第23話 由里の決意。
―――――――7時50分・・・通学路
「悠一おっはよ~涼孤先輩もおはようございます!」
朝からテンションの高い挨拶をするのは1人しかいない――――
やはりそこにいたのは耀子だった・・・・
だが、耀子の隣には由里の姿はなく1人であった。
「耀子、おはよう。
その・・・・由里は一緒じゃないのか?」
「えっと・・・由里は朝にやる事があるから早く出るとかメールが来てて先に行ってるよ?
それが、どうかしたの?」
「フム・・・やはりそうきたか・・・悠一、今日は屋上で由里と二人で昼食をしなさい。
これはお姉さんからの命令よ・・・拒否権はないわよ。
耀子は私と昼食よ。」
何か訳アリと耀子が察すると仕方ないという顔をしながら、グループチャットに今日のお昼は屋上でという内容で書き込まれ、その書き込みに了解と姉さんが返信すると――――
俺にも返信するようにと姉さんと耀子から個人チャットが送られ俺はグループチャットにOKとスタンプを入れた―――――
「はぁ~悠一、何があったかは聞かないけど・・・貸し一つだからね~」
「私にも貸し一つだな。」
俺は耀子と姉さんに借りを作りつつ由里と会話する機会を作ってもらうと、由里とのやり取りを考えながら歩いているうちに学校に着いた――――
――――――――・・・・昼休み・・・屋上・・・
―――俺は弁当を持ち屋上に向かうと日陰にひっそりと由里が本を読みながら待っていた・・・・
俺は恐る恐る由里のいる日陰に向かうと・・・・
「こんにちわ、悠一君・・・・皆はまだかな。」
「あぁ、そうだな・・・姉さんたちが遅れるなんて珍しいよな。」
2人で色々話しているとブロッサムに2人から今日は昼食に参加できないと言うメッセージがグループチャットに送られてきた――――
「悠一君と2人っきりになっちゃったね・・・・」
「由里、昨日の事はその・・・ゴメン・・俺は何かに集中してると周りが見えなくなる癖があるから・・・」
「うぅん・・私の方こそ、勝手に1人で盛り上がっちゃって・・・ごめんなさい。
私ね・・・その・・・」
由里は何やらモゾモゾしながら顔を赤く染めてかばんから弁当を取り出した――――
「今日はその・・・お弁当のおかずを作りすぎちゃったから・・・悠一君・・食べてくれないかな?」
「あ、・・・あぁ!!も・・もちろんだ!
由里の弁当のおかずは前から美味そうだと思ってたんだ。」
俺の発言に由里は俺の真横に座りおかずの紹介をする中―――
――――ふわっと風が吹き、隣にいる由里の髪の匂いがふんわりと風に乗り、由里は笑顔で髪を整えていた・・・・
「でね、このだし巻きも全部私の手作りで・・・悠一君の口に合えばいいんだけど・・・」
「俺は現実でも料理はあまりできないけど、味には少しうるさいぞ~」
俺は箸をみょんみょんしながらだし巻きを口に運ぶと姉さんが作ったものとは違うまた、別の美味さが口の中に広がった――――
「うまい・・・由里、美味い!
コレも、コレも美味い!
由里は料理ができていいよなぁ~美味いモノいつでも食べられて。」
「あ、ありがと・・・少し恥ずかしいけど、喜んでくれて私も嬉しいよ。
その、現実でも私が・・・その・・料理・・・教え・・ようか?
も、もちろん悠一君の迷惑じゃなかったらだけど!?」
俺は迷惑じゃないと言いつつ由里に是非料理を教えて欲しいと頼むと・・・・
「うん!なら・・・今日・・私の家で料理でも・・・どう・・かな・・なんて・・」
「あぁ、放課後の予定は何もないから由里が迷惑じゃなかったらよろしく頼むよ。」
俺が由里に料理の指導を頼むと由里はますます笑顔になって弁当をはむはむと食べていた―――
俺は今回屋上で話した事を姉さんにブロッサムで連絡すると耀子の事は私に任せて2人で料理を楽しみなさいと返信がきた。
――――料理かぁ・・・料理の区分がなければ俺は卵かけご飯や鍋焼きうどんやラーメンの乾麵類を湯で戻す程度しか料理はできない・・・・
今回は放課後に由里と2人でスーパーに寄り買い物をしてから由里の家に向かう段取りになっていた――――
――――――そして、放課後・・・・・・・・・・
――――俺のブロッサムに由里から校門前で待ってるとメッセージが入り俺は荷物をまとめ由里の待つ校門前に向かった。
校門前で待つ由里と合流すると由里の家の近くにあるスーパーに向かった―――
「耀子さん・・・悠一と由里ってどこまで進んでいるのかしら?」
「・・・・・・・知らないよ・・・私たち、何してんだろ・・・」
涼孤と耀子はコソコソしながら後ろの方から2人の後をつけていた――――
コソコソ後をついてくる2人の事を考えもせず、俺と由里はスーパーの中に入り買い物を始めた―――
「悠一君は何が食べたい?」
「食べたいと言うか・・・料理の練習だからなぁ、そこまで難しくない料理を教えてもらえないか?」
「そうだなぁ・・・あっ!オムライスなんてどうかな?
意外と簡単でおいしいよ。」
――――オムライスか、姉さんが休みの日のお昼にたまに作ってくれるな・・・・
でも、由里に簡単と言われると料理のテクニックの差で本当に簡単なのか不安であったが俺は覚悟してオムライスを教えてもらう事にした。
「よし、任せて。
材料もこれで大丈夫だから、さっそく帰って料理しよっか♪」
「あぁ、今回はよろしく頼む。」
俺はレジ袋を持つと由里の家に向かって歩いて行った――――
「耀子、追うわよ・・・いつまで試食コーナーのウインナー食べてるのよ。」
「涼孤先輩待ってください!あと、一本だけ食べさせてください!
