第189話 ハシャの噂と真実

――――――――――森林フィールド


薄暗い森で剣と剣が重なり合う瞬間に舞い散る火花と雲から漏れ出す星の光がチラつく中で・・・互いにスキルを使用せずに、ただひたすらに撃ち合っていた。


「ヌォォォォ!!!!フンッ!!!」

「―――――――ぐぅ・・・ゼイヤッ!!!!」

ハシャの重い剣技に対して、俺は受け流しや回避をしながらハシャにダメージを与えていると・・・ハシャは先に新たな行動に出てきた。


「ははは!!これだ・・・これを待っていたのだ・・・

――――――――最近のプレイヤーは歯ごたえも何もないと来た・・・やはりムクロでなければつまらんなァ!!!!

―――――――――ファントムベール!!!」

「俺もまだまだ若いんだけどな・・・・

って・・・そっちがその気なら俺もスキルを使わせてもらうとするかな!!

――――――――――クイックシフト!!!」

ハシャは黒いオーラを剣に纏せ・・・武器による攻撃範囲と攻撃力が上がり・・・攻撃範囲は大剣並みの間合いを切り裂く程であったが―――――


「ぐぐッ・・・・さすがに早い・・・また、腕を上げたな・・・ムクロ・・・」

「いいや、俺はいつも通りだ・・・そう言うハシャこそ、面白いスキルを使うな。」

俺とハシャは互いに距離を取ると・・・ハシャは大きく笑いながら見たことのない新たなスキルを使った。


「いいだろう、ワレの新たなスキルでムクロ・・・お前を完全に消し飛ばしてくれよう!!!

――――――――現れよ・・・亡者の剣!!!」

「空から剣が・・・・」

剣に目を取られているスキにハシャは手に持っていた剣を投げつけ、俺は素早く避けたが・・・・


「ぐッ・・・・・ハシャが・・・避けた剣のから・・・

――――――――また、面倒なスキルだな・・・・・」

「よくぞこの攻撃を回避した・・・この技を見切れるのはやはりムクロだけ・・・・だが、いつまで耐えらるか――――――」

ハシャは闇に紛れながら地面に刺さった剣を投げ・・・剣を避けると背後から現れるハシャの攻撃が繰り出され・・・この対処を早くしなければ消耗戦ではこちらが圧倒的に不利と考え・・・とにかく走って撹乱かくらんしようとするが空から俺を狙うかのように降り落ちる黒い剣が行き場をなくされ、走る事さえままならない状況で・・・ハシャは攻撃を緩めることなく剣を投げつけてきた。


「これで、トドメだ・・・フンッ!!!!」

「回避がダメなら・・・コレでどうだ!!!ハァァァ!!!」

俺は投げられた剣を回避するのではなく、投げられた剣を切り裂いた――――――


「はははは・・・実に見事・・・まさか剣を切り捨てるとは・・・

このままでは埒があかぬ、それに・・・スキルも未だに不安定・・・と、なれば・・・・やはりワレ自身が自らの手でやらねばなッ!!!フンッ!!!」

「そうこなくっちゃな!!!!ゼアッ!!!!」

ハシャはスキルを見切られ、これ以上剣を投げる攻撃も通用しないと悟ると・・・暗闇から姿を現し、地面に残した剣を引き抜きながら攻撃を仕掛けてきた。


「やっぱりハシャは強いな・・・

――――――だが、俺も今・・・少し立て込んでるんだ・・・だから・・・この辺でケリをつけるか・・・・ユリハ達に見つかると何を言われるかわからないしな。

――――――――とまぁ・・・そう言う事で、ブレイブダンス!!!!」

「ははは・・・やはりムクロ・・・お前は強者だ・・・」

俺はハシャの剣技を受け止めて弾くとスキルを発動し、ハシャの剣諸共切り裂き・・・体力バーを消滅させてPVPを無理矢理終了させたのだが・・・・


「ムクロ君・・・私たちをほっといて・・・何をしてるのかなぁ~~~」

「うわぁ・・・ナニ!?この穴だらけの状況・・・どうやったらこんなになっちゃうのよ!?」

「い、いや・・・違うんだ・・・コレには深いワケがだな・・・な?ハシャ?

