第64話 真実
―――――――――21時34分・・・・
ゴーレムの群を抜けて数分、俺たちはモブと殆ど出会う事無く塔の中に辿り着いた。
この塔はあちら側の世界から持ってこられたのか、一部の部屋や壁が捩じ切れており階段との面がおかしな切り口をしていた―――――
「よし、皆ここから上に登って女神を停止させる事が出来れば俺達の勝ちだ。
気を引き締めて行くぞ!」
「あぁ・・・女神を停止させこの世界を救おう。」
「その前にバフかけちゃうね!WステータスUP!!」
「ここからが本当の・・・戦いが始まるんだね・・・援護は任せて!」
クーリアのバフがかけ終わり、階段を上って行くと大きな広間に繋がっておりそこにアイツがいた―――――
「いらっしゃい~やぁやぁ・・・1,2,3,4とお揃いで・・・・
今回の戦争イベントもそろそろ終盤・・・残るプレイヤーは私だけ、本命の女神サマはこの上・・・残念なんですが・・・ここで皆さんには、消えちゃってもらえませんかねぇ?」
広場の真ん中にはロネッサが1人で立っていたのだが・・・明らかに様子がおかしかった・・・
ロネッサ自体は基本的にネクロマンサーの能力でスケルトンや死霊系のモブを使った戦略が多かったのだが何故かネクロマンサーのスキルやスペルを使用する素振りを見せるのではなく魔導書を持ち魔法を撃ってきた―――――
「マジックガード!!!」
「くッ・・・・ナイス、クーリア!!」
「だが、ロネッサお得意のネクロマンスを使わないのはなぜだ・・・・」
「そうだね、前回のように呼びだして戦うのかと思えばまるで別人の戦いだよね。」
クーリアの魔法障壁によりロネッサの魔法攻撃は弾かれ壁などに着弾し大きな爆発をしたもののダメージを受ける事はなかったのだが・・・・
「私がどうしてネクロマンスをしないのかすごくすご~く不思議そうな顔をしてますね~~
それはですねぇ~~あのゴーレムや死霊系の大軍は私1人のスキルで呼び出したのですよぉ?そりゃ~この世界での呼び出し制限と言うモノがかかっちゃうワケで~~
今はアリの子1匹でさえ召喚できませんとも~召喚は・・・ね・・・・
だったら何で戦うか・・・それは困ったなぁ~でも御安心を~これはプレイヤーの限界というもの・・・ですが私の力はここからが真骨頂なのですからぁ~さて、長い話も終わりにして・・・
始めましょうか―――――死の宴を・・・・」
ロネッサは両手のナイフを自分に突き刺しながら自分の体力をドンドンと減らして行く・・・・
その光景はどこかで見た事のある光景―――――
「うぇ・・・あれって・・・ムクロっちが昔やってた・・・再臨能力的なヤツじゃ・・・・」
「だが、あの能力はこの世界にムクロしか持っていない能力の筈だ・・・まさか、あちらの世界にも類似した能力があるとでも言うのか!?」
「だが、同じ
「でもあれは・・・見ていてすごく悲しい・・・」
皆がロネッサに注意しながら見ていると、遂にロネッサの体力が尽き・・・・ロネッサの体に異変が起こった―――――
「ひゃはははははは・・・・キタキタキタキタキタ!!!来たッ!!!
これが私の真の姿・・・そして私が女神から貰った・・・そこにいるムクロに近いスキル・・・
ロネッサの胸のあたりからスキルにより新たな姿と変貌を遂げた新生のロネッサが飛び出してきた――――
その姿はサキュバスのような格好で、前回のロネッサとはまるで見た目もステータスも常軌を逸していた。
「これが・・・・あの時の腕の正体・・・・・・こりゃ魔人クラスだな・・・・
皆、注意しろよ・・・コイツは強いぞ――――」
「だろうな・・・このロネッサから放たれる禍々しさは今までのモブやプレイヤーの中で一番危険なにおいがするぞ・・・・」
「でも、私達の連携なら・・・いけるはず!!
そうと決まれば、WステータスUP!!!」
クーリアがバフをかけると、ロネッサが不敵な笑みを浮かべていた・・・・
「いまさら貴方たちがどうこうしても意味ないと思うんだけどなぁ~
だってそこにいるムクロでもない限り私と戦い合えないよぉ?
