第61話 全力の削り合い
――――――――19時43分・・・・・
「片腕を犠牲に生存したか・・・だが、あの面構え・・・普通じゃない――――」
「ホンマにホンマに面白いわぁ~こんなにも興奮したのは初めてかもなぁ・・・・
仕方ないなぁ・・・ウチも本気の本気見せたるわ―――――
舞は終わり・・・花は散り・・・残るは無念と誇りだけ・・・全て吸いつくそか・・・
サクラが残った片腕を前に掲げると地面に突き刺さっていた刀が異彩を放ちながらサクラの目の前に降って来ていた――――――
「何だ・・・最初に見た時よりも禍々しい圧―――それに形も異様な形に・・・」
「さすがやなぁ~そうやで・・・ミストはんの考え通りや――――この刀はモブやプレイヤーの命を吸って吸って・・・おっきく強く・・・育つんやで~ふふふ・・・この地に突き刺しておいたのもそのためなんや~~~
サクラが目の前に突き刺さった異様な形をした刀を引き抜くと、サクラの纏うオーラがドス黒くなり・・・片目が黒く変色し、失った左腕の部分に鋭い爪の生えた黒い腕が生えていた――――――
「あはは~この腕・・・すごく馴染んで気分最高やぁ―――――
この刀も・・・こちらで進化して・・・キレキレやわぁ~
ほな・・・始めよか―――――」
「サクラの全力と私の全力・・・どちらが上か―――いざ参る!!!ハァッ!!」
ミストは光の剣を振り抜き、衝撃波を放つが・・・サクラは黒い左腕で掴むように弾くと、ニヤリと笑みを浮かべながら右手に持った刀で鋭い突き攻撃をミストに見舞った―――――
「ぐ・・・ぐぅ・・・ぐぐぐ・・・・何と言う対応力――――それに武器によるステータスUPが凄まじいのか・・・・攻防は大体互角!!」
「せやなぁ~スピードはややミストはんの方が上・・・でもパワーと回避性能とかは・・・ウチのが上やろうかなぁ―――――」
サクラはそう言いながら一度距離を取り下駄をカンカンと鳴らし、体の調子を再度確認しながらミストの方をくるりと回って見るとそこにはミストの姿はなく―――
「ハァッ!!!!」
「ッ!?・・・・そこやァ!!!」
ミストはサクラが反応するよりも早く光速で移動し、サクラの足と腕を狙いながら衝撃波と剣の合わせ技で攻撃したのだが――――
「不意打ちなんて酷いなぁ~」
「なッ!?・・・ガハッ!・・・捨て身の反撃・・・か――――」
サクラの左足と右腕は見事に攻撃が入ったのだが、サクラの黒い左腕がミストの腹に深く抉り込んでいた。
「ウチなぁ・・・我慢強いというか勝利に対して貪欲やから・・・
腕や足が飛ばされようが最後に奪うもんを奪ったモノが勝ちで生きているんよなぁ~―――――ガハッ・・・・ミストはんも・・・仕込んでたんやな――――ホンマ・・・抜け目ないなぁ・・・」
サクラの左腕がミストの腹を抉り勝利を確信したように語るが・・・気付くとじんわりとにじむ痛みが左側から伝わり・・・サクラの左胸にはミストの双剣の片割れが突き刺さり背を貫いていた―――――
「がはッ!!・・・・これで私の勝ちだ・・・はぁはぁ――――」
「まだや・・・まだ、まだまだまだまだ・・・終わりにしたくない!!
こんなに楽しい戦い・・・こんなに早く幕引きにするなんて嫌や!!」
ミストが抉られた腹を抑えながら後ろにジャンプして距離を取り光の剣を解除し、双剣の片割れに戻すとサクラもフラフラとしながら突き刺さった刀を抜く事もせずに刀を構えていた―――――
「ミストはん・・・この一撃で・・・がはがはッ・・・決着つけよか・・・」
「いいだろう・・・はぁはぁ・・・ぐッ・・・・最後くらいはサクラの誘いに乗ってやろう!!」
「「はぁッ!!!!!」」
その掛け声の一瞬・・・・ミストとサクラは互いに居合を抜き終わり、互いに背を向けていた―――――
「あはは・・・ホンマにミストはんは最後まで手加減ないなぁ・・・・
でもウチ・・・今回のこの戦いでミストはんに惚れてもたわぁ~
――――がはっ・・・・ホンマにこの世界には果てがないなぁ・・・・」
「あぁ・・・この世界には本当に果てがない・・・それは私もつくづく考えさせられる、同じ世界で出会えていたのなら・・・いい友になれたのにな――――」
「せやなぁ・・・ウチもミストはんとならトモダチになってもいいかもなぁ・・・
でも、それもこれでしまいやわ・・・ウチは負けた・・・だから――――ただ消えるのみや、ミストはん・・・最後の最後まで・・・本気で戦ってくれて、おおきにな――――」
ミストはサクラの最後の言葉を聞くとコクリと頷くとサクラは消滅して光の柱になり消えていった――――――
「こちらこそだ・・・・またどこかで出会えるといいな・・・・サクラ――――」
サクラが消滅したことでクエストの指定プレイヤーマークがまた一人分黒く塗りつぶされ、残る相手のプレイヤーは2人になっていた。
「少し深手を負ってしまったが・・・何とか移動はできるな・・・クーリア、エリエント・・・すぐに向かうから・・・無事でいてくれよ――――」
ミストは町に向かうモブのいる方向に移動しながらクーリアたちと合流するために移動を開始した。
―――――――ライザーと仲間の防衛戦線・・・・
「おいおい、コイツら少しは減ったがよぉ・・・・俺たちのギルドも他のプレイヤーも大分やられてるが状況はどうだ?ぐあッ!!」
―――――ライザーよそ見しないで!!!
