第168話 ヴァニスと訓練

―――――――――――森林フィールド


洞窟城から出発して数分後・・・俺のメールボックスにメールが届く音が聞こえ、中を確認してみると・・・中にはユリハ達が自分たちの部屋の完成の報告と、現在俺がどのような状況になっているのか報告を待っている内容であった。


「ユリハ達・・・自分の部屋を作ったのか・・・それにしてもファムの部屋は何だ?食糧庫か?・・・・まぁ、それは後だな・・・

今はこの・・・ヴァニスといる状況の説明が先だよな――――――」

「ねぇムクロ・・・・何かあったの?

すごい真剣に悩んでるような顔をしてるけど・・・・」

俺は何も知らないヴァニスにユリハ達の事を話し、送られてきた画像を見せると・・・少し考え・・・・・


「そうね~この場合私だったら激怒ゲキオコスーパーエクストリームデビルモードになっちゃうわね。

・・・だから、帰る日まで秘密にしてるのが無難じゃないかしら?」

「その変なモードはどうなのか聞かないでおくとして・・・そうだな、とりあえず心配事を増やさないように適当にモブと戦ったと書いておくか。」

俺はヴァニスの言う、お怒りになってほしくないのと・・・ユリハ達にこの状況を信じてもらえるか不安もあり・・・ヴァニスの件を省いたメールを送り返し・・・ジャカルゥで再び移動を開始した。


「ねぇ・・・ムクロ・・・その、仲間たちって私を虐めたりしない?」

「ん~ユリハ達に限ってそれはないと思うけど・・・不安か?

ん~でも・・・そうだな、最初は互いに慣れるためにクエストに行くのもいいかもしれないな。」

俺が笑いながらブランを走らせていると、ヴァニスがもう1つもじもじしながら話し始めた。


「えっと・・・その、私ね・・・今まで洞窟城にいたじゃない?

だから・・・戦うのはだから・・・色々教えてくれると嬉しいのだけれど・・・・」

「ヴァニス・・・腰にぶら下げた高価な武器はまさか・・・使った事がないのか?」

俺はヴァニスの腰にぶら下げた剣を見ながら尋ねると・・・ヴァニスはコクリと頷いた・・・・


「え、ちょっと・・・どうして止まるのよ!!

もしかして私が使い物にならないからここで切り捨てようと・・・・」

「違う違う・・・ヴァニスがどこまで戦えるのか見ないと教えようにも時間がかかるだろ?だから・・・さっきからずっと後ろから追いかけていた低級のあのモブとさっそく、もらう―――――

何、心配するな・・・俺がついて見ててやるから。」

俺がそう言うと、ヴァニスはそれならと・・・ジャカルゥから降り、剣を抜くと・・・それは見事な作りの高価な装備であったが・・・


「え、えいやッ!!!あたんないわ!!!コイツ・・・強いッ!?」

「ヴァニス~そのモブはそんなに強くないぞ~~あと・・・もっと、良く敵を観察して弱点を見つけて攻撃するんだ!!!」

いきなりの戦闘にうまく対応できず・・・ヴァニスはプラント達に囲まれていた。


「いや~~来ないで~~きゃッ!?

―――――どこ触ってるのよ!!!」

プラントの触手がヴァニスの体にまとわりつき、ヴァニスは態勢を崩され・・・これ以上の戦闘はヴァニスが一方的にやられると察し・・・俺は剣を抜き4匹のプラントを一瞬で討伐し・・・ヴァニスに手を差し伸べた。


「――――ほら、立てるか?」

「あ・・・ありがと・・・・」

ヴァニスはスカートをパンパンッと叩きながら立ち上がり、少し自信がなくなっていた・・・


「よし、ヴァニス!!ほら、かかってこい!!!

―――――俺が相手になってやる!!」

「え、無理よ・・・プラントに手も足も出なかったのに・・・ムクロに何て勝てるわけないじゃない・・・・私、このゲーム向いてないのかな?」

俺は剣を鞘に戻し・・・その状態からヴァニスに挑発すると・・・


「なッ!?、ムクロ・・・勝機なの!?

――――武器が無かったら・・・そっちが不利に・・・・」

「不利になった方がヴァニスが攻撃しやすいだろ?

