第85話 新たな世界への扉

―――――――17時39分・・・街外れの巨大門前:戦闘中


巨大な門の前で数体のモブと同時に戦っていると、離れて見ていたはずのユキシロとレイがすごい勢いで走り込み戦闘に参戦した――――――


「ハァッ!!!!フンッ!!!――――――どうした?何か問題でも発生したのか?」

「いいえ、私達はご主人様だけを戦わせるわけにもいかないと思い参戦しに来ました。

どうか私達にも協力させてください。」

「ニュフフ~~アタイ達も加勢するんじゃ~

こんなに楽しそうな事を見ているだけなんてできるわけないじゃろ!」

レイとユキシロは互いに武装をフルに使いながらモブを倒し・・・何とか巨大な扉前にいたモブを全て倒すと・・・・巨大な扉が俺達を地下へ導くかのように大きく開いた―――――


「さて、ココからは未知のフィールド・・・いや、ダンジョン?に繋がっているだろう・・・・俺の長いグロリアをプレイしてきた感がそう言ってる――――」

「はい、ですが・・・ご主人様をお1人で行かせる薄情はこの場にはいませんのでご安心くださいませ。」

「レイレイの言うとおり!

主殿はこのアタイとレイレイが完全密着サポートで安心じゃ!」

この場にいた者は誰1人として引き返すことは考えず・・・・ただ真実を探求するものとして、下へ続く階段を下りていった―――――――


―――――――ブリザードケイブ地下の地下・・・・


階段を歩き、大きな扉の前に辿り着くまではモブと一切出会わず・・・道も複雑に入り組む事も無くただ下へ下へと続くシンプルなものだった。


「また大きな扉・・・・この先には何が・・・レイ、この扉の先に何があるか感知できるか?」

「いえ、ご主人様・・・この扉が遮断しているのか、この扉の先は私でさえも感知は不可能な領域です。」

「くんくん・・・でも、アタイの鼻だと・・・何かあると言う匂いがするのぉ~

モブやエネミーと違って不思議な匂いがするんじゃ・・・・」

俺はユキシロの鼻で感じた不思議な何かが気になり、大きな扉を開くことにした。


―――――――――ゴゴゴゴゴ・・・・・


最近まで誰も使っていなかったのか・・・扉は重く錆ついてるように鈍い音を立てながらゆっくりと開くと・・・・・・


俺達の目の前に広がる風景はグロリアとも先程までいた雪原フィールドとも言えない幻想的な場所であった―――――


「なんだこの・・・眩しい場所は――――――」

「ご主人様・・・・ここはグロリアではありません!!!