―――――伝令班からの通達によると・・・こちらのギルドは5名
―――――そんなに・・・やられちゃったのか・・・・でも消えちゃっても私たちは絶対にあきらめない!!!
―――――そうだぜ、仲間の死を無駄にしないためにも・・・ここは絶対に通さねぇ!!
「やっと・・・たどり着いたぁ~みんなお待たせ!!
信号弾の合図で戻ってきたよって・・・ムクロっちたちがまだってことは・・・・戦っているのかな!?どうしよう!?」
「おいおい、クーリア落ち着きなって・・・ムクロは大した男だよ。
あんなに強い奴が簡単にやられたりするはずがないだろ?
それに・・・クーリアと一緒にいた・・・エリエントとかいう
「ぐッ・・・・それは――――」
――――――もぅッ!!!団長のバカ!こういうのは察してあげないと!!
ごめんね、ウチの団長が気使えなくて・・・でもね、クーリア・・・だっけ?
その子の分も今は生きて生きて・・・今を戦わないとね!!
それがその子があなたに託した思いなのなら・・・って、偉そうなこと言ってごめんね・・・私も仲間がロストしちゃって悲しかっただけだから気にしないで・・・
クーリアはその一言を聞くと、涙があふれ出し強く目を拭うと強く杖を握りしめ全力で近くにいるプレイヤーにバフをかけ始めた。
「ライザーもそこの人もありがとう・・・・元気でたから、私もじゃんじゃんバフかけちゃうよ!!!
「へっ・・・強がりもいいが・・・無理はするなよ・・・・
お前にはまだ、ここにいる皆がいるんだからな!」
―――――団長~やっと少しはましなことが言えるようになったね~
もしかしてクーリアに惚れちゃったのぉ??
――――へっ違いねぇ・・・団長がこんなこと言う次の日は
ライザーのフォローがギルドメンバーには求愛に聞こえたらしいが、クーリアはただひたすらにバフをかけ続け、話を聞く程の余裕がなかった―――――
そして、逆の方向からモブをズバズバと切り裂きながらボロボロになりながらミストが歩いて戻ってきた――――
「はぁはぁ・・・・クーリアにライザーか・・・やっと戻ってこられたのか――――久々に少し疲れたぞ―――――」
「ミスト!?すごいボロボロじゃない・・・・まさか2人目を倒したのってミストなの!?」
「あぁ・・・そうだ・・・土産話を聞かせてやりたいところだが・・・このモブの群れからの逆相は骨が折れてな―――すまないが少し回復してもらえると助かる。」
クーリアはハッとしながら立ち上がり、ミストに全力で回復の呪文とバフをかけてミストの体を完全に回復させた。
「ありがとうクーリア・・・ところで・・・PTにもエリの様子が見えないが――――」
「うん・・・ミストならわかってると思うけど・・・あの大爆発・・・きっと敵側のプレイヤーと相打ちになったんだと思う・・・私は戦いの邪魔になるからライザーと合流しろって言われて・・・エリを・・・見殺しに・・・うぇ・・うう・・・」
「そうか・・・そんなことが・・・エリがクーリアを逃がしたのはクーリアが邪魔だったからじゃない、きっとこれから先にクーリアの力が必要になるから逃がしたんだと私は思うぞ、だから――――そんなに泣かなくていい・・・」
ミストが優しくクーリアを抱きしめるとさらに大きく泣き始めた。
「おう、ミストか・・・あっちはどうだった?
遊撃してたのはお前だけだから戦況的にどんな感じだ?」
「そう質問攻めにするな、少しずつ答えるから・・・
まず、あっち側は敵は魔法の余波と私の遊撃で多少は削れている状況だ。
戦況は敵側のプレイヤー2名を倒しているが、こちらも少し犠牲を出しすぎている。
この状況の判断もムクロに尋ねたいところだが、例の信号弾を使ったことから考えると何かしらのイレギュラーが起こったか何かと戦っているのだろうな。」
ミストはライザーにそう伝えるとライザーはギルドの伝令役にこの戦場にいるプレイヤーに伝えるように言いつけ戦線に戻っていった―――――
――――――――20時12分・・・・最前線
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