あっあぁぁぁ~~~私のウインナぁ~~~」
涼孤は耀子をズルズルと引きずりながら2人の後を追いながら、見つからない位置を見つけては移動して後を追っていると――――
――――ピッピピピピーーー
―――2人のブロッサムからメッセージ受信の音が鳴り響いた・・・・
「涼孤先輩、耀子ちゃん・・・後をついて来てる事は知っていますよ?
一緒に料理しますか?」
「「・・・・・・・・・・・・」」
「あはは、たまたまよ~たまたま。
私は買い物に来てただけだから。」
「私は涼孤先輩の手伝いで買い物に付き合ってただけで・・・・」
涼孤と耀子はこれ以上は後を追う事は出来ないと感じ引き返すことにした―――
「悠一君、ここが私の家よ。」
「それじゃ・・・お邪魔します。」
俺は由里に出してもらったスリッパに履き替え由里と台所に向かった――――
「今日はお母さん帰りが遅いらしいから、じっくり料理できるからとことん教えるよ!」
由里はレジ袋から材料を取り出しながら話し始めた・・・・
――――由里の家は広く、とても裕福な家庭であると家を見るだけでわかった・・・
「料理を教えてもらうのにお返しが無いのはダメだよな。
何か由里にお返しがしたいんだが、何が良い?
それに、由里の父と母は共働きなのか・・・大変だな。」
「お返しなんていいよ!
私と・・・たまにこうやって一緒に料理やカラオケに行ってくれるだけで・・・嬉しいから。
それと・・・その、私のお父さん・・・昔、車の事故で・・・・」
俺はまた、余計な事を聞いてしまい、慌てて謝り――――
「その、ごめん・・・・そんなつもりじゃ・・・由里、本当にゴメン。」
「うぅん・・知りたくなっちゃうのは・・・当然だよ、気にしないで。
私にはお母さんしかいないけど・・・毎日楽しいよ?
悠一君たちと出会ってからは、もっと楽しいから・・・・
その・・・悠一君の御両親は?」
「・・・・・・・」
俺は由里に辛い事を聞いてしまった事に対して自分も話さないとフェアじゃないと感じ父と母の事に着いて話した――――
「俺には姉さんしか家族がいないんだ。
昔、知り合いの家に姉さんと預けられている間に飛行機の事故で両親は他界したんだ・・・」
「あ・・・その・・・・ごめんなさい・・・
――――私、私・・・本当に・・・悠一君ごめんなさい。」
由里が俺の話を聞くと暗い顔をしながら涙を流し座り込んでしまった・・・・
俺は座り込んだ由里に近づき頭を撫でこう言った――――
「これでお相子だな。
俺は由里に辛い事を聞いたからこれでいいと思ってる。
それに俺には姉さんや由里や耀子や皆がいるから・・・俺もその・・・毎日が楽しいんだ。
この日々楽しく感じるのは由里たちのおかげだから・・・その・・・ほら、立って笑ってくれ。
姉さんに、女の子は泣かせるのではなく笑わせるのよ!って言われてるから。」
俺はそっと由里に手を差し出すと、由里は手を掴み立ち上がろうとしたが由里の足がもつれ俺が押し倒される形になって倒れた―――――
―――――――――ドスンッ!!!
「イテテ・・・・由里・・・大丈夫か?」
「うん・・・ごめんね・・・悠一君は・・・怪我はなかった?」
俺は頭を少し打ったくらいで他に外傷はどこにもなかった―――
由里は俺の胸の中にうまく収まり怪我はなさそうだった・・・
「その・・・由里・・悪いんだが・・・どういてもらってもいいか?」
「ごめん・・・悠一君・・・もう少しだけ・・・このままじゃダメかな?」
由里をどかそうにもうまい感じにホールドされ俺は身動きが取れない状態であった。
―――無理矢理どかしても由里を傷つかせるなら気が済むまで俺が抱き枕になるしかないか・・・・
俺は観念して由里の気が済むまで抱き枕になることにして目を閉じると――――
「悠一君・・・ごめんね・・・・」
「ん!?!?」
由里が何かを言ったと思い、目をあけると避ける間もなく由里にキスをされた――――
由里の唇は柔らかく、その衝撃に俺は今どのような状況に置かれているのかわからず頭の中が真っ白になっていた―――
「その、悠一君・・・これは・・その・・・えっと・・・きゅ、急にごめんなさい!」
「待って!俺も頭の中が真っ白で・・・その心の準備がとかその・・・」
俺と由里はお互いあたふたして冷静ではなかった。
お互いの反応で俺はもちろん由里もキスは初めてだとわかる反応だった―――
「その・・・悠一君・・・私ね・・・悠一君の事が・・・・」
「ちょっと!ちょっと待て!!冷静に冷静にだ由里!」
「私はいつだって冷静だよ。
私ね・・・悠一君の事が・・・ス・・・」
―――――――ピンポーーーン!!
突然、家の中にインターホンが鳴り響き俺たちは慌てて立ち上がると、由里は玄関に向かって行った――――
「悠一君お待たせ、ごめんね宅配便が来てたの。」
「俺は別にいいんだけど・・・その、今さっきの・・・」
「悠一君・・・・その・・・私、悠一君の事が・・好きなの――――」
郵便物をリビングに置いた由里は夕日に照らされながら俺に愛の告白をした―――――――
―――――――15時46分・・・由里の家
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