そこんとこわかってるかなぁ~」
ロネッサが良い気で話しているとミストとユリハが斬りかかり、クーリアがアイスレインを見舞うとロネッサの強さが別格だと言う事がわかった―――――
「なッ!?・・・・かはッ・・・・・物理障壁・・・だと!?」
「硬いッ!!!――――く・・・剣を掴まれて離れられない・・・・」
「アイスレインも全く聞いてない!?
あれれ・・・どうしよ・・・・ムクロっち・・・・」
「皆、ここは俺にやらせてくれ・・・・皆は色々あって疲れてるだろ?
ここは俺が良いとこ見せないとな。
エリの為にも・・・・」
「そうこなくちゃ~こんな弱いの倒しても私も経験値なんて入らないし・・・・
それに、両腕の借りも返したいしね・・・・アレ、痛かったんだよ~
両腕が無くなる感じわかる?
わからないよね・・・だったら・・・体験させるしかないよねぇ!!!!」
ロネッサは両手に掴んだミストとユリハを壁まで放り投げると、一瞬で俺まで距離を詰め両腕を狙って攻撃を仕掛けてきた。
「さすがねぇ~本当にあなたって・・・バケモノね。」
「良く言われる・・・・だが、今のお前には言われたくないけどなッ!!!ハァッ!!!」
「ぐッ・・・・・腕で飛ばされただけでこの威力か・・・」
「あいたたた・・・ムクロ君の援護に行かないと――――」
「でも、コレ・・・私達の入りこめる戦いなのかな?」
ユリハ達は立ち上がると、ムクロとロネッサの戦いを見て入りこめる機会を探していたがどう考えても動きが普通の動きではなく、付け入るすきがなく見ていることしかできずにいた。
「あはははははは、すごいよぉ!もっと私に本気になってよ!!!
もっともっともっとだよぉ~~~もっと一緒に早く・・・なろぉ!!」
「――――ごちゃごちゃごちゃごちゃ黙って戦えないのかよ・・・・
そんなに早くしたいのなら・・・やってやるよ―――――
―――――クイックシフト・・・・・」
俺は速さを上げている状態でクイックシフトを使用すると、ロネッサが対応できないくらいの速さになっていた―――――
「ムクロの速さは・・・・底がないのか・・・・
私の光速よりも早いんじゃないのか――――」
「ムクロ君・・・すごい・・・・あれが・・・ムクロ君の実力――――」
「ほえ~~ムクロっちログアウトしたとかじゃないよね・・・・・
あそこにいるんだよね?」
「クソッ!!!私だって・・・・まだまだ早くなれるんだよぉ!!!
ひゃははははははは!!!!!」
ロネッサは俺に追いつくために更にスキルを乱用しスピードを上げたのだが、俺の姿を捕える事が出来ずにいた―――――
「遅いな・・・・俺は・・・・ココだッ!!!ハァ!!!」
「グハッ!!!・・・・貴方は本当にムカツク・・・・ガッ!!!!!――――――ナニッ・・・カラダガ・・・・・・」
「―――――ハァ・・・ロネッサには失望しました・・・これだけ恩恵を与えてもムクロの1人も倒せないなんて・・・・貴方は本当にダメな
聞き覚えのある声が何処からともなく聞こえたかと思えば、女神スヴァルトが天井を突き破って降りてきた――――――
女神スヴァルトが降りてきたと知るとロネッサから離れ、ユリハ達と合流して目を凝らして見て見ると先程からロネッサの体がピクリとも動かずに固定されているようで――――
「女神スヴァルト直々に降りてくるとは・・・一体どんなイベントが起こるって言うんだ―――」
「なッ!?・・・・女神が降りてきた・・・だと――――」
「これが・・・女神・・・・スヴァルト――――」
「ムクロ君!これが・・・・・あちら側の女神・・・女神スヴァルト・・・・」
「グググ・・・体が・・・スヴァルト!!何をした!?・・・・私を裏切るのか!?」
女神スヴァルトはクスクス笑いながら身動きのできなくなったロネッサに近づきロネッサの体についている結晶体を引き千切り、その結晶体を飲み込むと―――――
「さぁ・・・これで準備は整った・・・早く上がっていらっしゃい・・・・最後の戦いを始めましょ。
フフフあはははははははは・・・・・・」
スヴァルトは手をペロリと舐め、笑いながら塔の最上階へと消えて行った――――