私のセンサーが反応しています・・・・ここは未知の世界です!!!」

「主殿!レイレイ!!何か来るッ!!気をつけるんじゃ!!」

ユキシロが匂いで何かが来ると察知し・・・注意をすると空から神々しい光の槍が俺を目掛けて射抜いて来た。


「ハァッ!!!!―――――なんだ、このスキル・・・・見た事無いスキルだ・・・」

「ホゥ・・・天世界てんせかいに迷い込んだとが反応したかと思えば・・・・・

アーツを剣のみで弾くとは・・・・そこのお前・・・名前は?」

高々い声の方向を見ると、輪のようなモノで飛んでいるのか・・・・空に人の姿が見え、俺に対して興味を示していた。


「ご主人様、ここは距離を取って・・・・・」

「いや、空を飛んでるモブを見た事はあるが・・・・まさか人が飛んでいるなんてな・・・・

俺の名前を知りたがってたな?俺の名前はムクロ!グロリアのプレイヤー・・・ムクロだ!!」

「いきなり攻撃されたかと思ったら・・・何と言う展開なのじゃ・・・これは――――」

状況をパッと読めないユキシロは空に浮く人のようなものを見ながら不思議そうな顔を浮かべていた。

すると、空を飛ぶ者が笑いながら口を開いた。


「はっはっは・・・・そうか、お前はムクロと言うのか・・・・

私のアーツを腕のみで防いだ男よ・・・私と手合わせを願いたい!!!」

高笑いをしながらその者は決闘を申し出てきた。


「ご主人様、未知との遭遇は心躍るでしょうがココはぐっと我慢し――――――」

「いいぜ!ここで、やり合おう!!!」

「レイレイの話を聞いとらんのか主殿ぉ!!?」

レイはポカーンと口を開いたまま動きを止め、俺が言った言葉を思い出すと我に返り・・・・自分の言っていた言葉の意味を問い詰めてきた。


「悪い悪い、未知との戦いは互いに条件はフェア・・・・そして何より、戦いを申し込まれて断る道理もなければ・・・断ればもっとになってるかもしれないだろ?」

「ですが!・・・・わかりました・・・ご主人様が私達の事を考えた上で挑戦を受けた事にしておきます・・・・ユキシロ、私達は下がって見守る事にしましょう。」

「そだね、と言う事で・・・主殿ぉ~頑張るんじゃぞ~」

レイとユキシロは扉近くまで下がって待機すると、空いた人が地上近くまで降りてきた。


「私の名前を伝えていなかったな・・・・

私の名前は、レヴァン・・・使レヴァンだ!!」

降りて来て早々に自己紹介を始めたかと思えば・・・レヴァンと言うモノは自分の事を天使だと言い始めた・・・・


「天使?お前も・・・うちのそこにいるフリフリな服を着たレイ見たいに天使なのか?」

「天使は私達の・・・この世界・・・天世界の創造主様が作られた天使のみ!

だが、そこのレイと言うモノの力は天使と同格・・・それ以上の力を秘めているようにも見える・・・・別の世界の天使と言う事は確かだ・・・」

「あと、この世界はグロリアではないのか?」

「くどいぞ!!ここは天世界!!!グロリアなどと言う所では断じて違う!!

創造主が作り上げた理想郷・・・・・我ら、天使のみで造られた平等な世界!!!

一片の悪も、一片の正義も、全ては創造主の導きのままの世界!!!

さぁ、始めよう!!いや・・・グロリアからの侵入者よ!!!」

レヴァンは大きな光の槍を作り出すと、俺に向かって突進して来た。


「ハァッ!!!これしきッ!!!」

「中々やるようだが・・・・これならどうだ!!!

―――――――神槍アーツ解放・・・・貫く光ラ・ヘリュン!!!」

レヴァンは距離を取り、アーツと呼ばれるモノを発動すると光の槍が神々しく光りながら伸び・・・貫いて来た――――――


「ぐッ!!!重い・・・だが、これでお前まで一直線の道が出来た!!!

――――――クイックシフト!!!」

「私の槍を足場代わりに!何と言う・・・これが・・・グロリアの戦い方・・・見事だ。」

レヴァンは槍から駆けあがって来た俺に対して敬服し自ら負けを認めた―――――


「ムクロと言ったな・・・お前は翼や飛ぶ機構がないにもかかわらずどうして私の挑戦を受け、戦おうとした?

違う世界、まして翼をもたぬモノが私達天使の飛ぶ姿を見れば勝ち負けなどは一目瞭然・・・・なのにどうして・・・・」

「そうだな・・・・やってみないと分からない事だってあるだろ?

何でもそうだが・・・Lv差、技量、スキルの質・・・どれをとっても敵わないと思っても・・・挑んで勝つ心さえしっかり持って戦えば勝てるって、昔・・・教わったんだ。」

俺がレヴァンにそう言うと・・・レヴァンは納得したように笑い・・・空に飛んだ。


「私はあなた達を見なかった事にする。

センサーのエラーと言う事で話をするから・・・・

これ以上この世界に長居するのは止めておけ・・・・

この天世界の者は外部のモノを決して逃さない――――――」

「――――――――――・・・・・・・」

レヴァンが話し終えると同時に誰かの声が聞こえたかと思うと天から赤い光が降り落ちレヴァンを貫いていた―――――――


「がはッ!!!!これは・・・・天啓てんけい赤槍せきそう・・・・カハッ・・・

まさか・・・すでに機動天使隊が動いているとは・・・・これは一体何事だ?

――――――――!!!!!!」

「何事だ?それはこっちのセリフです・・・レヴァン部隊長・・・あなたはこの者達を逃がそうとした・・・我らの天世界に土足で踏み込んだ愚か者を消すのがアナタの役目・・・だったのに・・・

その殲滅の役目でアナタは負け、さらにこの者達の情報の隠蔽を考えた・・・だからこうして私、自らアナタに手を下したまでです・・・・ですが安心してください、アナタの役目は私が引き継ぎ・・・そこにいる3名を滅ぼしますので!!!

