第57話 それぞれの戦い

―――――――――18時4分・・・・・


俺は剣を構え直しロネッサの動きを窺っていると―――――


「そろそろ・・・・始まるよ・・・楽しい楽しい殺戮ショーが・・・きゃははは――――」

「さっきの話の事か・・・・いちいち廻りくどい作戦だな・・・」

すると・・・ロネッサが遠くを見つめている先で大きな爆発が起こり、爆発の中心には1本の大きな刀が突き刺さっていた―――――


――――――な、なんだこりゃ・・・ゴーレムが急に爆発したぞ!?

―――――コレってレアドロップですかね?

―――――俺がいっただき・・・・・っへ?


「そいつに触れるんじゃねぇ!!!罠だ!!!」

ライザーの叫びが虚しく響く中・・・1人のプレイヤーが大きな刀に触れようとした瞬間に出来事が起こった―――――


―――――――ウチの大切な宝物に・・・汚い手で・・・触らへんでもらえるやろか?


フィールドに響く、京なまりの口調・・・・・そして、その京の言葉を使うプレイヤーは・・・・大きな刀に触れようとしたプレイヤーを一瞬で斬り伏せていた・・・・・


―――――――っがは!?・・・一体・・・何が・・・・ガハッ・・・・


「まだ、いきてますん?

案外、こちらのプレイヤーはんもタフなんやね・・・・

これなら・・・少しくらいは遊んでもかまへんやろか――――」

そう言うと、そのプレイヤーは斬り伏せたプレイヤーの体にドスドスと刀で遊ぶかのように突き刺しながら笑っていた――――――

刺されたプレイヤーの体力が尽きるまで・・・何度も何度も何度も何度も・・・悲鳴や苦痛で歪む顔を見て遊ぶのではなく・・・・ただ刺して刺しまくった遊んでいる子供のような無邪気な笑顔が逆にいびつにしか見えなかった・・・・・


「始まった始まった・・・・血塗れたサクラちゃん・・・あぁ・・・ステキだよぉ・・・」

「これがお前のやり方か・・・実にくだらねぇ・・・お前たちも負けるとデータが消える事に恐怖とか相手に対しての憐れみの感情とかないのか?」

「きゃはは、何をいまさら・・・私にそういった感情があると思ったの?

心で語っても仕方ないよ・・・ホラ、私たちも潰し合おうよ・・・さっきの・・・ユリハよりも激しいプレイをしてあげるからサ~~

死人たちのための楽園デッドマンズ・ワンダーランド!!!」

ロネッサの顔が少し変わり・・・スキルを使ったのか・・・地面に魔方陣が現れ・・・大量のスケルトンが現れた――――――


「また、これか・・・こんなの・・・俺に対応できると思ってるのか?

――――クイックシフト+ホーリーエンチャント!!!」

俺は一瞬にしてロネッサの視界から消えると・・・スケルトンに無数の剣撃を叩き込みながらロネッサの背後を取った―――――


「ははぁ~ん、これでチェックとか言いたいのぉ??

まだまだ甘いよ~その勢いで・・・刺せないとアナタのライフが先に消えちゃうよ~

それとも大切な仲間が1人また1人・・・消えちゃうかもね~~きゃははは~~~

――――――っグ!?・・・ナニ・・・この痛みは・・・・な・・・なななな・・・・

何で私の腕がぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」

「お前の両腕は絶たせてもらった・・・・恐怖や感情を持たないのなら・・・・お前はただのモブやテクスチャーを張った塊に過ぎない!!」

俺の話を聞くよりもロネッサは自分の両腕が落ちている事に激怒していた・・・・

そして・・・ロネッサは電池が切れたかのように・・・・動きが止まった―――――


「くひゃはははははは・・・・すごいすごい・・・腕が落ちちゃった事さえも気付かせない程かぁ・・・こりゃ・・・死神にでもなっちゃえばいいんじゃない?

就職先決まって良かったね~でもね・・・私の腕を落としちゃった所までは褒めてあげるよ・・・・でもね・・・命を断てないようじゃ・・・・ムクロ・・・あんたもまだまだって事なんだよ!」

ロネッサの目が急に光ったと思えば・・・ロネッサの胸の部分から何か良くないモノが両腕を掴み上げ・・・ロネッサの傷口に腕を差し込み瞬時に統合していた―――――


「くひゃははは・・・さっきの現象に驚いている様子だねぇ・・・・アレはこちらの世界にはない・・・・自己修復の極地のような芸当と思ってくれていいよ・・・・でも・・・ムクロ・・・アナタは知りすぎちゃったのよね~私のこの・・・胸から飛び出した・・・腕の秘密をね・・・」

