第67話 終わりと始まり
―――――――――22時45分・・・・
――――俺達は辛うじてスヴァルトの体力を削り切るものの、肝心の魔方陣と言うと・・・・・発動する段階まで来ておりスヴァルト自身も一度発動した魔方陣を解く事はできず、この滅却の理を止める手立てがなかった――――
「これでお前たちも、この世界も・・・そして私自身も終わりだな・・・・
これでやっと・・・無駄な戦いから解放される――――
そこにいるのだろ・・・この世界の女神・・・いや、姉さん――――」
「気付いていたのね・・・女神スヴァルトこの戦いの本当の勝利は、貴女のその胸に付いた結晶体から貴女自身を救済し・・・この滅却の理からこの世界を守りきった後に真の勝利があるのです―――――
―――――――このグロリアの女神・・・エステリオンの名の元に・・・汝の胸に穿たれた呪われし結晶体よ・・・其のモノの体から乖離し・・・永遠にこの世界から消滅せよ―――――」
エステリオンが消えかかったスヴァルトの胸に飛び出した結晶体を分離すると、粒子になって消滅し・・・スヴァルトの表情も穏やかになっていた―――――
「エステリオン、この魔法・・・何とかならないのか?」
「女神の力なら・・・・この魔法を――――」
「残念ですが、私はまだこのイベントに関与する事ができません。
イベントクエストの達成報告がアナウンスされていないのでアナウンスが鳴れば私の介入ができるのですが――――
ですが・・・その前に間違いなくこの魔法は発動し、この都は・・・滅ぶでしょう・・・
ムクロ・・・貴方なら今、何をすべきか・・・わかるはずです――――」
女神エステリオンはそう言うと次元の扉を開き消えて行った―――――
「あと数分であの魔方陣が発動して都が滅ぶ・・・一体どうすれば回避が・・・・」
「ムクロ君・・・最後まで諦めずに考えよ・・・こんなのが最後だなんて・・・私、嫌だから。」
「まぁ~た・・・目を話したらイチャラブですか・・・お二人さん・・・人がこれだけボロボロのボロ雑巾みたいになってロネッサに回復して貰っているっていうのに・・・・
もっと緊張感を持ちなさいっての!」
「そ、その・・・クーリアさんの回復終わったのですが・・・・」
ユリハが俺に抱きつくと、聞き覚えのある声が聞こえてきたと思えば・・・回復したクーリアがそこに立ち、クーリアの影でロネッサの姿も見えて2人とも無事であった。
「クーリア、良かった・・・・無事だったんだな。
でだ・・・急で悪いんだが・・・アレを止める手立てがないんだが・・・2人も考えるのに協力して欲しい。」
「そんなの協力するに決まってるでしょ・・・最後の最後まで足掻いて足掻くのが私達のいいところでしょ!
ロネッサも仲間なんだから・・・ビシッとしないと!」
「わ・・・私が・・・仲間・・・で・・・本当にですか!?」
「そうだよ!だって私や皆を回復してくれたでしょ?
あの時の一生懸命なロネッサの顔を見てたら私も仲間だと感じたよ。
って・・・・その話はこの魔方陣を対処した後でだね!!」
ユリハが話を本題に戻すと、俺達は天に描かれた巨大な魔方陣の中心から放たれる方向を計算すると都に形成された門から都の中心部に向けての発射となる事がわかり移動しようとすると―――――
「ムクロとやら・・・ちと・・・
その、結晶体仕業とはいえ・・・すまない事をしたな・・・
私はあちら側で異様な結晶体を身に宿したロネッサを見つけ結晶体を引き剥がそうとした際に・・・誰かに行動制限を加えられ、まんまと結晶体の仲間入りになってしまったのだ・・・・
そしてこの魔法は止める事は出来るかもしれないが・・・・必ず*******になる――――」
スヴァルトは俺を呼びとめると、今回巻き起こした騒動に謝罪を述べ・・・この魔法の回避方法を俺に伝えると、晴れ晴れした顔で消滅し・・・光の柱になって行った――――
「よし、皆行くぞ・・・・最後の防衛だ!!!」
「「「うん!!」」」
俺達は塔から街の門の前の攻撃ポイントまでテレポートアイテムを使い移動すると、近くにモブを借りつくしたライザーのメンバーやゴルバスのメンバーが空に描かれた魔方陣を眺めて休んでいた――――
「おぉッ!!!黒騎士じゃねぇか!!!まだ現役だったのかァ!!
こりゃ・・・手合わせして貰いところなんだがよ・・・あのデカイ魔方陣は何だ???」
「アレは俺達も知りたいな・・・ムクロさんよぉ~まぁ・・・細かい話は置いておいて・・・
空の
俺の恰好を見るやムクロとわかる一部のプレイヤーとわからないプレイヤーは黒騎士と呼び、ごった返しになっていると―――――
「皆、静かにッ!!!!!!」
「わぁ~ウサ耳にキンキン響いたァ・・・・・・
もぅ!ユリハ!!!叫ぶなら叫ぶって言ってよ!!!