レヴァン隊長・・・いえ、元隊長は我らが主の元へ帰って安らかに眠っててください・・・に!!」

ジールとかいう赤い装甲を身に纏った天使は仲間であるはずのレヴァンを手にかけ・・・こちらに近づいてきた――――――


すると、致命傷を受けたはずのレヴァンは立ち上がりジールとの間に割って入って来た。


「ムクロ!!コレを持っていけ!!それを持ってればいずれが分かる・・・・・

それに、私はココで消える運命だったとしても・・・私が積み上げてきた今までの営みに後悔はない!!

だから、お前たちは元のに戻り・・・力を蓄え・・・迫り来る時に備えるんだ!!!」

「ご主人様、いきましょう・・・このチャンスを逃せばあのジールの奥に見える天使に囲まれて私達は終わってしまいます・・・・・」

「命あっての何とかじゃ・・・主殿!今のうちに退却!!!」

「レヴァン・・・お前の意思は受け取った・・・・・俺達は絶対に再びココに戻ってくるから・・・・

この天世界を・・・攻略しに――――――」

俺達はレヴァンの雄姿を目に焼き付けると・・・・振り返る事もせず、上へと続く階段を登り始めた―――――


「チッ!!逃がすかぁッ!!!追えッ!追って皆殺しにしろ!!!!」

「そうはさせん・・・・・フンッ!!!」


―――――――――がはッ!!!

―――――――ぐあッ!!!


「まだ・・・戦えたの・・・元隊長さん?」

「伊達にお前たちより長生きはしてるんだ・・・簡単にはここは通さん!!!

命が惜しのなら、こちらの線より入ってこない事だ!!!」

レヴァンは光の槍でズバっと線を描くと・・・・槍を構えて入ってくるモノを狙う態勢になっていた。


―――――――――元隊長なんざ怖くねぇ!!!うおぉぉぉぉ!!!

――――――あの人が何故、隊長か知らないのか・・・・それは・・・必槍と言う二つ名を持つからだ・・・・・・

―――――――ガハッ!!!!


「あ~らら・・・元隊長さん・・・仲間を串刺しにして・・・心は痛まないんですかァ?」

「ジール・・・これはお前が仕組んだ謀略だろう・・・・はぁはぁ・・・・お前が陰で何かをたくらんでいたと薄々は感じていたが・・・・まさか私を撃ち貫く槍を放つ事が出来るとは・・・・

お前は一体誰だ?」

「くひゃひゃひゃ・・・・バレちゃったかぁ~ジールはジールだけど私・・・体は天使・・・心は・・・・悪魔なんだよね~あひゃひゃひゃ・・・・・・

み~んな私の傀儡オモチャ・・・・意思は少しあるけど私には絶対なのよ~

だから、ホラ!!!」

ジールは何かを見せてあげるかのように腰の剣で天使の1人を斬り裂いた。


――――――――――かはッ!!!!


「こんな事をしても、誰も怒らないし、何も言わない・・・文句も何も言わない・・・最高のオモチャなのよねェ~どう?仲間をこんなにされて・・・私に穴まであけられちゃって~」

「ジール・・・お前は必ず粛清する・・・・」

「はんッ!!今のあんたにどうやられても私に傷一つ付ける事なんて出来やしないのよ・・・・」

「私がするんじゃない・・・・あの・・・意思を託したモノが・・・お前を粛正する!!!

私はココで散る事になったとしても・・・私の意思は永遠に不滅だ!!!」

レヴァンが大きく叫びジールに答えると・・・ジールは無言になり武器を構えた。


「それでもいいけど・・・私、すっごく強くなったから・・・アレじゃ勝てないよ?

その証明に私が今からアナタを消してあげちゃう――――――」

「やれるものならやってみるが―――――――――」

ジールの言葉にレヴァンが答える前にレヴァンは見えない何かに体を抉られ消滅した。


「横取りなんてズルイじゃない~私がケリを付けようとしてたのに~」

「お前は遊びが過ぎる・・・・退却だ・・・・」

腕を布で拘束された天使がそう言うと、ジールは命令を聞き受け・・・天使部隊は引き揚げていった―――――――


―――――――――――――17時56分・・・ユキシロの寝床

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