「さっきからごちゃごちゃと・・・お前のその妙な腕と繋がった腕2本でまだやり合おうっていうのか?」

「そうだなぁ~やり合っても良いんだけど・・・・どうせなら面白い方が良いでしょ~

だから・・・私は一度・・・塔に戻って作戦報告して来なくっちゃ・・・・

そう言う事で・・・バイバイ~~」

ロネッサが胸から飛び出した謎の腕で手を振ると・・・黒い裂け目が現れ消えて行った・・・・


「くそ・・・・また今度ってか・・・ユリハ達の所に合流しないとな・・・

あと3人あの群れの中に混ざってるとなると面倒だし・・・クイックシフト!!!」

俺は仕方なくロネッサを見逃し・・・先程戻って行ったユリハを追いかけて加速した――――


「あ~あ・・・体力が無くなりはったんやね・・・・

儚く消えていってしもうて・・・でも・・・目の前にはたくさんの刺し甲斐のある人らで溢れかえってるし・・・どれにするか迷うわぁ~」

「どれもこれもないぞ・・・・お前のような外道は私が切り崩してやろう!!」

「そこそこに・・・腕が立ちそうやね・・・そやった、ウチの自己紹介がまだやったなぁ~

ウチの名前は・・・サクラ・・・あちら側ではこう呼ばれてたんよ・・・血染めのサクラって・・・・」

サクラが二つ名を言い終わると同時にミストに強烈な突きを放つが――――――


「中々に鍛えこまれた猛者・・・と言うやつか・・・外道さがなければいい関係になれていただろうに・・・・勿体ない・・・実にもったいない・・・私の名前もついでだ・・・教えておいてやろう。

私の名はミスト・・・双剣使いのミストだ!!」

ミストはサクラの強烈な突きを双剣で防ぎ、お返しにと自分の名前を言いながら自慢のアークブレイクをサクラに見舞った――――――


「ミストはん・・・中々やりよるなぁ~惚れ惚れしそうになるわぁ~

でも・・・まで耐えられるやろか・・・・見せてもらおか―――――」

ミストのアークブレイクをひらりと避け・・・距離を取ると、サクラは不敵な笑みを浮かべながら刀を持っていない片方の腕を伸ばし桜の花びらが舞い始め・・・桜の舞終わるとそこには、薄紅色をした刀が握られていた。


「なんだ・・・その異様なスキル・・・それがサクラの世界のユニークスキルか!

実に美しいが・・・これで・・・剣の数は・・・タイ!!」

「そうやろか・・・・ちゃんと周りを見た方がええで?

やないと・・・死ぬさかいにな―――――

――――初手の舞・・・刀吹雪かたなふぶき

サクラに言われミストが辺りに目をやると・・・先程までにはなかった謎の刀が地面に4本突き刺さっていた・・・・

そして、その異様な光景をミストが察知すると・・・サクラがニヤリとした瞬間・・・周りに突き刺さっていた剣がミストに向かって牙を剥いた――――――


「何のッ!・・・これしきッ!!!

くッ・・・・一撃・・・かすったか・・・・だが、全然問題ない!!」

「上出来、上出来~ほんまに・・・ウチを興奮させるのが上手いな~

この初手の舞を凌いだのは名人目やろかぁ~ホンマに凄いわぁ~」

サクラは手をぱちぱちさせながらミストを褒めると・・・・サクラは更にスキルを使ったのか・・・桜の花が舞い踊り、辺りには6本の刀が突き刺さっていた。


「今度の弐の手の舞はどうやろかぁ~

さぁさぁ・・・どんどんいくえ~

弐の手の舞・・・蓮華散々れんげさんざん

「これではキリがない・・・・私もそろそろ・・・・技を見せるとしよう・・・

鋼刃一体こうじんいったい二刀統一にとうとういつ!!」

ミストは刀が飛んでくる前に、自分で身に付けたスキルを発動し・・・体が少し鉄のように光り始め・・・サクラの繰り出す6本の刀の舞がミストを襲った――――


「手応えはあったんやけどなぁ・・・ミストはん・・・やはりやりおりますなぁ~」

「ははははは・・・弐の手の舞・・・やぶれたり!!!」

6本の刀はミストが双剣でガードしながら驚異的な筋力増強により飛んで来ていた刀を全て叩き砕いていた・・・・良く見ると、ミストの体も少し鈍く光り・・・・2つの刀はずの刀身は見た事のない形の長剣の一振りの刀に姿を変えていた―――――


―――――――18時34分・・・・・・

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る