第41話 威力偵察者

―――――――――――――20時43分・・・・トロールバック戦闘中・・・


トロールバックの鎧やむき出しの腕が赤黒く変色すると俺とミストを睨みつけ大きく咆哮した。


――――――――GRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRR!!!


「このモブにバーサクが入った!皆、気をつけ――――――」

俺が注意をすると同時の速さでトロールバックは俺に痛烈な一撃を放った。


―――俺はギリギリのところで攻撃を剣でガードしたが遠くの岩まで弾き飛ばされた。


「ムクロ君!!何なの・・・あの攻撃は・・・エリエント、クーリア・・・まだ回復は終わらないの!?」

「ユリハもう少し待って!後少しで終わるから!

ムクロ君飛んでっちゃったけど大丈夫かな・・・・」

「クーリア!ムクロは大丈夫、あんなもんじゃくたばったりしないから!もっとしっかり回復しないと終わるものも終わらないわよ。」

「くっ・・・・よくも私の大切なムクロを・・・・よくも!!!」

ムクロがふっ飛ばされ、ミストが少し怒りを面に露わにした―――――


――――――演武・・・・絶技・・・・剛穿剣:闇ごうせんけんくらやみ


ミストが演武を使うと双剣がおどろおどろしく黒く染まりあがっていた。


「潰す潰す潰す!!!!ハァッ!!!」

ミストが力強く地面を踏み跳ぶとトロールバックの右腕を切り落とした―――――


「かはっ!・・・・・く・・・・あのモブ・・・・バカ力にも程があるだろ・・・・

体力は大丈夫そうだが・・・えらく飛ばされたな――――俺も早く戻らねぇと・・クイックシフト!!」

岩に張りついた体を引き上げ、即時にシフトを使いユリハたちの元へ向かった。


――――――――――GRRRRRRRR!!!?


トロールバックは自分の腕が飛ばされた事に気づくと左腕で傷口を塞ぐ仕草をしていたのだが・・・・・


「痛いか?だろうな・・・・・痛くしたのだから・・・・私のムクロに手を出せば死よりも恐ろしい目に合わせてやる―――――」

ミストはさらに深く踏み込みながら飛び出し、トロールバックの残った左腕を切り落とした。


―――――――――GRRRRRRRRRR!?!?!?!!


消えていく自分の腕を見つめながら今起こっている状況を飲み込めないトロールバックは静かに膝を地面につけ行動を停止した――――


―――――――・・・・・・・・・・・・・・・


「なんだ?謝っているつもりか?そんなものでは私の気は収まらぬ!」

「姉さん、もう大丈夫だ・・・・だから、止めてくれ――――」

ミストがトロールバックに最後の一撃を加えようとした瞬間にミストが振り上げた腕を掴み攻撃を止めると――――


「ムクロ・・・・良かった・・・・良かった・・・」

「はいはい、よしよし・・・」

俺は何とかミストがトドメ刺す前に戻る事ができ、最後の一振りを止める事が出来た。

そして回復が完了したユリハたちの俺たちの所までやってきた。


「ムクロ君、大丈夫?

その、すごい勢いで飛ばされてたけど・・・」

「でも、見た感じだとムクロっちは大丈夫そうだね。」

「流石はムクロ、あのような生半可な攻撃じゃアナタをとらえることはできないと私は初めから知ってましたよ。

でも・・・アレだけ派手にムクロを飛ばす威力・・・・このモブは一体――――」

ミストが冷静になり落ち着きを取り戻すと、エリエントはモブを杖でツンツンしながら観察しているとモブが急に立ち上がった。


―――――――――GRRRRRRRRRRRRRRR!!!


トロールバックが急に叫ぶとバーサクのマークと赤黒さが解け、モブの体力バーが2本にまで減ると切り落としたトロールバックの腕が傷口から生え出した―――――


「なッ!?コイツ・・・・部位再生能力パーツヒーリング・・・・しているのか・・・」

「私が折角切り落とした腕が・・・・トロールバックコイツはここで始末しておかないと後々面倒な事になるぞ!?

どうする?ムクロ・・・」

「うげぇ・・・腕が生えるとかトカゲ・・・・私・・そういうのちょっと・・・ダメ~」

「クーリアはトカゲが弱点なんですね・・・・メモメモっと。」

「あはは・・・でも・・・攻撃してくる様子はないね。

交戦マークが消えてるし――――」

俺たちは距離を取りながらトロールバックの行動を観察しながら、クーリアとエリエントに回復とバフをかけてもらうと俺はトロールバックに近づいた。


「お前は本当に、レアモンスターなのか?