ホラ、俺の事は気にせずかかってこい!!!」

ヴァニスは俺が剣を持たないと知ると、ダメもとで俺に剣を叩きつけた。


「ぐッ・・・・・ヴァニス、いいか?

攻撃はちゃんと目を開いて撃つんだ。

だが、この攻撃はなかなか効いたぜ?」

「う・・・うぅ・・・で、でしょ!そうでしょ!そうでしょ!?

―――――私もやればできるんだから!!!

・・・・でも、ムクロ・・・そのケガ・・・大丈夫?」

ヴァニスの気合の入った一撃は武器の質が良かったのか、そこそこに良いダメージが入り俺の体力バーが少し減っていた。


「大丈夫だ、こんなのポーションを飲めば回復できる。

――――――ホラ、これで元通りだ。

ん~でも・・・ヴァニスの戦い方だとこの先辛くなるかもしれないから・・・ヴァニスは戦闘方法をある程度覚えなおす必要がある・・・と、言うわけで・・・俺の訓練メニューで覚えなおさないか?」

「え・・・それって、私みたいなみたいなプレイヤーにでもできる?嘘ついたりしない?」

俺はヴァニスの質問に嘘偽りなく答えると・・・・ヴァニスは俺の訓練を受けることとなった。


「それじゃ、先ずは・・・俺が即席で作ったこの木の剣で訓練だ。」

「う、うん・・・これだとケガしないもんね・・・平気平気、で?コレで何をするの?素振り?」

ヴァニスの質問に俺はニヤっとしながら近くで眠っていたアバターサイズのストーンゴーレムに小石を投げつけて起こすと・・・ヴァニスにアレだと教えると・・・


「あんなのとスグに戦えるわけないでしょ!!!

―――――――どうして私を追いかけてくるのよ~~~」

「ヴァニス・・・コレは訓練だ、危なくなったら俺が助ける。

だが、これだけは忘れるな・・・強くなりたいのなら、自分のを自分でするんだ。」

俺はヴァニスに自力でモブの特性や攻撃方法を身に着けてもらうために、この辺りで一番動きと攻撃モーションの遅いストーンゴーレムを選んだ。


――――――――Gooooooooo・・・・


「わ、わかったわよ!!!私の実力を見せてあげるんだから!!!!

――――――――ヤッ!!!ヤァッ!!!」

ヴァニスの攻撃がゴーレムに直撃したのだが・・・・


「ほらほら、ちゃんと・・・潰されちまうぞ~~」

「う、ウソ~~~さっきの攻撃が全然効いていないじゃないの!?」

それもそのはず・・・ゴーレムの類は極度の物理耐性を持っており、生半可な物理攻撃ではダメージが通らない作りをしている。

そのことを理解しているプレイヤーは武器を変えるなり、魔法やアイテムを使用して戦うのだが、知識のないヴァニスはただひたすらに打ち続けるのみであった。


「攻撃を避け・・・てッ!!!からのッ!!!

―――――――連続切りッ!!!」

「おぉ~初めてスキルを使ったのはいいが・・・それじゃ薄いな。

もっとすごいヤツを叩き込むかしないとな。」

ゴーレムの遅い攻撃をひらりと回避し、ヴァニスのカウンターで放ったスキルはゴーレムにヒットしたものの・・・スキルの熟練度が浅く、全く効果がなかった。


「ヴァニス、ナイススキルだ!!!

――――――だけどな、相手はゴーレム種だ・・・もっと威力の高い技を叩き込むか弱点を狙って攻撃しないとゴーレムは倒せないぞ!!!」

「そ、そんなこと言ったって・・・この木の剣のせいで攻撃力が・・・・・」

そう、ご自慢の武器を取られ・・・スキルを使っても攻撃が通らない敵を前にすると・・・やはり皆、武器が悪いだとか何かしらに責任転嫁せきにんてんかする・・・まずはこのの中身を鍛えることがこの訓練の1つの目的で、自分自身でミスを受け止め次に対処できるかが成長のポイントとなり・・・ただひたすらに目の前の敵を撃ち続ければ、自然と自身に対応力と相手の弱点の見極めができ・・・両方鍛えられる訓練方法であった――――――


―――――――――――森林フィールド

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る