから少しでもムクロの役になったらって・・・・思うんだけどどうかな??」

「ファム・・・そうじゃの・・・この件に関して一番知ってそうな人物はヤツくらいだしのぉ~アタイは行ってもいいと思うのじゃが、また後日じゃの。」

「それに、ついさっき私たちはムクロの腕とも戦いが終わったばかりだから少しくらい休憩しないとやってられないわよ?

ムクロの言う、休息はできるときにってコトよ・・・急いでも空回りするだけだわ。」

と、腕の事を話していると・・・・玄関から激しく1人飛び込んで来た。


「お待たせッ!!!さぁ天世界に殴り込みに行くんでしょ!!!私が来たからにはもう安心・・・・・よよ!?何・・・・もう・・・・終わっちゃった感じ??」

「そうだよヴァニス~~私たちはついさっきまで地獄のような戦いをしてたんだよ・・・でも、来ない方が正解だったかもしれない。

ムクロっちのとんでもない姿を見ることになってたから・・・・アレはトラウマもんだよ?」

「そう・・・だね、一刻も早くムクロ君の腕を何とかしないと次またいつ発作が出るかわからないし・・・・」

「そう言うわけだ悪いなヴァニス・・・連絡は入れておいたんだが、急に戦いが始まってな―――――――

痛ッ!・・・・あぁぁぁ・・・・くッ・・俺もこの通り、敵の浸食にやられてこの有様ってわけだ・・・・でもちゃんと勝利したから安心し―――――

え、あ・・・その・・・泣かれるとは思わなかったな・・・・あはは・・・」

「ご主人様、その腕をお隠しになってください・・・ヴァニスには刺激が強すぎますので・・・・あと、その腕は一度から再生スペルでの回復を施しても同じように黒いまま再生されるのでしょうか???」

「レイ・・・それは少し無茶な発想よ?

考えても見て、腕を再生するスペルは基本的には失った元の形状で再生と言う事は切り離した直前で元に戻るわけだから黒いアレもちゃんとくっ付いてくるわよ。

でも、私たちは勝ったのだからしばらくゆっくりしましょうよ。

と、言う事で私は弾の製作と新しいマガジンと銃の規格を考えるから・・・・何かあったら部屋に来てね、それじゃ。」

アヤカはそう言って部屋に入ると・・・部屋の中から機械の作動する音が響き、防音スイッチを入れたのか音が遮断されて静かになった。


「だが、今日は色々あって時間も遅いから解散にするか。

ムクロもログアウトして待機している方が安全そうだしな。」

「そうだな・・・アヤカに行ってから俺は落ちるから皆は先にログアウトしてていいから。」

「うん、それじゃ・・・・みんな、また明日ね・・・おやすみ。」

「ふわぁぁ~~わたしも落ちるね~~アヤカによろしくぅ~~」

ホームにレイ達を残してみんなは疲れたのかログアウトしていき・・・ヴァニスも少しソロでクエストに行くと言って出て行ってしまい、俺はアヤカにログアウトする事とユリハ達は先に落ちたことを知らせてログアウトし、左腕に違和感を覚えつつ深い眠りについた。


そして、翌朝・・・いつものように由里達と合流して学校へ向かい現実での腕に違和感がないか聞かれたが、腕の違和感はグロリアをプレイしていた時だけであることを伝えると、由里達はホッとして安堵し・・・学校に着くとお昼まで勉学に励んでいると、時間はすぐに過ぎ・・・耀子たちと屋上へ向かった。


「でさぁ~~昨日の天空城崩落を一部のプレイヤーが見てたらしいんだけど、ただの特異イベントとして運営が片付けたらしいよ。」

「そうか・・・きっと如水さんか女神の仕業だろうな。」

「だろうな・・・こんな影響力の高い事ができるのはあの2人くらいだろうし。」

「でも、悠一君の腕が心配だね・・・・セレタスが少しでも協力してくれたらいいんだけど・・・・」

「そうね・・・でも、私たちが頭を下げて頼むよりもファムが頼んだ方が協力してくれるかもしれないわね。」

コトハはお茶をズズ~~とすすりながら呟き、今日グロリアですることと放課後どこかに寄り道をするかとワイワイと話しながら昼休みを満喫していた――――――


――――――――――――――――昼休み

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