――――――あれ、ハシャ!?」

「ワレは面倒事は好かん・・・さらばだ・・・いずれ再び相まみえようぞ・・・」

ヴァニスとユリハとの面倒事を避けるためか、遠くに移動したハシャは長い話をすることなく影に吸い込まれるように消えて行き・・・ユリハとヴァニスが俺に近づいてきた・・・・


「それじゃムクロ君・・・説明してくれるかな♪」

「ユリハ・・・あなた、全然顔が笑ってないわよ・・・・」

「その・・・なんだ・・・あははは・・・・」

俺はユリハの逆鱗を恐れ、ハシャが俺たちを狙っていたことを話すと・・・ユリハは場の状況を見てから納得したのだが、ヴァニスはハシャの事を知らないためかハシャの事を尋ねてきた。


「その、話にチラチラでてきたハシャって・・・誰なの?」

「ん~全部説明しようとすると長いけど・・・どうする?ムクロ君。」

「そうだな・・・ヴァニスはここ最近NPCがプレイヤーを襲うとかいう噂とかニュースを聞いたことないか?」

俺は簡単に説明ができるようにヴァニスに噂話を聞いたことがあるかを尋ねると、ヴァニスは噂を耳にしたことがあるらしく・・・そのNPCがだと伝えると・・・ヴァニスは凍りつき・・・・


「えぇぇぇ!?そんな物騒なNPCとどうしてPVPなんてしてたの!?

そのNPCは極悪非道・・・問答無用でプレイヤーを八つ裂きにするっていう噂なのに・・・・」

「ヴァニス・・・落ち着いて!その噂は肝心な部分が抜けてるんだよ。

―――――――噂は噂だけど、真実は私たちがちゃんと知ってるから・・・」

「あぁ、ハシャは戦闘狂で変なクセがあるけど・・・強者しか狙わないのと・・・NPC狩りやプレイヤーキラーを問答無用で倒して回っているうちにそう言ったプレイヤーから噂で広まったんだ。」

俺の話をヴァニスは半信半疑で聞いていると・・・遠くから悲鳴が聞こえ移動してみると、そこには――――――


「誰か・・・タスケテ・・・・」

「コイツが例のレアドロップアイテムを所持したプレイヤーか・・・それじゃ、さっそく分捕らせてもらうか!ゲヘヘヘ・・・」

「ねぇ、あの子・・・ピンチなんじゃ・・・ムクロ、早く助けに行かないと!」

「待て、ヴァニス・・・俺達ならヤツをすぐにでも追っ払う事ができるだろう・・・・だが、今回は俺達よりも先にハシャが来てるから安心しろ。」

「あ、来たよ・・・」

ユリハがボソっと呟くと・・・闇の中から先ほどまで戦っていたハシャが現れ、座り込んでしまったプレイヤーの前に立つと――――――


「なんだ、お前??

ソイツは俺の獲物なんだ・・・横取りするってんなら、お前も俺のコイツの餌食になってもらうぜ!!!」

「タ、助けて・・・・私はただ・・・楽しく仲間とゲームをプレイしてただけなのに・・・・」

「・・・・・・・・・・・」

ハシャは話すことなくジッと立ち、相手の出方を見ていた・・・・そして、痺れを切らしたプレイヤーはハシャに攻撃を仕掛けるが・・・・


「遅い・・・フンッ!!!」

「ぐへッ・・・・」

「すごい・・・完全に攻撃が入ったと思ったのに・・・」

「そりゃ、ハシャはかなり鍛錬しているからな。

―――――――あの程度のプレイヤーの攻撃だとかすりもしないな。」

「そうだね・・・色々と噂になるくらいだから・・・・

―――――盗賊団を1人で壊滅させたNPC・・・16人を相手に無傷での勝利・・・どこかの誰かさんと同じようにね?」

ユリハは俺の方を見ながらそう言っている間に、殴られたプレイヤーは怒りに身を任せてハシャに再び攻撃を仕掛けた。


「コノヤローーーー!!!ぶっ殺してやる!!!NPCの分際で、偉そうにしやがって!!!」

「では、聞こう・・・そう言うキサマはワレよりも偉いのか?強いのか?ソレを証明したければワレを倒して見せよ――――――」

ハシャの発言でさらに怒りを増したプレイヤーの攻撃をハシャは軽々と避け、息の上がってきたところを見ると・・・再度、そのプレイヤーに問うた。


「ここからお前が去れば、ワレはお前には手を出さぬ・・・だが、ここから先・・・お前がこのモノを狙いワレと戦うと言うのであれば――――――」

「NPCの分際で、ごちゃごちゃ話しやがって・・・・

テンプレ文でも話してろよ!!!このクソNPCがッ!!!!」

プレイヤーが戦いを選んだ瞬間・・・ハシャはプレイヤーの真後ろから剣での一撃を入れるとプレイヤーの体力バーは消滅し、光の柱となって消えて行った。


「あ、あの・・・あ、ありがとう・・・ございます。」

「・・・・・・・・・・・・・」

「アレがハシャの真実だ。」

「ムクロたちが言っていたとおりね・・・悪を懲らしめる存在ね・・・カッコイイじゃない!!」

「うん、あの子もきっと良い面のハシャを知ってくれたと思うよ・・・きっとね。」

俺たちは感謝を示すプレイヤーを背に闇へと消えて行くハシャを見送りながら木の実取りへと戻って行った―――――――――


――――――――――――――森林フィールド

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