「むごい・・・うぇ・・・これがあちら側のやり方って事なのかな・・・・」
「そうだな、これではあまりにもロネッサが浮かばれんな・・・」
「どうして、こんなこと・・・ロネッサ達は仲間じゃなかったの?」
「ロネッサの息がある!!―――――おい、ロネッサ・・・生きてるか?」
「う・・・・うぅ・・・・私は・・・一体・・・・ヒッ!!男の人!?!?!?!?」
駆け寄ったロネッサは先程まで凄い格好で戦っていたロネッサではなく、ネクロマンサーのロネッサの姿に戻っていた・・・・
そして、その言動や態度までが何かから解き放たれたかのように可憐で少女のようなリアクションであった。
「ちょっとムクロ君、ダメだよ・・・驚かせちゃ・・・そのロネッサさん・・・アナタは今この状況がわかりますか?」
「いいえ・・・その、私は一体何を・・・ここは一体・・・・」
「本当に何も覚えていない顔だな・・・それに言動まで――――」
「そうだね、一体何がどうなって・・・・」
ユリハや皆も困り果てる中、次元の彼方からルミ子が現れた――――
「変態マスター、特殊なケースでお困りのようなので女神エステリオンからの情報提供がございますがお聞きになられますか?」
「あぁ、頼むよ。」
「それでは・・・コホン・・・・
まず、このロネッサはあの結晶体を埋め込まれ女神スヴァルトに新たな人格を与えられて今まで戦っていたということ・・・・そして、あの結晶体は調べた結果、謎の組織で開発されている脳内に負荷を与え脳波の信号パターンを書き換え、人格すら歪め・・・個人の支配をしてしまう恐ろしい装置だと言う事・・・これは軍事的に仕掛けられたテスト行為だと言う事が考えられます。
もし仮にこれが広まりでもすれば大変な事態になる事は必須・・・ですからマスター達は一刻も早くあの女神スヴァルトの機能を停止か降伏させ、このイベント事態の終結が求められます。・・・・・・これが女神エステリオンからの提供情です。
それでは御検討をお祈りしております―――――」
ルミ子はさらっと重要な事を話して次元の彼方へと消えて行ってしまった・・・・・
「そう言う事だったのか・・・これでロネッサの人格や言動が変わった事もうなずけるな。」
「ロネッサさんも被害者って事だね・・・・」
「それにしてもこんな事をして一体何を考えて・・・・」
「その・・・あの結晶体についてなんですが・・・アレを導入したのは私なんです・・・・
ゲームを始めて数日たったある日、差出人不明のUSBが封筒で送られてきて・・・
文章ではご当選されていた商品とか書いてあってそのUSBを開いて起動すると、そこから意識がおかしくなって現在に至ると言うわけなんです・・・本当にごめんなさい。」
ロネッサは自分が全ての元凶だと話すが理由を聞くとどうもその謎のUSBを送りつけてきた本元が何かをたくらんだ結果が現状と言う事がわかり、ひとまずロネッサを連れて最上階を目指しながら歩いていると・・・・
「うっすらとした記憶なんですが、あの結晶体を取られる瞬間・・・私の中の何かが抜けた事で今の私の人格が戻ったと言う事は・・・女神スヴァルトに結晶体の人格になっている可能背があるような気がして・・・・・その間違ってたらごめんなさい・・・・」
「だが、そうなっていてもおかしくはないな・・・」
「私も同じことを考えてたよ・・・・でもそうなってたらイヤだなぁ・・・・」
「そうだね、あの凶暴性と残虐性がそのまま女神に入ったとしたら・・・想像もしたくないよね・・・・」
「つべこべ言ってる間に最上階に付いたけど・・・・本当にロネッサも付いてくるのか?
負けるとデータ全損・・・それでも付いてくるのか?」
最上階への扉が目の前に現れ、ロネッサにこの先も一緒に行くかどうかを尋ねるとロネッサは自分がまいた種は自分で処理をするといい退く気はなさそうで、俺は大きな扉を開くとそこにはドレス姿の女神スヴァルトが大きな座に腰掛け待ち構えていた―――――――
―――――――――21時56分・・・・女神の間・・・
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