それとも、何かしらのイレギュラーモブなのか・・・・一体――――」


ユリハたちがこちらを見つめる中、俺がトロールバックに話しかけて見るも反応を見せなかった。


すると、森の奥から不気味なフードをかぶった謎のプレイヤーが現れた――――


「くっはっはっは~~いいですね~いいですね~

貴方たち面白い、面白いですね~このトロールバックを・・・私の作品をこうも簡単に・・・

くふふふふ・・・流石・・・さん・・・・

自己紹介が遅れました~私は、側のプレイヤー・・・貴方たちの敵・・・・

グロリアココでは存在しない職種のネクロマンサー・・・・ロネッサよ~

よろしくねぇ~~」

不気味なフードを脱ぐと出るとこの出た緑髪の大人のメガネ女の姿であったのだが・・・・

その目は普通のプレイヤーのような綺麗な目ではなく、病んだように濁った眼をしていた。


「お前が戦争イベントでの・・・敵か、アチラ側はモブを投げてくると思ったんだが・・・まさかプレイヤーを出してくる思ってなかったな・・・・だが、グロリアにやってきたんだ?イベントは明日だろ・・・・ロネッサさんよ・・・あと、どうして俺が黒騎士だと思うんだ?」

「くふふ・・・えぇっと・・・黒騎士・・・ムクロ・・・

どうして知ってるかなんて簡単だよ~グロリアココの情報はの女神から与えられた情報だからだよ~~それにどうやって来たかも同じ~女神の力って奴?」

「そうか・・・ならば私たちの情報も漏洩しているのだろうな。

あちらの女神はズル賢いな・・・・」

「わわ・・・私たちの個人情報・・・・私のスリーサイズとか漏れちゃってってこと!?」

「多分、細かい事までは知らないはず・・・そして、この接触もきっと私たちの威力偵察だと思われる。」

長い話に興味を無くしたのかロネッサはルンルンと弾みながらトロールバックに近づきトロールバックの起動コアを引きずりだした―――――


――――――――――GAAAA・・・・・

トロールバックは悲しい鳴き声を上げながら静かに消滅していった――――


「ヒッ・・・・なんで・・・何で自分の仲間にそんなヒドイ事するの・・・・」

ユリハが悲しい顔をしながらロネッサに話しかけると・・・・


「あはは~どうして?どうしてかって?

こんなの仲間でも何でもないからだよ~ただのオモチャなの。

私の為に動いて、私の為に死んでくれる・・・私専用のオモチャなの~」

「下がれムクロ・・・コイツは相当歪んでいる・・・・」

「アレ・・・ドクンドクン動いてる・・・・うぇ・・趣味悪いよ~」

「初めてクーリアと意見が一致しました。

本当に趣味が悪いですよ、ロネッサ。」

俺はロネッサの行為や言動に我慢ならず武器を構えてロネッサに強烈な一撃を繰り出したのだが・・・・・


―――――――――ガキンッ!!!


ロネッサの目の前で大きな腕のようなものに攻撃が防がれ、俺の足元からスケルトンの腕が現れ全身の身動きが取れなくなった―――――


―――――――クソッ・・・・脚も腕も動かねぇ・・・・ネクロマンサーコイツは奇妙なスキルを使うな・・・・


「ムクロ君!?・・・今助けに―――――」

「そうはさっせないよ~ん!

スケルトン部隊よっろしく~」

ロネッサがスキルを発動し俺とロネッサを分断するようにスケルトンの群が地面から湧いて来た――――


「くそッ・・・・皆!ムクロを助けに行くぞッ!!」

「了解!!援護は任せて!」

「私も微力ながら援護します!」

「待ってて・・・ムクロ君・・・・必ず助けるから――――」

ユリハ達は武器を構えると目の前のスケルトンとの交戦に入った。


「やっとぉ~2人っきりになったねぇ~うふふ~

さぁ~て、何をしようかにゃ~~」

ロネッサの目は新しいオモチャを貰った子供のような目をしていた。

これから一体、身動きの取れない俺の体に何をするつもりで―――――


――――――――――21時22分・・・・分断戦中

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