第55話 戦争開始まで数分

―――――――――16時55分・・・・プライベートルーム


クーリアと俺の寝室でのやり取りを皆が気になっていたが、クーリアから話してはいけないというアイコンタクトが飛んで来ていて、何も言えない状況で――――


「まぁ・・・何も無かったから大丈夫だ・・・

俺の事は信じられないか?」

「いや、ムクロの事は信じてはいるが・・・その、なんだ・・・・

クーリアの態度から見ると何かあったと言って間違いがないくらい怪しいのだが――――」

「そうですね・・・私が見たところ体温が異常に上がっている傾向にあります・・・・

コレは何かを隠している時の傾向と酷似しています。」

「でも、言いたくなかったら言わなくても大丈夫だよ。

私にも・・・そう言う時あるから・・・・」

ユリハの一言にクーリアの心が折れたのか、溜息を吐き・・・俺に渡したお返しの事を洗いざらい話した・・・中身の事を除いて――――


「ムクロから貰った贈り物のお返しと言うわけか・・・・

なんだ、水臭い・・・堂々と渡せばいいものを。」

「そうだよ~私も現実リアルでムクロ君に上着をプレゼントしたんだよ。」

「うぇ!?現実で・・・だと!?・・・・抜け目ないな・・・ユリハは・・・・」

「ユリハはこのメンバーの中で断のトツでご主人様と現実で出歩いている確率が高い要注意人物です。」

レイの一言にミストやクーリアが俺に詰め寄り、どう言う事か問いただしてきた―――――


「何故だムクロ!私は何度も何度も何度も誘っていると言うのに・・・・

お前と言う弟は――――――」

「わ・・・私だってメールで何度も誘ってるのに、いつも肝心な内容に気づかないし・・・・

この・・・ドンカン!!!」

「ご主人様・・・この状況は一体?」

「クーリアもミストもムクロ君に用事があったのにゴメン・・・・」

レイはこの状況を巻き起こした事を気にもせず後ろの方に下がり・・・ユリハは罪悪感を感じ、顔を曇らせ・・・今にも泣き出しそうな顔をしていた。


「ミストもクーリアも言いすぎだ。

2人はまた現実で相手してやるから・・・・

だから・・・その・・・ユリハはそんな顔をしないでくれ。

―――――な?」

俺は優しくユリハの頬をさすりながら慰めると、ユリハは笑顔になり俺の手にそっと手に触れ・・・俺の手の温度を確かめるように頬を手に擦りつけていた―――――


「まぁ~た始まったよ・・・・ユリハとムクロっちのイチャイチャタイムが・・・ぶ~ぶ~」

「はぁ・・・・姉が目の前だと言うのに・・・ユリハに優しくできるのなら何故、私には優しくできないものか不思議だよ。」

「私もそのさすさすを希望します。」

レイの一言と同時にエリエントがタイミングを狙ったかのようにプライベートルームに戻ってきた。


「只今戻りました、あと・・・遅れた事をお詫びします。

その・・・ムクロ・・こっちに来て―――――ホラ、早く・・・」

「このやり取りは、少し問題になってるんだが・・・エリの頼みだ、仕方ない。」

「またこのパターン・・・贈り物を渡す際に2人っきりになれる特権はどうかと思うのだが!?」

「ミ・・・ミスト落ち着いて・・・お茶を飲んで落ち着いて!!

私も同じことしたから何も言えなのが悔しい・・・・」

「あはは・・・でも、少し気になるよね・・・取られちゃう感じってこういうことなのかな――――」

「ユリハの心の苦しさは御主人様への愛の大きさの表れ・・・・

その、愛が大きければ大きいほどユリハの心を大きく苦しめる事でしょう・・・

ですが、安心してください・・・私もユリハと同じくらい苦しんでいます――――」

レイがユリハに語りかけると、ユリハは少し気が楽になったのか・・・安堵してムクロの帰りを待っていた―――――


「で、その・・・寝室に呼び出した・・・理由は?」

「焦らないで、お楽しみはこれからよ・・・その・・・ムクロは向こうを向いてて・・・準備するから―――――よいしょ・・・よいしょ・・・」

エリがそう言うと俺は何も見ないように反対側を向くと、何か布がするすると落ちる音が聞こえ――――――


「まだ、だめだよ・・・その用意してるから・・・よいしょ・・・よいしょ――――」

「一体何をしているんだ・・・・まだかかりそうなのか?」

俺が質問をすると後ろから俺の服をぐいぐいと引っ張り、エリが合図を出すとそこには・・・


「その・・・これ似合ってる?・・・どう・・・かな?」

「似合ってるけど・・・・その・・・何でエリはそんな恰好をしているんだ?」

目の前にはメイド姿のエリが立っていた―――――


「それは・・・ムクロに、奉仕をするために・・・・・

あのプレゼントのお返しに・・・私の体で返そうと思って――――」

そう言うとエリは俺をベッドに押し倒し俺に覆いかぶさっていた。


「もぉ・・・逃げられないよ・・・ムクロ――――」

「ちょっと失礼ィ!!・・・そろそろ時間になってるから出撃ポイント集合しようって・・・・・・

―――――え?、何この・・・状況・・・・」

「クーリア・・・助けてくれ・・・・何やら怪しい状況だ・・・・」

「ちッ・・・余計な所で・・・・はいはい、ムクロ・・・ここまで。

次回はちゃんとお返しするから・・・それじゃ、着替えてポイントに向かいますよ。」

俺は知らせに来てくれたクーリアに間一髪のところで助けられ、不思議な眼差しでクーリア達に睨まれながら、出撃ポイントに移動した――――――


「誰もいない・・・・そろそろ時間だから少しでもプレイヤーがいてもおかしくないのに・・・・」

「やはりと言うべきか・・・・大体のプレイヤーはペナルティの重さに耐えきれずログアウトしたのでしょうね。」

「だろうな・・・だが、そこには面白いがいるぞ?」

「おいおい、俺の隠密もミストにはバレバレなのか?

