第155話 ホードンと奇妙な依頼
――――――――――――ホーム&砂漠フィールド:オアシス
砂漠のオアシスでブランとのんびりとしていると、砂の海を猛烈な速さで泳ぐ砂漠怪魚の群れに追われたプレイヤーがオアシスに逃げ込んでくると、すぐさま安全地帯だったはずのオアシスが戦場へと変わっていた・・・・
「す、すまないが・・・アイツらを追っ払うのに手を貸してくれないか?
―――――ッ!?
――――あわわわわ・・・命とアイテムとリムドだけは勘弁をッ!」
「名前の色は気にするな、それに・・・困ってるなら手を貸すぜ。」
男は俺の名前の色を見ると、酷く怯え・・・この様子だと使い物にならないと感じ、俺は1人で砂漠方面へと出ると・・・怪魚の群れが俺に向かって飛んできた。
――――――――GYaaaaaas!!!
「ふんッ!!!!ゼイヤァ!!!!」
飛んでくる怪魚の鋭いヒレを回避しながら、怪魚の体に剣を走らせ・・・真っ二つにすると、怪魚の群れは我先にと砂漠の海に逃げて行った。
「あわわわ・・・助けてもらってなんだが・・・命だけは・・・・」
「だから、何も取りはしないって言ってるだろ?
こうやって助けたワケだしな。」
俺の態度や服装をまじまじと見ると、男はホッとしたのか俺に近づいてきた。
「こりゃ、悪い・・・名前の赤いプレイヤーには注意しろっていうのが常識だが、アンタは名前の色ほど悪い奴には見えんしな。
えっと、その・・・ムクロ、俺はホードンだよろしくな。
そこで泳いでるこの辺じゃ見かけないジャカルゥはムクロのパートナーか?」
「そうか、わかってくれてよかった。
――――――よろしくな、ホードン。
あのジャカルゥは俺のパートナーのブランだ、今はワケあって俺たちは旅をしているんだが・・・ホードンはどうして怪魚に追われていたんだ?」
俺はホードンが怪魚に追われて逃げてきたワケを聞くと、ホードンはとあるアイテムを運んでいる最中に襲われ、ここまで逃げてきたらしい。
「そのアイテムは、クエストか何かの納品アイテムか?
―――――それとも自作のアイテムなのか?
この辺りのモブは食料を狙うから食料の運搬をするならこの砂漠はお勧めしないが・・・・」
「それが、俺はこのアイテムの中身を知らないんだ。
とある掲示板でアイテムを運んでくれるプレイヤー募集を見て受けたんだが・・・値がいいだけあっていきなりこんな目に合っちまったよ・・・・」
ホードンは謎の箱を取り出し、俺に渡すと・・・中を見てはいけないと念入りに言われ、言われた通りに俺は箱を色々な角度から見て中身が何なのかわからないままホードンに返した。
「だが、受けたクエストを途中で破棄するのも後味が悪いから、俺は最後までやり遂げるつもりだ。
あと少し先にある砂漠街に受取人がいるからそこまでの我慢なんだが・・・・ムクロ、良ければでいいんだが・・・少しだけ護衛してくれると助かるんだが・・・ダメか?」
「ホードンと出会ったのも何かの縁だな、よし・・・俺もこの依頼を手伝うぜ。
どうせ、街の中には入れないだろうから・・・街の前まででいいか?」
俺の提案にホードンは俺の手を両手で握って感謝しながら上下にブンブンと振り回すと、善は急げとホードンが言い出し・・・俺はブランにのって移動を開始した。
「ホードンは今レベルいくつなんだ?」
「俺か?俺は今、23だ・・・ムクロはレベル25か・・・
でも、俺・・・このゲームが苦手と言うか・・・戦いがあまり好きじゃないんだ。
―――――な?笑えるだろ?