この耳はデリケートなんだからね!!!」
「あうぅぅぅぅ・・・・・」
ユリハが場を静まらせると、俺とその場所を交代し話せる状況を作ってくれた。
「皆、まずは俺が黒騎士だとかその辺は置いておいて欲しい・・・・
この空に描かれた巨大な魔方陣はこの都を消滅させる程の破壊力を持った火力だ。
そして、女神スヴァルトは俺とユリハとそこにいるクリ―リア達と消えて行った仲間達で・・・
無事に倒す事が出来た・・・・だが、そのスヴァルトの最後に放ったこの魔法を止める事が出来なければどの道俺達の負けだ・・・だから皆・・・俺の言う案を聞いてくれ!!!」
そう言うとライザーやゴルバスは俺に命を貸してやると言い、笑いながら話を聞くと・・・作戦の内容に度肝を抜かされていた――――――
「マジか・・・・本当に俺達の体を・・・ライフを使って守るっていうのかよ・・・・・
相当にネジがぶっ飛んだ話だが・・・魔方陣が止められないんじゃ他に案も出ないだろうし
その作戦で行くしかないか―――――
おうし、そうと気まりゃありったけのアイテムと回復部隊編成だ!!」
「そうだぜぇ!!!俺たちもありったけのアイテムとバフをかけられるプレイヤーと回復できるプレイヤーを集めるんだ!!!」
ライザーとゴルバスが息を合わせ、プレイヤーに伝令を出すと辺りにいたプレイヤーが俺の話通りに事を進めるように街に戻りアイテムやプレイヤーの編成を始めていた――――
―――――いやはや・・・黒騎士の作戦だからもっと知的なのかと思いましたが・・・割とクレイジーで危険な博打屋でしたか・・・ですがその博打に私も乗らせていただこう・・・・
ベットは私の命・・・払い戻しは未知数・・・こりゃ燃えるねぇ~
――――
―――――よし、私もアイテムありったけ買いこんでくるよ!!!
――――俺も買い出し手伝うぜ!!!
――――――私らはバフをかける隊の編成だ、魔法と耐炎系で編成するんだよ!!!
「すごい、本当に・・・皆が協力してくれる!!!
これならいけるよ!!!ね・・・・ムクロ・・・君?」
「――――あ・・・・ああ!!!そうだな・・・・・」
「ムクロっち~何か隠してない?
何か悪い顔してたような気がするんだけどなぁ~
ね~ロネッサはどう思う~」
「わ・・・私はその・・・よくわからないです・・・えへへ・・・」
この作戦には皆の協力が必要で、何よりも落ちてくる落下ポイントでの対策が必要であった。
「ユリハ、皆を整列させて待機させておいてくれ。
クーリアはバフをかけたり回復と支援だ!
ロネッサもできる限り回復等の支援を頼んだ。
――――っと少し用があるから少し席をはずす・・・・(ごめん)」
「ん?―――――アレ・・・ムクロ君・・・そろそろ持ち場に付かないと・・・・それに何かムクロ君が言ったような――――」
「ユリハ~そんなに心配しなくてもムクロっちは来るから心配し過ぎなんだよ~」
「私はムクロさんに与えられた使命を・・・全うします!」
ロネッサの一言にユリハとクーリアも頷き各自、俺の指示した通りに隊列を組んで俺の帰りをまだかまだかと待っていた―――――
「黒騎士はまだかよォ・・・魔法の発動する時間はあと1分もないぞ・・・大丈夫なのか?」
「だが、ヤツが立てた作戦だ失敗するはずもない・・・これだけのバフと回復をかけられる編成に防御系で編成した盾役にアイテム係り・・・これだけの布陣だ・・・完璧すぎる。」
「ムクロ君・・・やっぱり心配だなぁ・・・・私、探しに――――」
「ちょ、ちょい・・・・ユリハ・・・待って・・・今隊を乱したらダメだよ・・・
ホラ、もう少しだけ待ってみよ?ね?」
「私も少し胸がザワザワします・・・・こんな時に不謹慎ですが・・・何か良くない事が起こりそうで――――――」
するとその瞬間に全プレイヤー共通のグループチャットが開かれ、開設主を見て見るとムクロと書かれていた―――――
「おいおい、ムクロ~何やってんだ・・・早く持ち場に――――」
「な、どうしてムクロ・・・お前・・・街の反対側の何も無い平原にいるんだ!?
まさか俺達を囮に・・・・」
「ムクロっちがそんなことするわけないでしょ!!!