少しは上達したと思ったんだがな―――――」

ミストの発言で隠れていたプレイヤーが俺たちの前に姿を現すと、エリが少し笑いながらその姿を見ていた―――――


「よぉ、久しぶりだな・・・ムクロ御一行さんよ。

あと、エリ・・・最近のお前はちょっと浮かれすぎだ・・・もっとこう――――」

「わ、私の事はいいんです!

ゲームなんだから自由にしていいでしょ!まったくもぅ・・・・」

「あ、ヘタレ忍者のミカゲだ~

おひさ~」

「クーリア・・・それは言いすぎだよ・・・その、お久しぶりですミカゲさん。」

「あの程度で隠れているとは笑わせてくれる・・・・

上位の忍クエストで練度れんどを高めてくるといいぞ。」

「久しぶりだな、エリはほぼ毎日俺たちと一緒に遊んでレベルが上がっているけど・・・・

ミカゲもソロで結構レベル上がってるな――――」

俺はミカゲのステータスをチラッと見るとレベルは前よりも遥かに上がりレベルが52になっていた。

――――俺たちが賑やかに話していると街側から大きく笑う声が聞こえてきた。


「ハッハッハ・・・・お前たちはやはり来ていたか・・・さすがは俺を瞬殺したムクロだな・・・

それに、白百合の剣士もいるたぁ・・・こりゃ勝ちゲーだな・・・ハッハッハ。」

「お前は・・・あの時の・・・ライザーだっけか?

お前も随分レベル上がって・・・見違えたな!」

「あの時のライオンアバター・・・・私にずっとPVPを仕掛けてきた粘着バトラー・・・・」

「うぇ・・・それ本当なの?・・・・自己主張強い系か・・・面倒なタイプぅ~」

「だが、このレベルならそこそこ腕は経つ状態にまで来ているんじゃないか?」

ミストがそう言い、皆がステータスを見るとレベルが55と表示され割と頑張ってゲームをプレイした結果がレベルで現れていた。


「今のお前となら昔とは違っていい戦いができそうだが・・・今はこの戦争を共に乗り越えよう・・・・・」

「あぁ・・・そりゃ御尤ごもっともだ・・・この戦いが終わればムクロ・・・お前にリベンジをするつもりだからよォ・・・死ぬなよ?」

「そっちこそな――――」

俺はライザーとグーで互いに鼓舞していると、更に後ろからぞろぞろとプレイヤーが集まって来た・・・・


――――――いやぁ~今回はバカ見たいなクエスト内容だが・・・今まで内容はマジだったし今回は落ちるとマジで終わりって事だが・・・まぁ落ちる気はさらさらないからいいけどな。

――――――団長~ライザー団長~先に行ったらダメじゃないですか~

――――そうですよ、ライザーは武器を振り回すしか脳がない人なんですから・・・・・迷ったらどうするつもりなんですか~

―――――がはは、お前たちそうライザーにガミガミ言うな・・・ライザーがやっと昔の盟友を見つけられたんだ・・・大目に見てやれ。

――――この方たちが・・・例のすご腕のメンバーですか・・・

――――――このミストって人・・・この前ソロで大暴れしてた怖いアバターです!!

――――あの時の暴れっぷりは、どちらがモブかわからない程に――――ヒッ!?睨まれたッ!?

ライザーの事を団長と呼ぶプレイヤーは後ろのプレイヤーや近くにいるエンブレムのついたプレイヤー人数を合わせて12名のメンバーで構成されたライザーが団長を務めるギルドのプレイヤー達であった。


「ライザーお前・・・いつのまにこんなに仲間を・・・」

「へッ・・・俺だってここまで何もせずにのぼってきたわけじゃないからな。

これが、俺たちが作り上げたギルド・・・・獅獣之結束しじゅうのけっそくだ。

俺たちは集団を作り群れる事で強くなる・・・その為にギルドを作ったというわけだ。」

「名前がなんとも言えないけど・・・これはライザーが付けた感じがするね~」

「そうだな・・・他のメンバーならまだまともな名前が付いただろうに。」

「2人とも・・・本人を前に失礼だよ・・・あはは――――」

「そうですね、中身はともかく・・・名前がコレでは・・・・」

ミスト達が好き放題言う事を聞き流しながらライザーは俺にコソコソと話し始めた。


「この、新人さんたち・・・口悪くないか?

お前・・・こう言うのが趣味なのかよ・・・・」

「いや・・・現実じゃ・・・片方は同級生で、片方は俺の姉だ・・・・

そして、エリも同級生・・・・つまり身内パーティーなんだが・・・口が悪いのは謝る・・・」

「ムクロ・・・お前ェ現実でもウッハウハなんだな羨ましいぜ。

と・・・まぁ・・・無駄話もこれくらいだな・・・他の連中もぞろぞろと集まって来てるのと――――

ホラよ、あちらさんもお出ましみたいだ――――」

そう言ってライザーが指さす方には超巨大な魔方陣が現れ、巨大な建築物が空から降り落ち地面に突き刺ささった。


その巨大な建造物は何かの城のようで、真ん中の方には高い塔があり・・・そこにはきっとこのクエストの停止目標である女神がいる事を全プレイヤーが気付くまでにはそう時間はかからなかった――――――


―――――――――17時45分・・・・攻撃開始ポイント

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