でも、今回のこの依頼でお金が入ったら店を開こうとしてるんだ。
アイテムを仕入れて販売するアイテム屋をな。」
ホードンは自分の店の事を色々と話し、経営する場所は・・・人が多く集まる始まりの都に店を構えるとのことだった。
そしてホードンが話していると、辺りに不穏な地響きが唸りを上げ・・・地面からクリスタルゴーレムが現れた。
―――――――――Goooooooooooo・・・・
「な、なななななな・・・なんでこんなやばそうな奴らばっかり出てくるんだよ!?」
「ホードン、アンタはそこに隠れていてくれ・・・久々の大物だ、コイツを倒せばいい宝石が手に入るって噂だしな――――――
―――――――先手必勝!!!ハァッ!!!!!」
クリスタルゴーレムが俺たちに気付いていないうちに、俺はクリスタルゴーレムに背後から強烈な一撃を叩き込むが、あまりの硬さに剣が通らず・・・手がじんじんと響いていた。
「くあぁ・・・やっぱ弱点のコアを狙う必要があるか・・・・
それに、今の攻撃でヤツもこちらに気付いたようだな――――――」
「あわわわ・・・・クリスタルゴーレムのレベルは34・・・それなのにどうしてムクロはあんな強敵に挑めるんだ・・・だけど、俺にもきっと何かできるはず!
俺のアイテムの中には・・・何かが――――――
――――――――これだ!!!
ムクロォぉォ!!!今からアイテムを作るから少しの間だけ耐えててくれ!!!」
「ホードン・・・あぁ!!わかった!!!頼んだぜ!!
――――――てなワケだ・・・そこのゴーレム・・・ホードンの元へは行かせねぇ!!!ハァッ!!!」
ホードンがアイテムを制作している間、俺は硬いゴーレムに攻撃を加えながら・・・注意を惹き付け、ゴーレムの凄まじいパンチを回避して耐えていると・・・・・
――――――――Goaaaaaaaaaa!!!!
「くッ・・・さすが、ゴーレムだな・・・パンチを喰らうだけでヤバそうだ。」
「ムクロ!!!今できたぞ!!!これをゴーレムに投げつけろ!!!」
ホードンは俺に向かって作成したアイテムを投げ、アイテム名を見て・・・俺はニヤリと笑いながらホードンに感謝しながらゴーレムに投げつけると・・・ゴーレムの体がボロボロと崩れ去り、コアが露出し動きが止まっていた。
ホードンが作成したアイテムは・・・調合して作れる、対硬化物硫酸液でゴーレムや硬化系のモブに致命的な効果を発揮するアイテムで・・・作成するのに高い技量が必要とされ、ホードンの有する技量の高さを示していた。
―――――――Go・・・Gogo・・・・・Go・・・・
「ハアッ!!!!」
俺は動けないゴーレムのコアを破壊すると、ゴーレムは轟音と共に崩れ去り・・・消滅すると、離れていたホードンとブランが俺の元へとやってきた。
「―――――ムクロ、俺にはそのアイテムを作ることしかできなかった・・・
でも、少しでもムクロの力になれたのなら嬉しい。」
「ホードン、こんな場面であれだけのモノを作れたんだ、もっと自分を評価してもいいと思うぜ?
あれはホードンができる戦い方なんだと思う・・・それにあのアイテムでこうやって勝てたわけだからな!」
俺はホードンに礼を言うと、俺たちは街へとさらに歩みを進め・・・・
「いやぁ~ムクロ、助かった・・・このお礼はいつか必ず――――――」
「あぁ、楽しみに待ってるぜ・・・それまでに俺は名前のコイツを元に戻す必要があるけどな。
それじゃ、そろそろ行くか・・・ホードン、またな。」
ホードンとフレンド認証を済ませると俺はブランに乗り、ポータルを経由して森林フィールドへと向かった――――――
「ズズーーーーーはぁ~~レイの淹れたお茶は本当においしいね。
それにこのお茶菓子のケーキもおいしいし・・・ムクロッちも一緒だとよかったのになぁ――――――」
「そうだな、今頃ムクロはどうしているんだろうな?」
「砂漠のオアシスでモブと出会ってから連絡がないけど、きっと大丈夫だよ。
それに何かあれば私たちに連絡が来ると思うし・・・」
「ムクロが他の女とイチャイチャしていなかったらいいわね。」
「主殿は誰にでも優しくする癖があるからのぉ~~どんな
「だね、天使の私にでも優しくしてくれたし・・・べ、別に私は釣られたわけじゃないからね!!!
――――――行くところがないから、厄介になってるだけで・・・・でも、皆と一緒は嫌じゃない・・・かな。」
「ハァ~ご主人様・・・こちらは皆が心配しているというのに・・・ご主人様は御自由に遊ばれて・・・ご主人様が帰ってこられたら、うんと甘えさせていただきますから・・・・お覚悟を。」
俺は草原フィールドに来るや、背筋がゾクゾクとし・・・嫌な予感がしたが、気にせずに森林フィールドをブランで走り始めた―――――――――
――――――――――森林フィールド
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