ほら、ムクロっち早くこっちに戻ってきて皆で頑張ろうよ!」
「ムクロ君・・・まさか・・・嘘だよね――――
いつもの・・・ごめんって言ってよ・・・・すぐに戻るからって言ってよ・・・・」
「皆さん起動しましたよ!!魔法が出ますよ!!って!?アレッ!?魔法の軌道が変わって・・・平原の方に向かっ―――――!?」
ロネッサの発言で皆はわかってしまった・・・・
「そう言うわけだ・・・・みんな・・・俺はお前たち皆が大好きだ・・・・
だから、この先は誰も傷つけさせたりはしない。
俺がこの身に変えても全てを守る・・・・俺が消えて無くなってしまおうとも全てを守る!」
俺は魔法が落ちてくる間に何故、魔法の軌道が俺に向き・・・俺を目指して落ちてきているのかを説明した―――――
女神スヴァルトに魔法のターゲットになるアイテムを消え去る際に受け取り、ユリハ達に気づかれないようにかばんにしまい、慌ててこの作戦を考えた事を笑いながら話していると・・・グループチャットからライザー達の声が聞こえてきた。
「ムクロォ!!!お前・・・またそうやってカッコ付けやがって!!
お前となら死んでもいいと思ってたのによォ!!どうしてお前は誰かを頼ろうとしないんだよ!!!この・・・バカヤローーーー!!」
「ライザー・・・・ムクロはいつもそうだ・・・自分で囲い作って・・・・なんでも自分で解決しようとする・・・バカな奴だが・・・それに今回は俺たちを守るためだとしたら・・・文句も言えねぇ・・・
ムクロこれだけは言っておく・・・お前は馬鹿だ大馬鹿だ・・・でもな、お前には俺達以外にも大切な仲間がいる!そこで崩れている大切な仲間を見て、まだ平然と同じ事を言えるのかよ!?」
「ムクロっち・・・酷いよ・・・こんな・・・こんな大ウソ・・・最後まで信じちゃったじゃん・・・・
う・・・ううえぇぇぇぇん―――――」
「クーリア・・・・ムクロさん・・・・アナタは素晴らしい方です、どんな逆境にも負けず辛い事にも苦しい事にも過酷な事にも1人で立ち向かって・・・ですが、今のムクロさんは1人じゃないですよ・・・・全力でアナタの後を追いかけて行った方がいますから―――――」
―――――――――
――――――
――――
――
「ムクロ君ッ!!!!やっと、やっと見つけた!!!
この・・・・バカ!バカバカバカバカバカバカ!!!!!
ムクロ君のバカッ!!!!
どうして・・・私を置いて1人で行こうとするのよ―――――
こんな事して私が喜ぶとでも思ったの!?
私はね、生きてる時も消えちゃう時もムクロ君・・・あなたと一緒だから幸せなんだよ!!
だから・・・どんな時でも私はずっとムクロ君・・・あなたと一緒が良いの。
たとえ、これから世界を救うために
――――――ムクロ君・・・・愛してる。」
「ごめん・・・・ユリハ――――――
俺はユリハだけでも生きて欲しいと願った・・・・失いたくなかったんだ・・・
でも、ユリハの言葉を聞いて俺が間違いだったと気付いた・・・・
俺もユリハと共に生も死も一緒が良い・・・・・って。
だから言う・・・断ってもいいが言う・・・俺と一緒にいて欲しい。
―――――俺もユリハの事を愛してる・・・・大好きだ。」
「バカ・・・・断るわけないじゃない・・・・・消える時もずっと一緒だよ――――」
「あぁ・・・ずっと一緒だ――――――」
すると、空から魔法が降り落ち辺りに轟々と音を立て――――
最後の最後の瞬間・・・・魔法が俺達のいる地に着弾し、辺り一面に激しい閃光を放ちながら辺りを消滅させた――――消えかけの体を手繰り寄せ、俺達は抱き合いキスをすると・・・
イベントクエストのクリアのアナウンスが鳴り響いた―――――
―――――――
報酬はこの後の超大型メンテナンス終了後に自動でBOXに送られますのでお楽しみに!!!
そして、今回の健闘賞は参加した皆さんです!!!
そしてそしてぇ~VIP・・・もっとも多大な貢献をしたプレイヤーはムクロ&ユリハ~~~パチパチパチ~
皆さん本当にお疲れ様でした!!!!
これより10分後に超大型メンテナンスが開始されますので、各自ログアウトをお願いしま~す。
メンテナンス開始1分前には強制ログアウトされますのでお気をつけください。
その他、細かな詳細は公式サイトをご参照ください・・・・
それでは本当にお疲れ様でした~
――――――アナウンスが全グロリア領域に伝わると、参加したプレイヤーは大きく歓声を上げ喜んでいたのだが・・・・
「ムクロっち・・・ユリハぁ・・・・2人がいなくなっちゃったら私はどうしたらいいんだよ・・・・」
「・・・・・・・・」
ロネッサはかける言葉もなく、ただ・・・クーリアを抱いて泣き止むまで待つしかなかった。
―――――――――――――
――――――――――
―――――――
――――
―――――――――?????
「んん・・・・・ここは・・・・ん?
ユリハ?・・・・どうして・・・俺達はあの魔法で消滅したはず・・・・」
「ん・・・・ムクロ君?
ここは一体――――――」
俺とユリハが目覚めた場所は何も無い・・・ただ何も無い空白な空間・・・・地も空も何も無いただの白く光る空間・・・・・
俺たちは立ち上がると、何処からともなく声が聞こえてきた―――――
「おはよう・・・グロリアを救いし者・・・ムクロ・・・ユリハ・・・・
今はただ多くの事を疑問に思う事だろう、どうして自分達はこうやって意識があり体が消えていないのか―――――
まずは自己紹介から始めよう・・・私はこの世界の・・・コア・・・名前も簡潔にコアと呼んでくれ
そして私はこの世界全ての
すなわち、君達のようなプレイヤーから何もかも森羅万象全てを記憶し記録する――――」
「だから俺たちの体もデータも全てがこのままなのか・・・・」|
「でも、私達をここに呼び出したワケって・・・一体――――」
ユリハが心配そうな顔をしながら話すとコアがさらに話を続けた――――
「そんなに心配しなくていい。
ユリハやムクロ・・・この戦争で多くのプレイヤーが傷つき消滅した・・・・
それは私の望んだ
「つまり、要約すると俺やユリハ・・・やられた皆や今生きてる皆がLv1からやり直すって事か・・・・・」
「でも、まだ・・・私たちがここに呼ばれた理由をコアから話してもらっていないです。」
ユリハのその回答を待っていたかのようにコアがすぐさま話を切り出してきた。
「そう、私がムクロとユリハを此処へ呼んだ理由だったな。
それは私の出した答えが正しいものかを判断してもらうため・・・・と、言いたいところだが・・・そんなことはオマケだ――――――
真実は君たちに会いたくなったからだ・・・今まで見てきたこの世界の記憶と記録の中では君達のように最後まで、本当に消える一瞬まで互いを信じる絆を持ったプレイヤーを見た事が無かった・・・私のAIも完全ではない・・・だから、この抑えられない感情をムクロとユリハと話す事できっかけができればと思って呼んだのだ。」
「俺達の絆・・・・・俺にとってユリハは何よりも大切な人だからな。」
「む・・・ムクロ君!そんなこと急に言ったら・・・その・・・恥ずかしいよ――――」
ユリハは俺の発言に対してもじもじした様子で話していたが・・・・
「でも・・・・私にとっても、ムクロ君はとっても大切な人です。」
「そうか・・・2人の話を見て聞いているとそうだな・・・少しわかった気がする・・・同じ様に生き、同じように苦楽を歩んだからこそ作り得た絆・・・・私はムクロとユリハに出会えてよかった―――――
――――――――そして・・・・これから君達はどうしたい?」
「俺はすでに消えた存在だ・・・・辛うじてここにあるだけの幽霊と同じだ・・・だが――――
もし仮に、この俺でも願えるのなら・・・また、皆とグロリアをプレイしたいッ!」
「ムクロ君・・・・そうだよ・・・私達まだやってない事がたっくさんあるんだよ!!
皆と勝利の宴会も・・・まだまだ色々沢山・・・・だからムクロ君・・・グロリアに・・・私達のいた世界に戻ろう!!!」
俺は最後の最後でコアの問いかけに感情を抑える事が出来ず、涙を流しながら世界に、グロリアに戻りたいと願うと・・・ユリハがそっと俺の手を握り、世界に戻る事を話すと――――
「そうか・・・まだ歩みが止まらない冒険者よ!!!
その先に何を見るのか、私も楽しみにしている・・・・
そう、この世界は無限だ!!行き止まりが無い世界だ!
私は全てを記憶し記録する・・・・過去も未来も全て見届けよう・・・・
君達の栄光は再び始まりだす!!!さぁ・・・行くが良い――――
絆を深めし者達よ・・・・この先に待つ永遠の冒険をその心と体に宿して――――――」
――――――では、さらばだ・・・冒険者よ・・・2人に・・・全てのプレイヤーに幸あれ・・・・・
そして俺は現実に戻ってくると、メール欄を開きグロリアの大型メンテナンス開始の通告メールを読んでいると・・・・グループチャットの件数がすごい事になっている事に気付くと内容に目を通し始めた―――――
――――――――23時22分・・・・・自室
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